2022.06.24

小売店向け

Amazonの取り組みから考える、ニューノーマル時代の歩き方。4つの事例が照らし出すもの

ニューノーマル時代への突入により、再編が進む各業界。生き残りやさらなる成長のためには、これまでとは異なる新しい価値の提示が不可欠だ。企業・店舗はどのような視点で経営努力を続けていくべきなのか。ひとつのヒントが世界的小売企業の取り組みにある。Amazonが続けてきた数々の挑戦から、新時代の歩き方を考える。

企業・店舗がAmazonの理念から学ぶべきもの

Amazonは、2000年に日本でサービスを開始した。当初は書籍のみの取り扱いだったが、カスタマーサービスセンター、フルフィルメントセンターといった国内拠点の開設と並行し、音楽・映像ソフトやゲーム、家電、おもちゃなどの取り扱いもスタート。まだオンラインショッピングが浸透していなかった日本において、市場の拡大・成熟に寄与してきた。アメリカ発の小売企業であるAmazonはなぜ、日本でも一定の成功を収められたのだろうか。理由は、同社の企業理念に隠されている。

1993年、ジェフ・ベゾスによってアメリカ・ワシントンで創業したAmazonは、これまでの約30年で、いくつもの画期的なサービスを世に送り出してきた。ローンチ時には時代を先取りする内容から、非現実的・非実用的と捉えられるケースもあった数々の取り組みだが、時間が経つごとに小売の“ニューノーマル”として広く受け入れられつつある。こうした挑戦の裏に存在していたのが、4つの企業理念だ。

・customer obsession rather than competitor focus:お客様を起点にすること
・passion for invention:創造への情熱
・commitment to operational excellence:優れた運営へのこだわり
・long-term thinking:長期的な発想

同社が現在進行形で小売業界にもたらしている変革は、これらの具現化の結果にほかならない。「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」という会社概要に集約される4つの企業理念によって、Amazonは成功を積み上げ、マーケットリーダーの地位へと上り詰めてきた背景がある。

インフラ化するAmazonの会員制プログラム「Amazonプライム」

Amazonが展開するさまざまなサービスのうち、日本の消費者にも身近だと言えるのが、会員制プログラム「Amazonプライム」だ。送料の無料化(お急ぎ便・お届け日時指定便を含む)や、音楽・映像ストリーミングの利用権などが一定の月額料金に盛り込まれた同サービスは、2007年に提供がスタートした。2021年4月時点でのユーザー数は、全世界に2億人。メディア・パートナーズ・アジアの調査によると、日本国内でも総人口の1割超にあたる1,500万人が加入しているという。

時間や場所を選ばずショッピングできる便利さが長所とされるECだが、近年では、注文から受け取りまでのタイムラグ、配達にかかる送料といった課題も話題に上りやすい。コロナ流行下において、市場の活況とともに注目されたBOPISなどの仕組みも、こうした課題を解決へと向かわせるものだ。

15年前にローンチされたAmazonプライムは、ECのメリットを残しつつ、デメリットを最小限にする取り組みでもある。ユーザー数拡大の裏には、潜在的な顧客ニーズをキャッチするAmazonの先見性があったのではないだろうか。

「Amazon Go」展開の根幹は、革新性ではなく、顧客の利便性

Amazonは2016年、米・シアトルにコンビニ業態の実店舗「Amazon GO」を開業している。同店舗では、アプリでのQRコードスキャンによって入店を管理。店内各所に設置されたカメラ・センサーで商品のピックアップといった顧客行動を解析し、完全無人での店舗運営を実現した。ショッピングを終えたあとは、入り口に設けられた改札型のゲートを通過すると、アプリに紐付けられた決済手段から自動的に代金が引き落とされる構造となっている。支払いに足を止める必要のない点が特徴だ。

こうした特性から「Just Walk Out」と呼ばれるこの仕組みは、実店舗の無人化・省人化を叶えるリテールテックとして、登場以降、脚光を浴びてきた。2020年には、手のひらを端末にかざすだけで入店の認証や決済が完了する「Amazon One」を新たに導入。QRコードスキャンのためにアプリを準備する手間さえも排除することに成功している。

