2018.08.07

小売店向け

店舗の受け取りロッカーが人手不足を解消するカギになる

Showcase Gig代表・新田剛史が実際に世界中で取材した店舗の省人化、無人化などのデジタル店舗の最新動向やそれによってもたらされる消費者への利便性、企業が得られる価値、そしてデジタル化を加速させる新技術を解説する本連載。第2回目は米国で進む店舗の受け取りロッカーの事例を考察する。

省人化が進む米国、新たな課題

米国小売業界では、従来の店頭・レジでの購買ではなく、ECサイトにてオンラインで注文して、店舗で受け取る「Buy Online, Pick Up In store(バイオンライン、ピックアップインストア)」というサービスが浸透している。その結果、米大手スーパーのウォルマートでは受け取りカウンターに行列ができるなど新たな課題が生まれた。その課題に対する解決策として購入した商品をセルフサービス型で受け取るロッカーを設置する企業が増えている。

ウォルマートの店舗はエントランスから入店してすぐに「Pickup」といった文言が大きく書かれたカウンターが目に入る(編集部撮影)

米アマゾン・ドット・コムとウォルマートの時価総額の差はもはや3倍にまで広がっている。米国では小売り業者の売り上げ全体に対するEC化率が、リアル店舗の企業価値をも左右する状況だ。小売り企業はネット完結型の購入だけではなく、「オンラインで決済して店舗で受け取る」サービスの展開によってEC化率の向上を狙う。このECを介した売り上げが小売り業者の重要なKPI(重要業績評価指標)となっている。米国では配送貨物の盗難問題などが深刻であることも、店舗受け取り(ピックアップ)の利用者が増え続ける要因となっている。この需要に対応する上で「店舗の在り方」が変わりつつある。

このエリアにはひっきりなしに来客があり、休日ともなると長い行列ができる。皆、ECサイトで事前に商品を注文して、店舗に受け取りに来た客だ。受け取りカウンターの盛況とは逆に、店内はむしろ閑散とした印象を受けるほど。今、この受け取りカウンターの混雑が深刻化している。この事態を解消するために、ウォルマートでは2016年から一部の店舗で「ピックアップタワー」と呼ばれる巨大なセルフサービス型の受け取りロッカーの試験運用を開始した。

 

ECで注文をした来店者はロッカーに併設された端末でECサイトで注文した際に付与される特定の番号を入力するか、スマートフォンに送付されるバーコードを読み取るだけで、数十秒程度で注文した商品を受け取れる。カウンターの行列に並ぶ手間を考えると、圧倒的に効率的だ。ウォルマートは18年4月時点で17店舗に設置しているが、18年中には500店舗にまで拡大する計画を打ち立てる。

ZARAにも最新式の受け取りロッカー登場

スペインの衣料品大手ZARAでは現時点でEC売り上げの3分の1が店頭受け取りによるものとなっており、ここでも受け取りカウンターの行列が店舗オペレーション上、深刻な課題となっている。そこで17年12月から、ウォルマートのピックアップタワーを開発したエストニアのテクノロジー企業、CLEVERON(クレベロン)と共同で次世代型受け取りロッカー「CleverFlex」を開発して、試験導入を開始した。ウォルマートが設置しているものよりさらに高性能になっており、合計4000個の荷物を一度に収納可能で取り出しまでは数秒だという。ZARAではこれにより、人件費の削減や効率の向上による売り上げ増を見込む。

受け取りロッカーしかないサラダ店

同様のアプローチは、飲食業界でも進んでいる。米国のサンフランシスコにあるサラダ専門店「eatsa(イーツァ)」は販売スタッフを置かず、注文決済端末とロッカーだけの空間で構成された店舗を15年からオープンしている。注文はスマホのアプリか、店頭に設置された端末から行い、アプリに通知された調理完了時刻に店舗に行くと、ロッカー上部のデジタルサイネージに名前と注文番号が表示されており、商品の置かれたロッカーにあるディスプレーにも同様に注文者の名前が表示される。来店客からは見えないが、もちろんロッカーの裏にはキッチンがあり、そこでスタッフが調理している。

(編集部撮影)

接客におけるセルフ化を徹底した事例だ。筆者も実際に行ってみた。一見すると無機質な空間だが、デジタルグラフィックにより透過型のディスプレーに名前が表示されるなど、遊び心を感じさせる設計になっている。サンフランシスコのオフィス街にある店舗には受け取り客が頻繁に来店していたものの、オペレーションがスムーズに回っていたのが印象的だった。

実店舗の在り方が根本から変わる

こうした動きは、そもそもオンライン注文比率の低い日本では、まだごく一部の店舗で導入が始まった程度の段階。だが今後、小売り・飲食領域の人手不足が加速する中で、合理化の一環として浸透していくことは間違いないだろう。実際に米国や、中国では店舗デザインも従来型のものから、受け取りロッカーやカウンターを中心としたものに変わりつつある。こうして店舗には物流拠点としての役割が入ってくるだろう。いきなりすべての店舗が無人とはいかないものの、想像を超える速度で進行する変化に注視していきたい。

執筆=新田剛史(Showcase Gig

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