2019.02.01

飲食店向け

Google以上の成長率。「ドミノ・ピザ」が“テック・カンパニー”と呼ばれる理由

ドミノ・ピザと言えば、米国発の誰もが知る宅配ピザのチェーンであるが、急成長している企業であることを知る日本人は少ない。The Motleyの調査によれば、Domino’s Pizzaの株価は、2010年以降2017年までの7年間で2,000%以上も株価が上昇しているのである。そしてこの成長率はAmazon、Apple、Netflix、Googleを大きく上回っているのだ。

Motley Fool:Dominoの株価

出典:The Mothley Fool

レストラン業界が苦戦しているという米国において、近年これほど飛躍的に飲食事業者の株価が上昇することは珍しい。同社の成長のひとつとしては、より美味しい食品を提供するための品質向上や話題性のあるマーケティングキャンペーンを行ったことが挙げられる。しかし、それ以上に顧客のニーズを把握し、スピード・利便性というファストフードに重要な基準を改善するため、彼らは“テックカンパニー”と呼ばれるほど、デジタルテクノロジー開発のビジネスを基礎として位置づけたことにあるのだ。

デジタルプラットフォームの開発

米・ドミノ・ピザは「AnyWare」という、どこにいても・どんな端末機器からも注文ができるというデジタルプラットフォームを開発した。プロファイルという顧客専用のページを作成することで、ピザの注文をあらゆるチャネルからスピーディに完結できる。Google Home、Amazon・Echo、Facebook Messenger、スマートテレビ、Apple・Androidのスマートウォッチ、コネクテッドカー、テキストメッセージ、Twitter など、あらゆるチャネルがその入り口となる。

AnyWareを活用した注文例

アプリ「Zero Click」では、アプリを立ち上げるだけでその10秒後にはピザの注文が完了してしまう仕組みだ。アプリ以外にも、Twitterや携帯電話のテキストメッセージ、Facebook Messengerであれば、Pizzaという単語を入力するか、ピザの絵文字を入力するのみで注文ができる。音声コマンドにも対応し、Google Homeでは「グーグル、ドミノと話す」と言うだけで、新規注文の作成が始まる。

また、企業でよく利用されるチャットツールである、Slackでは、同僚たちの分を一緒にピザを注文することも可能であり、SYNC®AppLink™を搭載したフォードであれば、運転中でも「PLACE MY EASY ORDER」と一言発するだけでピザの注文が完了となる。顧客が誤ってピザを注文してしまわないようセキュリティ対策も施し、注文後は、GPSを紐付けたTracker®を使用することで、配達されるまでの注文の進行状況を追跡することができる。

「Order your favorite oven-baked goodness on your favorite devices」の画像検索結果

「Domino’s Anyware」のトップページ

注文チャネルを幅広く用意し、顧客に合わせたチャネルでスピーディに注文できる利便性を提供しつつも、デジタルプラットフォームを活用することで、注文の受け手は1つに集約される。もちろん、従来通りの店頭や電話といった注文も受け付けてはいるが、これらの人手がかかる注文方法手段からデジタル注文へ移行することで効率的な店舗運営が可能にある。さらには顧客情報からデータを収集することで、デジタルによるマーケティングコミュニケーションもできるなど、メリットは数えきれない。

ドミノ・ピザ本社のIT部門は、社内で最も従業員数が多く、総勢400名の技術者が在籍しているという。過去10年間に渡ってテクノロジーに費やしたリソースと開発者の努力が現在の成功を築き上げた。また、同社のマーケティング最高責任者であるウェイナー氏は 「当時から見てきたことで今も続いていることは、消費者が注文する際の手段として、他のどのタイプよりもデジタル注文を好んでいるということ。その結果、リピートの注文回数が増加し、客単価が上昇、顧客満足度が向上した。また顧客の注文履歴のデータから、実に多くのことが学べる」と語る。

あらゆるテクノロジー分野へ進出

Domino’s が開発した宅配ドローン「DomiCompter」

ドミノ・ピザでは注文だけでなく、配達方法についても革新を続ける。ドローンやロボットによる配達、AIプラットフォームなどの技術開発に意欲的に取り組んでいる。2017年には、自走式ロボットによるピザの宅配実験をドイツのハンブルグで開始。コンパクトなクーラーボックスほどの大きさで、Mサイズのピザ4~5枚を搭載し、歩道を時速6km強で走行し配達するという。

CEOのアリソン氏は、同社の2017年の世界小売売上高は122億ドルであり、2025年までには250億ドルに達するだろうと予測している。今後も最新技術に投資し続けることはもちろんのこと、消費者向けテクノロジーだけではなく、POSシステムやサプライチェーンシステムへの投資も継続していくと語る。2018年後半にはニュージャージー州に、世界最大のDominoのサプライチェーンセンターを開設しており、「Pizzaを売るテクノロジーブランド」と呼ばれる同社の快進撃は今後も続く。

デジタル投資が既存企業をさらに進化させる 

Domino Pizzaは世界最大規模のピザ宅配チェーンとして知られるが、2006年〜2008年にかけて売上が急落していた。しかし、その苦しい時期もテクノロジーへの投資を続け、劇的な変革を遂げた。同社のデジタル売上は、2013年で年間20億ドルを生み出しており、現在は売上の半分以上がデジタルプラットフォームを経由しているものだという。また、2016年のThe Best and Worst Restaurant Appsでは、30万件超えというレビュー集計でハイスコアを記録し、第2位を獲得。店舗のデジタル化は顧客エンゲージメントを高めるということも証明した。

Domino Pizzaの事例と比べると、デジタルへの投資がいかに重要かという点において日本の飲食業界全体としての認識はまだ高いとはいえないだろう。日本食が世界中へ進出していく中で、テクノロジー分野においても進化できる素地はあるように思う。

文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig

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