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人手不足により店舗休業―――今日、日本中の小売・飲食店で実際に起きていることだ。本格的な人口減少時代へ突入している日本。従来のマンパワー頼みのやり方はもう限界で、デジタル化へ舵を切らなければ、経済全体が機能不全に陥ることは間違いない。今号のDIG-IN では、今後あるべき「店舗省人化イノベーション」について考えていきたいと思う。店舗を人手不足問題から救い、明るい未来の実店舗のカタチを見出すのだ。
いよいよ日本の飲食・小売店舗が未曽有の人手不足を迎え始めた。単に人手が足りないというより、労働環境の変化と少子高齢化などが組み合わさって、店舗現場を直撃している。だが、ここから日本は世界に先駆けて本格的な「人口減社会」へ突入することになる。国内人口は 9 年連続で減少を続けており、少子高齢化により 2030 年には日本の労働人口は 2015 年対比で約 10%も減るという(図 1)。この 10 年ほど指摘されてきたことではあったものの、皆どこか深刻にとらえることはなく、従来のやり方を継続してきたのではないだろうか。日本は人口ボーナスに支えられた高度成長期からバブル期まで、人手には困ることがほとんどなかった国である。今やその時代も終焉し、人手不足は喫緊の問題である。しかし、今もなおデジタルシフトを避け、従来通りのアナログな「力技」で現場を回すやり方がいまだ店舗のスタンダードなのだ。ただ、いよいよこの数年その限界が露呈されてきたのである。アルバイトや従業員が集まらないことによる賃金の高騰や、過重労働に対する働き方改革のムーブメントは、その「無理」に対する反動である。
労働の階層化が進み、サービス業の現場に人が集まず、給与賃金が高騰しているのはグローバル先進国に共通の現象でもある。米国やシンガポールでは、飲食店やホテルなどの時給単価が 2000 円を超すケースも珍しくない。しかし、この種の問題をテクノロジーで対処していこうという動きにおいて、日本はかなり遅れている。例えばシンガポールでは、移民政策により、外国人の就業を制限したことが要因でサービス業の賃金が取りたてて高騰した。そのため、無人化店舗領域の開発が進んでおり、シンガポールのあるホテルでは、館内でデリバリーロボットが従業員の代わりにルームサービスのフードや寝具などを運搬している。また政府主導で、店舗のテク ノロジー導入に対して支援金を出しているため、この領域でスタートアップの起業も相次ぎ、活況を呈している。それぞれが必要に駆られて、解決策を取り入れており、切実なニーズを感じる。ク ノロジー導入に対して支援金を出しているため、この領域でスタートアップの起業も相次ぎ、活況を呈している。それぞれが必要に駆られて、解決策を取り入れており、切実なニーズを感じる。シ ンガポールだけではない。米国や中国、韓国、ヨ ーロッパなど世界中の店舗でデジタルシフトによる省人化が、日本より先行している。例えば、マクドナルドなどを始めとするファストフード業態では、顧客のスマートフォンからの注文・決済や「Kiosk(キオスク)」と呼ばれる、タッチパネル式のセルフ注文決済端末がこの数年で加速度的に導入されている。対面有人レジがこれほどまでに活発に置かれ続けている日本は、もはやレアケースになりつつあるとも言えるだろう。
シンガポールのダイニングレストラン「NG AH Bak Kut Teh」では、注文から食器の片付けまで全てセルフ化している。(撮影:編集部)
「現金大国」と呼ばれる日本においても、国内でも複数のサービスがローンチされ、ようやくキャッシュレス決済に注目が集まってきた。店舗の省人化を語るうえで、キャッシュレス化は欠かせない要素のひとつである。しかしながら、「QR コード決済」などといった物珍しいキーワードや、パーツにばかり注目が集まり、その本質は議論されていない。そもそも QR コード決済は、中国やインドなど、IC リーダーやクレジットカード読み取り端末などのインフラが未整備であるエリアで活用されてきたものだ。日本は、諸外国に先駆けて 2000 年代に「Suica」や、おサイフケータイ ® などを生み出した電子決済先進国であり、IC カードやクレジットカードが読み取り可能な決済端末が大手チェーンなどにはかなりの台数が設置されてきた。地方や個人経営の店舗などでは導入が進んでいない場所もあるものの、ほとんどのコンビニや GMS、飲食チェーンなどでクレジットカードや電子マネーはごく当たり前に使われている。