同システムは現在、劇場やスタジアムの売店、他の小売店舗などに採用され始めている。今後は省人運営のプラットフォームとして、外部企業への提供が加速していきそうだ。

Amazonは、Amazon Goの出店・運営を通じて、実店舗における顧客データの収集、自社で開発したの技術のテストをおこなっていると言える。消費者に利便性をもたらすべく取り組んできた先駆的なアプローチが、ようやく次のステップに移行しつつある。

 

“暮らしに寄り添う小売”を実現する「Amazon Fresh」

2017年には、Amazonプライムの加入者を対象に、生鮮食品などを注文から最短2時間で配送するサービス「Amazon Fresh」の提供もスタートさせた。取り扱う商品は、野菜や果物、鮮魚、精肉、乳製品などの食料品と、これらに付随するキッチン用品、健康・美容用品、ベビー用品といった日用品・雑貨。なかには、無印良品やOisix、RF1といった専門ブランドの商品もある。4,000円以上から注文が可能で、10,000円以上購入すると、390円の配送料が無料となる。朝8時から深夜0時までの間で2時間ごとに配達時間を指定できるため、それぞれのライフスタイルに合った利用が可能なサービスとなっている。2022年6月現在、対象エリアは、東京都・神奈川県・千葉県の一部地域(※)に限定されているが、Amazonによると、今後、順次拡大していく予定だという。

アメリカ国内では、同名のスーパー業態の実店舗「Amazon Fresh」が勢いを増している。2022年5先月には、ロサンゼルス郊外に30店舗目「アマゾン・フレッシュ・ムリエタ店」をオープンした。2020年9月の1号店の開業から2年足らずでの30店舗展開は、Amazonの注目すべき動向として話題を呼ぶ。同業態ではAmazon Go同様、Just Walk Out型のシステムがレジに採用されているほか、音声AIによる陳列場所のガイド、BOPISを活用した店外でのピックアップにも対応している。

※東京都…練馬区・板橋区・北区・中野区・豊島区を除く18区、調布市・狛江市の2市。
 神奈川県…川崎市、横浜市(瀬谷区・泉区・戸塚区・港南区・栄区・金沢区を除く12区)。
 千葉県…浦安市、市川市

初の試みとなるファッションストア「Amazon Style」は、OMOの模範解答に

Amazon ホームページより引用

「Amazon Style」も、同社を巡る話題のトピックのひとつだ。Amazonは2022年1月、アパレル業態の実店舗を展開していく計画を発表し、2022年5月、1号店をカリフォルニア州グレンデールにオープンした。ファッションストアの出店は、初の試みとなる。

同業態の店舗には、さまざまなブランドのアイテムが展示される。各商品に付属するQRコードをアプリからスキャンすれば、サイズや色のバリエーション、レビューなど、ショッピングに必要な情報の閲覧が可能だ。さらに画面上のボタンをタップすることで、試着の予約もできる。準備が整うと、フィッティングルームの番号がプッシュ通知される仕組みとなっている。

フィッティングルームには、選んだ商品のほか、過去の閲覧データなどに基づきピックアップされたおすすめ商品も用意される。ユーザーは壁のタッチスクリーンから、試着を通じて感じた商品の印象をマークしたり、別の商品をリクエストしたりすることもできる。

利用によってアプリに蓄積したデータは、Amazonが展開する各サービス間で共有されるため、ECサイトにおけるレコメンドにも影響する。販売価格は、オンラインと同一になるようだ。

Amazon Styleが提示する体験は、オンラインとオフラインの間に垣根を設けず、融合したひとつのマーケットとして捉える、OMO(Online Merges with Offline)の考え方そのものだ。顧客は両者のデメリットを避けつつ、それぞれのメリットを最大限享受しながら、ショッピングを楽しめるようになる。

 

到来するニューノーマル時代。顧客視点への回帰が突破口か

創業以来、常識に囚われず挑戦を続けてきたAmazon。世界的な小売企業となってなお、一貫してカスタマーファーストを掲げ、行動し続けている点は、日本の企業・店舗が見習うべき部分である。

顧客体験が重要視される時代。成功の秘訣は、Amazonが辿ってきた軌跡の中にこそ隠されていると言えそうだ。

 

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

 

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