2019.12.20

小売店向け

「あの無人コンビニはいま」中国のコンビニ事情から学ぶ、小売店舗が大切にすべきもの

Amazon Goに先駆けて実用化を果たした中国の無人コンビニ「Bingo Box」。同店の登場以降、中国では同様の店舗が数多く誕生した。 「Bingo Box」の登場から3年余り。中国の無人コンビニはいまどうあるのだろうか。無人コンビニの現在から小売店舗のあり方を考える。

あの無人コンビニはいま

2016年8月、コンテナ型の無人コンビニエンスストア「Bingo Box」のモデル店舗が、広東省中山市にオープンした。広さはわずか4.5坪ほど。一般的なコンビニの10分の1以下のサイズという超小型店舗である。

同店舗の入り口は常に施錠されており、よくあるコンビニのような自由な出入りができない。入口横のQRコードを本人認証済みのWeChatアプリで読み取ると、ドアが解錠され入店が可能となる。

店内のすべての商品には管理用のRFIDタグがつけられ、レジスキャナーに商品を乗せると、このタグによって自動的にスキャンが完了する。スキャン後、モニターに表示されたQRコードをWeChatPay、あるいはAlipayを使って読み取れば精算が完了し、再度ドアが解錠される仕組みだ。

Amazon Goに先駆けて実用化を果たしたBingo Boxは、2018年までに9400万ドル(約100億円)の資金を調達した。北京や天津といった中国国内の自治体とも戦略提携を結び、2018年6月時点で店舗数は400まで拡大している。

日本を引き離す中国の決済インフラ――無人コンビニ「Bingo Box」が出現!

中国ではBingo Boxの登場以降、同様の無人コンビニが数多く誕生した。天虹商場が展開する「Well GO」(2017年8月オープン)や、京東商城が展開する「無人超市」(2017年10月オープン)などはその一例だ。

こうした店舗は「人件費がかからない」「小型でテナント料が安い」などの特徴から、有人店舗の15%以下のコストで運営できると言われている。無人という未来志向のスタイルに加え、利益の出やすいビジネスモデルとあり、拡大を見せたのだろう。

実は現在、これらの店舗の多くが苦境に立たされている。

2017年、無人コンビニ関連企業には総額40億元(約620億円)以上の投融資が集まり、1年間で約30社が設立されたが、2018年に入ると店舗撤退やリストラのニュースが目立つようになり、ついには破産する企業も現れた。火付け役となったBingo Boxも例外ではなく、2018年以降、大規模なリストラと閉店が進み、現在は北京などわずかな店舗が残るのみとなっている。

無人コンビニ減少の理由

いったいなぜ中国の無人コンビニは減少したのだろうか。本来、同モデルは利益の出やすいビジネスモデルだったはずだ。その理由には顧客体験上の問題点があった。

中国で展開された無人コンビニは、多くが都市型の路面店である。外に出れば複数の小売店が顧客の選択肢となり、入店にスマホ操作を必要とする無人コンビニを選ばなければならない理由はない。通常であれば大きな手間とならない“解錠作業”でも、天候や気温、荷物の量によっては店舗選びの理由となる。セキュリティのための入店システムが顧客のストレスになっている現状がある。

また、無人運営に必要なRFIDタグのコストが、商品価格へ跳ね返っている点も見逃せない。同タグの価格は1つあたり0.3元(約5円)。これを全商品へと設置する必要があるため、商品の数だけコストがかかる。全額を売上からまかなうかは運営側次第だが、商品価格への影響は免れないだろう。

最近ではRFIDタグのコスト対策として、画像識別技術をレジに採用する店舗が出てきている。しかし、データ不足を理由に商品が認識されないトラブルもあり、こちらも店舗が敬遠される理由となっている。

コンビニという業態は客単価が低く、1点のみの購入のために顧客が来店するケースも少なくない。入店や精算、価格におけるユーザビリティの低下はリピート率に影響し、結果として売上が伸び悩んだ。利益の出やすいビジネスモデルとはいえ、売上が少なければ成立は難しい。完全な無人コンビニはこうして数を減らしつつある。

トレンドシステムの変化

一方で台頭を見せるのが、AI技術を活用した“省人型“コンビニだ。カメラやセンサーなどの画像認識技術を使い、ノンストップ精算のJust Walk Outシステムを構築する。同モデルでは、無人コンビニが抱えていたシステム上の問題を解決しているという。

こうした省人型コンビニは、初回こそユーザー情報の登録を必要とするものの、2回目以降は自動で入り口のゲートが開く仕組みを持つ。従来の無人コンビニでストレスとなっていた入店の煩わしさを、画像認証により解決した格好だ。また、商品管理にRFIDタグを使わないため、コスト面でも優位に立っている。人件費を削減できる省人化店舗のメリットが、価格に反映されやすい特徴を持っている。

2017年、上海で設立されたCloudPick Technologyは、省人型コンビニのLePickを展開するスタートアップだ。同社は2018年10月、上海虹橋国際空港内にLePickの1号店をオープンした。

同店舗は、AIを搭載したセンサーカメラで商品の動きを検知し、自動的に決済が完了する仕組みを持つ。Bingo Boxの登場以降、主流となっていたRFIDの活用ではなく、Amazon Goタイプの画像識別技術で省人運営をおこなう店舗だ。

同店舗においてユーザーは、WeChatあるいはAlipayのアプリを店舗の自動決済システムと紐付ける。初回のみ簡単な登録作業が必要となるが、次回からノンストップかつ自由な入退店が可能になるという。

省人型コンビニ「LePick」の入り口。(撮影:編集部)

CloudPick Technology社は、この店舗のほか、北京や天津など中国国内の6か所に直営店をオープンしている(2018年11月時点)。また、プラットフォーマーとして他社との提携にも力を入れており、2019年の受注状況は全世界で300店舗を超える。2019年9月にはNTTデータと提携し、日本国内でレジなし店舗の出店支援サービスをスタートさせた。

減少を見せるRFID型の無人コンビニとは対照的に、順調に拡大するAI活用の省人型コンビニ。紹介したLePickのほかにも、jian24猩便利(シンヴェンリー)といった省人型コンビニを展開するスタートアップが登場している。

Bingo Boxの登場から3年余り。中国コンビニ業界のトレンドはいま、新局面を迎えている。

省人型コンビニの「猩便利」。2017年に急増したコンテナ型無人コンビニよりも従来のコンビニに近い佇まいだ。(撮影:編集部)

小売店舗のあり方をCXで考える

2019年に入り、日本ではコンビニの営業時間問題が話題となっている。人手不足と働き方改革の板挟みとなる中で、いかに労働環境を整え、利益を最大化できるか。コンビニ各社は対応を迫られている。

2019年8月にはコンビニ大手ローソンが、横浜市内の1店舗で深夜無人営業の実証実験を開始した。同実験では、QRコードの読み取りや顔写真の撮影など3種類の入店方法を用意。セルフレジの活用により無人運営を実現している。

現在はバックヤードに1名のスタッフが常駐するが、ローソンは今後、検証や改善を重ね、完全無人営業と店舗数の拡大を検討するとしている。

また、同社は2020年をめどに、AI活用のJust Walk Outシステムを構築した省人型コンビニ「ローソンゴー」の導入を目指す。これらの取り組みによって疲弊する現場を支援したい考えだ。

中国コンビニ市場では、顧客体験の良し悪しが両モデルの明暗をわけた。中国に続き、リテールテックの波が押し寄せる日本で、コンビニ各社はどこを見据えて店舗改革をおこなうのか。2020年代の小売店舗のあり方は、中国のコンビニ事情から学ぶべきなのかもしれない。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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