拡大する中食市場ー軽減税率を追い風に「外食から中食へシフト」増加

中食市場を巡る動きが活発化している。いったい「中食」とはどういった意味の言葉なのか。定着した背景を踏まえ、市場の動向を探る。

ライフスタイルの変化ともに登場した「中食」

中食(なかしょく・ちゅうしょく)とは、家庭外で調理された食品を、家庭内に持ち込んで食べる食事形態のこと。コンビニなどで販売されるお惣菜やお弁当、テイクアウト食品、フードデリバリーといった食文化を指して使われる言葉だ。

中食は、内食(家庭内で調理から喫食までを行う)や外食(家庭外で調理から喫食までを行う)といった既存の食事形態と区別するため、80年代に新しく生まれた表現だと言われている。誕生の背景には、家族のあり方の変化、特に単身・核家族世帯数の増加と、女性の社会進出があるという。

総務省が発表したデータによると、80年代以降、単身世帯数は増加の一途をたどり、2010年には全世帯数の3割を超えた。また、少子化によって総数を減らす核家族世帯数も、親族世帯数に占める割合において、9割に迫る。

さらに、女性の社会進出に関する数字も見逃せない。昭和30年、総数の3割に満たなかった女性雇用者数は、平成12年に4割を上回った。その後も右肩上がりで伸長し、平成27年には43.9%まで達している。

こういった社会やライフスタイルの変化から家庭内での調理機会は減少し、内食離れが進んだ。また経済的理由から費用が高くつきやすい外食を、避ける傾向も根強くあった。

そのような背景にあって大衆の向かった先が、「あらかじめ調理された食品を、持ち帰って食べる」という中食の文化だった。

拡大する中食市場へ、外食から参入

近年、中食の市場は拡大し続けている。

一般社団法人日本惣菜協会が発表する「2018年版惣菜白書」によると、2007年から2016年までの10年間で、23.8%も成長した。堅調な伸びを見せる食市場全体から見ても、この数字は際立っている。

そうした市場の動向を踏まえて、外食産業が中食の市場へと参入するケースも増えてきた。関東圏を中心にチェーン展開する、株式会社串カツ田中ホールディングス(以下、串カツ田中)もそのひとつだ。

2019年3月、同社は、テイクアウト専門の店舗「串カツ田中 東京ドーム店」をオープンした。常設店舗としてテイクアウト専門店を出店するのは、この店舗が初めての試みとなる。出店にあたり、この業態限定のフードメニューも開発した。続く4月には2店舗目となる「串カツ田中 アリオ亀有店」もオープン。同社は、本格的に中食の市場へと乗り出した。

串カツ田中のようにテイクアウト販売を始める飲食店がある一方で、デリバリー導入を検討する飲食店も少なくない。しかし、スタッフ確保などの面がネックとなり、断念せざるを得ない場合もあるという。

この課題を解決するのが、Uber Eatsファインダインといった配達代行サービスの存在だ。対応エリアは都市部が中心だが、徐々に広がりを見せつつある。これらを活用すれば、飲食店が配達リソーススタッフを抱えることなく、デリバリーサービスを導入できる。

このようなビジネスモデルの誕生こそが、外食の中食シフトを示す好例だと言えるだろう。

自転車やバイクで配達する「UBER EATS」。

中食市場に吹く追い風

今後、中食市場はさらに成長するという見方がある。2019年10月より始まる軽減税率制度が、追い風になると考えられているためだ。

同制度は、10%への消費増税にあたり、低所得者に配慮する観点から導入を予定している制度。この制度において、外食は一律10%の課税がされる一方で、テイクアウトやデリバリーなど中食に分類される食事については、増税が8%に据え置かれる。これにより外食から中食へと、消費者の需要が移ると見られている。

こうした時代の流れを受けて、外食大手は中食サービス強化の動きを見せる。

全国に1,400店舗以上を展開するコーヒーチェーン、スターバックスコーヒージャパン株式会社(以下、スターバックス)は、自社サービスにUber Eatsを導入。2018年11月に東京都内の3店舗で試験的にデリバリーを開始し、4か月後の2019年3月には、主要都市の38店舗まで拡大した。同サービスでは、コーヒーだけでなく、スイーツやスナック類、コーヒー豆などの購入も可能だ。今後さらに数を増やすと見られる。

また、株式会社すかいらーくホールディングス(以下、すかいらーく)は、経営するファミリーレストラン「ガスト」や「バーミヤン」などにおいて、デリバリー提供店舗の拡充を目指す。2020年中に現在の1.5倍となる1,500店舗まで増やす方針だ。ガストでは、あたため直しても出来たてとほぼ変わらないおいしさが楽しめるピザ生地も開発した。宅配専用のメニューと合わせ、中食需要獲得の突破口と睨む。

追い風の吹く中食市場においては、惣菜専門店や食品スーパー、コンビニエンスストアといった中食特化の店舗も躍進を狙う。スターバックスやすかいらーくのように、コンビニやスーパーが真似できない個性や品質が、新しい時代の武器になっていくだろう。冷え込みが予想される外食産業だけに、外食ならではの価値の提供が大切だ。

中食市場はテイクアウト偏重へ

注目を集める中食市場。消費増税を境に、テイクアウトやデリバリーの需要はさらに拡大していくと見られる。しかし、飲食・小売業界では、人手不足の問題もまた深刻であり、デリバリーに関してはその需要に対し、エリアの限定や配達手数料の値上げをせざるを得なくなるであろう。中食市場は、より効率的なテイクアウト偏重になっていくのではないだろうか。

最近では、店舗へ行かずともテイクアウト注文ができるスマホアプリ「O:der」などのサービスなども注目されつつある。これらを活用すれば、客は行列に並ばず、欲しい時間に商品をテイクアウトすることが可能だ。

これから到来する中食の時代、新たなテイクアウト体験が当たり前になっていく日も近いのかもしれない。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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