2021.05.10

新型コロナ対策

飲食店向け

コロナで進むデジタル化。“Z世代”の消費動向に見る、次の実店舗に求められる役割とは

コロナの流行を契機に、さまざまな領域がオンライン化の一途をたどっている。これまで対面を軸にビジネスを展開してきた観光・飲食・小売・イベントといった産業は苦戦を強いられ、倒産へと至る企業も珍しくない。分野によっては今後、大部分がデジタルサービスによって代替されるケースもあるだろう。

非対面でのサービスの享受が当たり前となっていく時代に、これらの産業はどのように存在意義を示していけばよいのだろうか。コロナ禍で変化する消費動向から、次世代のアナログサービスに求められる役割が見えてきた。

コロナとの共生を経て、若い世代に訪れた意識の変化

2020年3月以降続くコロナとの共生の中で、私たちの暮らしにはさまざまな変化が生まれてきた。外出時のマスク着用の一般化、リモートワークの普及などはその一例だ。感染に注意して暮らすことが最優先とされる社会では、リアルでのコミュニケーションが敬遠され、代替可能なあらゆる物事がオンラインへと置き換わりつつある。コロナ禍が終息を迎えたとしても、以前の暮らしへと完全に回帰することはまずあり得ないだろう。

こうした変化を、働き盛りの若い世代はどのように捉えているのだろうか。興味深い調査がある。

2020年9月、株式会社電通デジタル(以下、電通デジタル)は、「コロナ禍におけるデジタルネイティブ世代の消費・価値観調査」の主な結果を発表した。同調査は、1980~2000年代生まれの世代を「デジタルネイティブ世代」と位置づけ、コロナ禍における彼らの行動や価値観、消費動向の変化を追ったもの。全回答者のうち、調査時点で15-24歳の層を「Z世代」、25-34歳の層を「ミレニアル世代」と特に分類し、世代ごとの傾向をリサーチした。

(出典:株式会社電通デジタル「コロナ禍におけるデジタルネイティブ世代の消費・価値観調査」)

「コロナの影響による生活変化への認識」を尋ねる設問では、「暮らしはデジタルで完結するようになる」「より効率化が進み暮らしやすくなる」「収束したら生活がより自由になっていくと感じる」といった回答の多さが目立つ結果(順に58.9%、45.1%、48.3%)となった。この3つの選択肢においては、大人全体の世代より10ポイント以上も高い割合を示しており、デジタルネイティブ世代は、コロナの流行を分岐点とした生活様式の変化をポジティブに捉えていることが窺えた。

(出典:株式会社電通デジタル「コロナ禍におけるデジタルネイティブ世代の消費・価値観調査」)

また、「自粛期間中のデジタルサービス利用状況」を尋ねる設問では、「サブスクリプションサービスの利用」「キャッシュレス決済の利用」「オンライン対話サービスの利用」のそれぞれが過半数を超える結果に。特にサブスクリプションサービスに関しては、大人全体の世代より20ポイント以上も高い63.7%が利用しており、うち26%が「コロナ禍で初めて利用」、37%が「(コロナ禍で)利用が増えた」とも回答した。この世代は、デジタルツール活用に対するハードルが低く、アナログサービスにこだわらない価値観を持つことも明らかとなっている。

(出典:株式会社電通デジタル「コロナ禍におけるデジタルネイティブ世代の消費・価値観調査」)

一方、飲食やライブなど、リアルな場での体験価値が重視されやすい分野では、デジタルサービス(オンライン飲みや配信ライブなど)を継続する意向が弱かった。「決済」では92%が「今後もキャッシュレス決済を利用したい」と回答したのに対し、「飲食」「ライブ」では75%前後が「今後はリアルな場へ足を運びたい」と回答している。デジタルネイティブ世代はコロナ収束後、効率化を重視しデジタルに移行していく分野と、体験を重視しアナログに回帰する分野を明確に切り分けているようだ。

