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国内EC市場の活況が、実店舗の価値を再定義している。 これまで別のチャネルとして考えられてきたオンラインとオフラインのマーケット。ECが台頭する時代に、実店舗はどのような価値を消費者に提供できるのか。BOPISの登場と定着は、そのひとつの答えとなる可能性がある。 コロナ禍であらためて注目を集めるBOPISという言葉の解説を入り口に、あわせて知っておきたい関連用語、BORISとBOPACについても掘り下げていく。
BOPIS(ボピス)とは、Buy Online Pick-up In Storeの頭文字を取った略語。オンラインで購入した商品を実店舗で受け取るショッピングスタイルを指す。
オンラインショッピングには元来、時間や場所を選ばず買い物できるメリットがある一方で、購入してから受け取るまでのタイムラグ、配送にかかる送料といったデメリットも同時に存在してきた。こうしたメリットを享受しつつ、デメリットを最小限にする仕組みとして生まれたのがBOPISだ。
同仕組みでは、利用したショッピングサイトを運営する小売チェーンの店舗網・配送網を活用することで、よりスムーズかつ低コストでの受取を実現する。基本的に送料はかからず、自宅より早く、指定店舗に届くケースも少なくない。消費者は自身の都合の良いタイミングで店舗に出向き、商品を受け取ることが可能だ。
国内では「店舗受取サービス」、海外では「Click&Collect(※)」と呼ばれるケースもある。2022年現在ではさまざまな小売チェーンが、オフライン・オンラインを融合する施策として、自社サービスにBOPISを導入している。
※厳密には、「オンラインで購入した商品を“自宅以外”の場所で受け取る」を意味する。ピックアップロッカーや駐車場、外出先などでの受取も含まれる。
2014年11月、セブン&アイ・ホールディングスは、グループ企業が展開する総合通販サイト「セブンネットショッピング(現オムニ7)」で購入された商品を対象とする、店頭受取サービスの強化と拡充をスタートさせた。
出典:セブンイレブンホームページ
同社ではそれまで、書籍や雑誌、一部専門店の商品にかぎり、「セブン-イレブン」での店頭受取サービスを展開してきたが、その後は150万品目まで対象商品を拡大。注文後、最大4日かかっていた配送日数についても、翌々日には店頭で準備・受渡できる環境を整備した。
当初は首都圏の約7,000店舗のみで展開されてきた同サービスだが、現在では一部を除く全国のセブン-イレブンが受取場所として指定可能となっている。リテールテック先進国におけるBOPISの浸透、国内EC市場の活況、認知・支持の広がりなどを受け、サービスが強化・拡充されてきた形だ。
コンビニエンスストアは、消費者にとって最も身近な小売店のひとつであると言える。西武・そごうや、イトーヨーカ堂、LOFTなど、性質の違う複数の店舗ブランドを展開するセブン&アイホールディングスだけに、顧客にとっては、さまざまな商品を身近な場所で気軽に受け取れる利便性の高いサービスであると言えそうだ。
直近では、BOPISに関連する新たなワードも注目を集めつつある。それが、BORISとBOPACだ。まだ広くは浸透していないこれら2つのワードだが、今後はBOPIS同様、一般化が予測される。BORIS、BOPACとは、どのような意味を表す言葉なのだろうか。
BORIS(ボリス)とは、Buy Online Return In Storeの頭文字を取った略語で、オンラインで購入した商品を、実店舗(または物流センターなどの代替場所)で返品するショッピングスタイルを指す。
従来の仕組みでは、ECで購入した商品を返品する際、消費者は手続きを確認し、返品する旨をショップに伝えた上で、商品を梱包し、所定の場所まで返送しなければならなかった。費用を顧客側が負担するケースもあり、煩雑な一連の流れが購買体験を悪化させていた一面がある。
こうした手間を、実店舗を窓口とすることで軽減しようとするのがBORISの考え方だ。ショップ側にとっては、返品手続きの不安を解消することで、消費者のオンラインショッピングに対する精神的ハードルを下げる効果もある。来店時に別の商品を販売する機会を得られる点もメリットのひとつだ。
2018年4月、株式会社ファーストリテイリングは、自社の運営するアパレルブランド「ユニクロ」「ジーユー」において、オンラインストアで購入した商品の、店舗での返品・交換サービスをスタートさせた。手続きには、購入時に発行される明細書や返品カードなどが必要で、不備がなければ全国の店舗で返品・交換に応じる。
※現在返品可能期間は購入日から30日以内、店舗で支払いをおこなった商品のみ店舗で返品・交換が可能。オンラインストアで購入かつ支払いした商品の返品方法はオンラインストアへの送付のみとなっている。
一方のBOPAC(ボパック)は、Buy Online Pick-up At Curbsideの頭文字を取った略語。オンラインで購入した商品を、実店舗の駐車場などで受け取るショッピングスタイルを指す言葉だ。カーブサイドピックアップとも呼ばれ、リテールテック先進国のアメリカでは、ウォルマートの取り組みが有名である。
BOPIS同様、スムーズかつ低コストに商品を受け取れ、くわえてレジやサービスカウンターまで足を運ぶ手間も省ける。スタッフにとっても、店頭での対応のかわりに駐車場まで商品を届けるため、さほど負担に差はなく、あらかじめ受取時間を予約するケースが多いことから混雑も回避できる。消費者、店舗の双方にとってメリットの大きい仕組みがBOPACだ。特にコロナ禍初期においては、他者との接触が避けられるとして広まった。日本国内でも、そうした需要の増加やEC市場の活況などから、導入する企業が増えてきている。
2020年11月、株式会社カインズは、自社が運営するホームセンターチェーン「カインズ」において、オンラインで購入した商品を、店舗の専用駐車場で受け取れるサービス「Drive PickUp」の提供を開始した。
同サービスは、アプリから事前決済で商品を購入し、かつ店舗受取を選択した顧客に対し、営業時間内にかぎり、店舗併設の専用駐車場「PickUpパーキング」までスタッフが商品を届けるもの。最短当日の3時間後から受取が可能となっている。2022年5月現在、都市部を中心とした全国の49店舗に導入済み。あわせて一部店舗では、駐車場内に設置されている店外ピックアップロッカーで24時間の受取にも対応している。
感染への懸念から他者との接触を最小限にしたいケースのほか、大型商品を購入する場合、子ども連れや高齢者、身体の不自由な方のように自由な移動に制限がある場合など、状況に応じて幅広く活用できる利便性の高いサービスとなっている。今後は大手小売を中心に、導入が広がっていくはずだ。
全米小売業協会の調査によると、アメリカでは、消費者のほぼ半数がBOPISサービスの一部であるカーブサイドピックアップ(BOPAC)をすでに体験し、さらに残りの81%も、「今後、サービスを試したい」と考えているという。ネット通販業界の専門誌「Digital Commerce 360」が2020年9月に発表したデータでは、新型コロナウイルスの感染拡大により、カーブサイドピックアップの提供率が6.9%から43.7%まで増加したことも明らかとなった。
オンラインとオフラインが別のチャネルとして語られ、Amazonに代表される大手ECサイトが台頭した2010年代。時代は移り変わり、現在は両者を大きなひとつのマーケットとして捉えるOMOの時代だと言われている。
オンラインショッピングのメリットを享受しつつ、デメリットを最小限にするBOPIS。その導入は、実店舗が大手ECサイトに対抗するひとつの手段となっていくかもしれない。
文=結木千尋
編集=Showcase Gig
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