飲食店向け

2020.07.28

D2Cに学ぶ飲食店の生存戦略。「ミスチ」「sio」が逆風を進み続けられる理由

「D2C」という言葉を知っているだろうか。新型コロナウイルスとの共生が求められるいま、日本ではグルメ領域のD2Cブランドが注目を集めている。D2Cとはどのような意味なのか。概要を踏まえ、2つの事例からこれからの飲食店のあり方を考察する。

「D2C」とは

D2C(Direct to Consumer)とは、企業が自社で企画した商品を、他社のチャネルを介さず、自社サイトをメインに販売するビジネスモデルを指す。2010年ごろより市場に多く登場し、ECやSNSの浸透にともなって台頭したトレンドの事業形態だ。国内においては、ビジネスウェアブランド・FABRIC TOKYO(2012年設立)や、男性向けコスメブランド・BULK HOMME(2013年設立)の成功により一般化した。その後は多様な分野へと波及。さまざまなブランドが同モデルをベースに誕生している。

D2Cのメリットは大きく2つある。ブランドの持つストーリーを確実に消費者へと伝えられる点、顧客とより深い関係を構築できる点だ。

スーパーマーケットや大手ECサイトなどを活用する一般的な小売モデルは、販売のプロセスを第三者に一任する性質上、生産者-消費者間のコミュニケーションが希薄となりやすい。こだわりが込められたプロダクトも、プラットフォームのやり方に即した画一的なアプローチで販売せざるを得ず、ブランドのコンセプトや消費者の購入動機にはスポットが当たりづらい側面がある。

こうした課題に対し、直営店を展開するより低コストに取り組んだのがD2Cだ。同モデルは、第三者に依存しない消費者との接点をつくることで、希薄だったコミュニケーションを活発化している。込められたこだわりは自社サイトを通じて確実に消費者へと伝えられ、コンセプトへの共感ありきで商品が購入される。一般的な小売モデルで困難だった独自のアプローチが、同モデルでは可能となっている。

“食”の分野に訪れるD2Cのトレンド

モデルケースの登場で急速に数を増したD2Cブランドは、食の分野でも旋風を巻き起こしている。本格派の味をおうちで楽しむ“お取り寄せグルメ”の領域だ。

本来であれば、食における特別な体験は実店舗と密接な関係にあるはずだが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、消費者は店内での飲食から遠ざかる。ステイホームが叫ばれる状況のなか、お店の味に勝るとも劣らないD2Cブランドの商品が注目を集めている格好だ。

ミシュラン掲載レストランでシェフ経験を持つ料理人・田村浩二氏がプロデュースするD2Cブランド・Mr.CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)もそのうちのひとつである。同ブランドはチーズケーキのみを商品とし、注文をウェブサイト経由でしか受け付けない。しかしながら、週に二度、日曜と月曜の朝10時からおこなわれる販売では、いつもあっという間に完売となる人気ぶりだ。

公式ウェブサイトのトップページには、ブランドのコンセプトや商品の魅力、同氏がチーズケーキに持つ想いなどの言葉が並ぶ。SNS経由で同ブランドを知った消費者は、隅々までそのページを閲覧したのち、注文へと向かうのだろう。

Mr.CHEESECAKEの例は、D2Cの利点を最大限に生かした食の分野におけるモデルケースだと言える。多くのブランドが“第2のMr.CHEESECAKE”を目指し、追走している状況だ。

(出典:Mr.CHEESECAKE)

オンラインで顧客との接点をつくるレストラン

一方、D2Cブランドではないものの、オンラインをうまく活用し顧客と接点を持ち続けている飲食店もある。代々木上原に店を構えるフレンチレストラン・sioだ。同店は2020年春、新たな試みとして「おうちでsio」をスタートさせた。

「おうちでsio」とは、sioのオーナー兼シェフである鳥羽周作氏が、自宅でも同店の味を楽しめるよう、自作メニューのレシピを投稿型プラットフォーム・noteにて無料公開した取り組みである。初めて投稿がおこなわれた3月30日以降、7月20日までに15のレシピが公開され、そのどれもが大きな反響を呼んでいる。

同氏によると、この取り組みがTwitterのフォロワー数を大幅に増加させたという。料理人にとっては生命線とも言える自作レシピを無料で公開したことで、多くのファンの獲得に成功した形だ。

なかにはsioの存在よりも先に「おうちでsio」を知り、フォローがきっかけで同店や鳥羽周作氏の“イズム”に触れたファンもいるだろう。オンラインに設けた顧客との接点でブランドの認知が高まる状況は、D2Cのやり方と酷似する。コロナ禍に苦しむ飲食店が多いなか、sioが“予約の取れないレストラン”として名を馳せる秘訣は、こうした取り組みにあるのではないだろうか。

なお同店は、「おうちでsio」とタイミングを同じくして、はじめてのテイクアウト・デリバリー商品「sio弁当」の提供も開始している。ラインナップのひとつである「贅沢弁当」の価格は1万円~。近隣店舗のテイクアウトに比べて、かなり高額な価格設定である。けれども、同商品は予約を開始する度、一瞬で売り切れるという。逆風をモノともしない店舗運営の背景に、sioならではの顧客アプローチの存在を感じずにはいられない。

リモートで価値を示せる飲食店が生き残る時代へ

実は、先に紹介したMr.CHEESECAKEの田村浩二氏も、注文殺到のチーズケーキレシピを自社サイトで無料公開している。その理由について同氏は、「『買ったほうが安くて早い』と知ってもらうため」と、過去のインタビューで語った。

レシピ公開で消費者との接点をつくり、ブランドヴィジョンやおこなう仕事の価値を認知された結果、彼らとより深い関係を構築する。このケースもまた、D2C的なアプローチの好例と言えるに違いない。sio・鳥羽周作氏を含めた両者に共通するのは、コロナ流行下にあって問い合わせを増やし続けているということだ。

“withコロナ”“afterコロナ”の時代には、実店舗での集客に依存しないビジネスモデルが模索されていく。これまでそこを主戦場にしていた料理人は、リモートで提供できる自身の価値とも向き合う必要が出てくるだろう。

社会全体が再構築されつつあるいま、D2Cは飲食店生き残りのための意外なキーワードとなるかもしれない。Mr.CHEESECAKE・田村浩二氏、sio・鳥羽周作氏の歩みに、業界の未来を垣間見たような気がした。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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