逆に言えばそのような場所で、現状存在する各種QR コード決済が、クレジットカードや電子マネーを超えるメリットを享受するのは難しい。住所やクレジットカードの登録の手間は EC サイトなどと同じだとしても、レジ前でのアプリ起動や読み取りにはむしろ時間もかかり、IC リーダーなどと比べると顧客体験としては劣ってしまう。そのため、QRコード決済を提供する各社は手数料無料やキャッシュバック、クーポン配布などの施策をとることが必要となってしまう。
モバイル決済が浸透する中国。アリババの「Alipay」、テンセントの「WeChatPay」がシェアのほどんどを占める(写真:iStock)
こういった値引きキャンペーンは中国でモバイル決済が浸透したパターンの模倣と言われている。中国ではそもそも多くの店にクレジットカードリーダーなどの認証端末がなく、QR コード決済を受け入れる素地があったのに加え、国家戦略における後押しも大きくあった。加えて、中国で「ばらまき」を行っているインターネット企業は、決済だけを目的とするのではなく、フードデリバリーや予約サイトなど、その先への囲い込みにおける顧客 LTV の最大化を目的としている。現状行われているような、単なる決済時のキャッシュバックやクーポンだけでは顧客の定着は見込めないため、今の国内における QR コード決済は中国のような状況も作り出せてはいないと言えるだろう。店舗側にとっても、キャッシュバックなどで来店が増え、値引き原資を負担してもらえること自体にはメリットは大きいが、すでにカードリーダーや IC リーダーが導入済みの店舗の場合、さらに QR 決済という認証手段が増えるだけになるため、オペレーションを煩雑化させている。顧客も店舗側も金銭的なメリットがなくなった後も継続的に利用される可能性は低い。 とはいえ、いまだ黎明期とも言える日本のキャッシュレス化。各社もサービスを磨き、顧客と店舗の要望を受けてより本質に近づけてくるものと考えられる。その中である程度、淘汰や合従連衡も進むのではないかと推測される。海外をそのまま模倣するのではなく、より日本の実態に即したものが残っていくだろう。
(撮影:編集部)
これからの人口減少を考えると、省人化というテーマの先にある「無人化」も、日本が現実に取り組まなければならない世界である。すでに打ち手を実行できている諸外国と比べて、日本がこれから迎える未来はより深刻であると考えられる。デジタルの活用なしでは店舗現場が立ち行かなくなる時代は思ったよりも早く来ると考えておいたほうがよさそうだ。
では日本ではなぜ、米国や中国のようにキャッシュレスや省人化といった、デジタル経済化が進まないのだろうか。答えとしては、いくつかの要素があるが、実は国内ではテクノロジーの現場もまた人手不足、ということを挙げておきたい。スマートフォンや SNS、 EC などインターネットサービスの普及により、店舗などコンシュマーと向き合う企業は、顧客を捕捉し続けるためにあらゆる打ち手が必要となっている。そんな中、日本の企業には顧客を捉えるサービスの開発・運営に必要な若手世代のエンジニアやデジタルマーケターが圧倒的に不足している。かたや、米国や中国は、スタートアップ企業育成に莫大な投資を行い、若い労働力が次々新たなサービスを生み出している。ウォルマートなどの小売企業もスタートアップの買収などで「時間を買い」、ドラスティックな変革を重ねている。大企業と若手企業におけるエコシステムができており、古い会社がアップデートされた結果、そうした企業が競い合うことで国力の増大につながっている。
日本ではいまだに従来の雇用体系が根強くあり、起業も少なく、ある種「夢のない」状況になっており、この種のデジタルイノベーションが生まれにくい。このため、システム面一つとっても、新しいものを生み出すというよりも、先達が生み出した過去のソフトウェア・ハードウェア資産を保守する、慣れたことをやる、という力学に走りがちである。そのため諸外国と比べて、インターネット・デジタル領域への投資や教育に及び腰であり、進化がなかなか進まない。ただ、店舗における省人化・無人化の取り組みには、ここは避けて通れず、新しい価値観を取り入れていく必要がある。事業者はこれらに一気に舵を切れるかどうかが、今後 10 年の企業生存における試金石となるだろう。
※この記事は冊子版「DIG-IN vol.3」に掲載したものです。
文=新田剛史、編集=Showcase Gig
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