インタビュー

2018.08.28

省人化から完全キャッシュレスへ、米国飲食業界のデジタル改革

ShowcaseGig代表・新田剛史が実際に世界中で取材した店舗の省人化、無人化などの店舗デジタル化の最新動向やそれによってもたらされる消費者への利便性、企業が得られる価値、そしてデジタル化を加速させる新技術を解説する本連載。第4回目は米国の飲食業界に焦点を当て、店舗効率化・省人化を考察する。

店舗のデジタル化による変化として、「レジ無し」「現金無し」「セルフ化による省人化」「店舗運営の効率化」といった動向が注目されている。米国では「Amazon Go」が登場する以前からも、特に飲食業界での試行錯誤が進んでいる。米スターバックスは2018年第1四半期で、プリペイドカード支払いとモバイル注文を合わせた売り上げの比率が全店売り上げの37%に達し、モバイル注文だけでも売り上げ全体の11%を占める規模にまで拡大している。米・マクドナルドなど大手企業もこれに追随する。

米・スタバはアプリ売り上げが11%に

米・コーヒーチェーンのスターバックスは、小売り・飲食企業の中でも早くからCDO(最高デジタル責任者)職を置き、実店舗のデジタル対応を推進してきた。15年秋からは店外などでアプリを使い事前に注文・決済して、店頭の専用カウンターで商品を受け取るサービスも全米で提供している。このモバイル注文比率も伸び続けており、18年第1四半期にはモバイル注文は売り上げ全体の11%を占める規模にまで拡大している。これにプリペイドカード支払いを加えると、その比率は全店売り上げの37%に到達している。現金比率は大きく減少傾向にある。

モバイルの活用を推進するスターバックスに続いて、マクドナルドなどの主要な飲食業者も同様のサービスの導入に踏み切ったことにより、米国のファストフード業界の売り上げにおけるモバイル注文比率は、16年から17年にかけて50%増加したという。

米・マクドナルドの店頭に設置されたセルフ注文端末

筆者も毎年米国のファストフードチェーンを視察しているが、確かにここ1~2年で、モバイル注文ができる店舗は圧倒的に増えている。利用が増えていることも実感する。とりわけ早朝などは、スターバックスやその他コーヒーチェーンの受け取りカウンターに、アプリで注文をした顧客の名前が印字されたコーヒーカップが大量に並んだ光景を目にすることも多い。

レジ利用の減少にこだわるファストフード各社

米国でマクドナルドやケンタッキーフライドチキンに行くと、まず目に映るのが「キオスク」と呼ばれるセルフ注文・決済端末だ。来店客自身で端末を操作して注文と決済をする。レジの設置台数や配置人員を減らす目的で、 ここ数年で米国飲食業界で急速に普及している。モバイル注文と併用することで、レジに並ぶ来店客は大幅に減ってきているという。

こうした飲食店の「セルフ化」の動きはファストフードにとどまらない。ロサンゼルス郊外などに展開するレストランチェーンのスタックドでは、すべてのテーブルに注文・決済が可能なタブレット端末が設定されている。そのタブレットを使い、ハンバーガーのトッピングやバンズなどを自分好みにカスタマイズしたり、好みのビールを複数チョイスして「利き酒」を楽しんだりできる。ここまでなら、日本でも最近居酒屋などで増えてきているテーブル注文機と変わらないのだが、「支払い・精算」までも店員を呼ばずに卓上でできるところが異なる。筆者も実際に利用してみたが、会計時には複数人で利用した場合の割り勘の計算もスムーズで、クレジットカードを使った割り勘支払いも簡単にできた。

スタックドではすべてのテーブルにタブレット端末が据え付けられており、タブレット端末では注文から決済までを可能にしている。

店頭には行列が出るほどの盛況だったが、いちいち店員を呼ぶ必要もないため、ストレスが少ない。日本の居酒屋などでは人手不足から「呼んだのに店員が来ない」「頼んだのに来ない」「伝票を持ってくるまでが遅い」と感じることは少なくない。注文と決済を1つの端末でできるようにして、セルフ化することで劇的にオペレーションを改善できるように感じられる。

現金使用禁止の店をスタバが開店

飲食店注文のセルフ化が浸透する中、完全なキャッシュレス店舗の試みも増えてきた。18年1月、スターバックスは本社のあるシアトルで現金では支払えない店舗をオープンさせた。また、ハンバーガーチェーンのシェイクシャックもニューヨーク・マンハッタンで17年10月から同様にキャッシュレス店舗をオープンしている。どちらもモバイル決済が浸透してきており、その売上比率が高いことから、こうした振り切ったコンセプトに踏み込んだのだろう。

モバイル決済を活用した店舗のデジタル化は、中国でも急速に進む。ただ、「WeChat Payment」や「Alipay」を中心とした、国民的とも言える決済インフラを軸にした中国独自の手法が特徴だ。しかし、その浸透スピードの激しさゆえに、しばしば店舗オペレーションとしては無理が生じている部分も多い。一方の米国における店舗のデジタル化は中国とは異なり、これまでの長年の検証を経ていよいよ本格的な普及期に入ったと言えるだろう。

執筆=新田剛史(Showcase Gig

 

コラム第1回「QR決済は当たり前、アリババとテンセントが見据える未来」

コラム第2回「店舗の受け取りロッカーが人手不足を解消するカギになる」

〉コラム第3回「いかに顧客を囲い込むかー熾烈化する米・会員制サービス最先端」

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