“アナログならではの体験価値”に重きを置き、活況を見せる実店舗の存在

こうした若い世代のニーズに応えるように、商業の領域では“実店舗でしかできない体験”を提供する場所が活況を見せている。

食とエンタメの融合、『渋谷横丁』

2020年8月、東京・渋谷の『RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤード ミヤシタパーク)』内にオープンした『渋谷横丁』は、“食とエンタメの融合”をうたう飲食店街だ。全長100メートル・総面積1000平方メートルの空間に、19店舗の飲食店が軒を連ねる。総席数はテラス席を含めて1500席。その大部分が連日連夜、若者たちで埋め尽くされている。

横丁内の各店舗は、銭湯やパチンコホールといった昭和の風情を感じさせる店構えを特徴としている。エリア全体が「改装された元商店街」という設定でプロデュースされているためだ。店内では、風呂桶やパチンコのドル箱を模した容器で「乾杯ドリンク」と名付けられたメニューが提供され、横丁全体に設置された約100台のデジタルサイネージには、ご当地の祭りの映像やローカル番組が映し出されている。こうしたロケーションベースの体験はまさしく、デジタルで味わえないものだろう。利用客にとっては、隣の席で飲む他の客の存在も、アナログならではのポジティブな要素となっているのかもしれない。場全体の盛り上がりから受ける高揚感も、楽しい飲食には欠かせないはずだ。

分断のない、一続きの体験を提示する『EAT PLAY WORKS』

(出典:EAT-PLAY-WORKS)

体験価値に着目し、にぎわいを見せる場所は渋谷横丁だけではない。2020年7月、東京・広尾にオープンした『EAT PLAY WORKS』もそのうちのひとつだ。その名のとおり、「食べて 遊んで 仕事して」をコンセプトにつくられた同施設は、1,2階にレストランスペース、3,4階にメンバーズラウンジ、5,6階にオフィスフロアという構造を持つ。一見すると、都心のオフィスビルに似た設計のようだが、施設全体が統一されたデザインを持つ点で相違する。飲食と余暇と仕事の間に明確な垣根を設けない、グラデーションのような佇まいが特徴の複合型商業施設だ。

EAT PLAY WORKSのレストランスペースもまた、渋谷横丁同様、複数の飲食店が立ち並ぶ横丁形式で設計されている。両者間で異なるのは、渋谷横丁が言わば大衆的であったのに対し、EAT PLAY WORKSが「予約せずにふらっと入れるミシュラン・カジュアル」をモットーとする点だ。同施設をデザインしたSalt Group代表の井上盛夫氏によると、「広尾という高所得者が多く、ライフスタイルへの感度が高い土地柄」を踏まえ、“高級感のあるカジュアル”をテーマに据えたのだという。施設全体が持つ雰囲気もまた、このテーマに基づいたものだ。

利用客は、オフィスフロアをコワーキングスペースとして活用しながら、メンバーズラウンジでは、読書や仲間との雑談といったリラックスタイムを過ごすこともできる。昼食時・夕食時になれば、そのままレストランスペースで食事を済ませ、もう一度仕事へ戻ることも可能だ。

こうした明確なコンセプトのもとで享受できる一連の体験は、デジタルでは到底味わえない。EAT PLAY WORKSもまた、“実店舗でしかできない体験”に重きを置いた、次世代型施設の好例と言えるだろう。

“アナログならではの体験”が、実店舗生き残りの必須条件に

コロナ禍は私たちの暮らしのオンライン化を加速させている。代替可能な領域は近い将来、ほとんどがデジタルに置き換わっていくだろう。そのような時勢の中で、実店舗にはアナログならではの役割が求められていく。渋谷横丁・EAT PLAY WORKSといった場が提示する“体験”は、コロナを経験した社会においても、揺るぎない価値として残っていくはずだ。

紹介した電通デジタルの調査では、デジタルネイティブの世代が、通勤や付き合いの減少などによって生じた時間とお金を、趣味に充てている実態も見えてきている。コロナとの共生が求められる時代。アナログサービス生き残りのヒントは、彼らの求める実店舗像にこそ隠されているのかもしれない。

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文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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