Eatsaは失敗だったのか。減少した無人レストランとデジタル店舗の最前線

2015年、サンフランシスコに1号店をオープンし、瞬く間に注目を浴びた無人レストランがある。 セルフオーダーのキオスク、インタラクティブなピックアップロッカー、デジタルメニューボード。Eatsaには、省人化システムがまるでショールームのように集められ、これらに担保された高いUXとデザイン性に多くの人が魅了された。 しかし、ピーク時、7軒まで増えた店舗数は、2019年現在、2軒まで減少している。Eatsaの事業は失敗だっただろうか。背景から飲食店無人化の“今”を探る。

プラットフォーム提供への方針転換

Eatsaの店舗閉鎖はビジネス失敗によるものと見る向きがある。注目の中、拡大してきた実店舗の事業規模が、約2年半のうちに3割近くまで縮小したインパクトは小さくない。

しかし、「失敗」の烙印を押す前に、規模縮小と同時期に発表された同社の方針転換について知っておきたい。

2017年末、Eatsaは、従来の自社による店舗経営から、飲食店の無人化技術を外部販売する路線へ舵を切ると発表した。冒頭で紹介したシステムをオールインワンで他社に提供する、プラットフォームとしてのビジネスモデルだ。

飲食店の無人化はまだ日の浅い領域であるため、体験に基づいたノウハウが少ない。同社が店舗経営を通じて得てきた経験は、同じく無人化を目指す企業にとって貴重なものとなるだろう。「仕事量を減らし、生産性を高め、カスタマー体験を向上させる、エンドツーエンドのプラットフォームだ」と、同社のCEO(当時)であるTim Youngは語っている。

実は、同様の文脈からプラットフォームの提供を模索する企業が、米スタートアップの間で増えてきている。カリフォルニアに無人の小売店舗を構えるInokyoもそのひとつだ。こうしたビジネスモデルの転換は、必ずしも失敗を前提に行われるわけではない。利益の最大化やビジョンの実現といった未来を見越したとき、こういった選択があることも私たちは理解しておかなければならない。

Eatsaプラットフォームの活用事例

Eatsaの方針転換以降、さまざまな飲食店が同社のシステムを活用し、無人レストラン化を果たそうとしている。

2017年12月、アメリカに10店舗を展開するアジアンフードチェーン「Wow Bao」は、いち早くEatsaの技術を導入。シカゴにて無人による店舗オペレーションを開始した。

同店舗では、運用から2か月で、顧客の待ち時間が50秒以内に短縮したという。同様の業態を持つ飲食店の平均待ち時間は、5分またはそれ以上だと言われている。驚くべき効果を上げたことが見て取れる。

同社はもともと、自社によるキオスク技術を持っていたが、より効率的な運用のためにEatsaシステムの活用を決めたという。「(導入により)はるかに簡単な“ワンストップショッピング”が可能になった」と、Presidentを務めるGeoff Alexanderは話している。Wow Baoのケースは、Eatsaの培ってきたノウハウの有用性が示された好例だと言えるだろう。

最近では、より事業規模の大きい企業による活用のニュースも聞こえてきた。

2019年5月、アメリカの7都市に42店舗を展開する地中海レストラン「Roti Modern Mediterranean」は、自社の店舗にEatsaシステムを導入すると発表した。同社は、既存システムがもたらしていた混雑の減少を狙う。問題解決により、オーダーの増加やUXの向上が見込めるという。

実際に現地の店舗では、ランチタイムになると商品注文の列が発生していた。回避のため、店内にはEatsa最新モデルのパッケージが導入されている。高いUXとデザイン性は、他店舗向けのプラットフォームとなっても健在だ。

「Roti Modern Mediterranean」の店内。棚に事前注文した商品が置かれると、サインに自分の名前が表示される。(編集部撮影)

「Roti Modern Mediterranean」の店頭に置かれた注文端末。(編集部撮影)

世界に広がるEatsaの挑戦の余波

広がりを見せるのは、Eatsaシステム活用の飲食店だけではない。彼らの挑戦に影響を受けたと見られる類似サービスが、世界中で誕生している。

上海発のファーストフードチェーンの「Dicos」のDicos未来店では、Eatsaとまた違ったアプローチの無人レストランを目指す。目的は、人員削減によるコストカットだ。

一般的に飲食業の経営は「4高1低」だと言われる。人件費や家賃、光熱費、食材原価の高さに対する利益水準の低さが、業績向上の足かせとなっている現状がある。

同社は、オーダーシステムにWeChatWeChatPayを導入、顧客によるセルフサービスでのオペレーションを実現した。「従来の店舗に比べ、30%前後の人件費節減になった」と、社内責任者は話す。無人化によって「4高」のひとつが解消に向かった。

簡単・スピーディーなオーダープロセスによって向上した回転率は、売上アップにも寄与する可能性がある。Dicosの取り組みは、コストカットを目的とした飲食店無人化のモデルケースとなるだろう。

「dicos(徳克士)未来店」のピックアップロッカー(編集部撮影)

日本国内にも紹介すべきサービスがある。

2018年11月、日本初の寿司ブリトー専門店「beeat sushi burrito Tokyo」が東京・秋葉原にオープンした。“食べるをよりComfortable(快適)に”をテーマとした、ピックアップ専門の未来型飲食店だ。

同店舗では、キャッシュレス決済やモバイルオーダー、ピックアップロッカーなどを用い、対面無人による運営を実現している。Eatsaの登場から3年、実店舗のデジタル化が遅れる日本にも、ようやく無人による飲食サービスが登場した。

株式会社ユーボが運営する「beeat sushi burrito Tokyo」(出典:ユーボ)

また、2019年6月、東京・日本橋にオープンしたコーヒースタンド「TOUCH-AND-GO COFFEE 日本橋店」も、ピックアップ専門の無人飲食店だ。飲料の製造や販売で知られるサントリーホールディングス株式会社によって運営されている。

同店舗では、コミュニケーションアプリ「LINE」を使い、コーヒーを事前にオーダー。指定した時間にロッカーからピックアップできる仕組みを持つ。待ち時間なしというコンビニ以上の利便性で淹れたてのコーヒーが楽しめる上、好みに合わせてカスタマイズも可能とあり、話題を呼んでいる。

TOUCH-AND-GO COFFEE(編集部撮影)

このようにEatsaの登場によって広がったと見られる無人飲食店の例は、枚挙に暇がない。今後、より身近なところで、同様のケースを耳にする機会も増えるはずだ。まさに今、飲食店の形が変わろうとしている。

UXが飲食店成功のキーワードとなっていく

米国の調査会社が行ったショッピングの満足度に関するアンケートでは、「レジの待ち時間やレジスタッフの対応が、満足度に影響する」との回答が上位にランクした。ここからわかるのは、店舗におけるレジ体験の重要性だ。

Eatsaの取り組みに代表される飲食店無人化の動きは、「オーダーや提供にかかる待ち時間の削減」「スタッフの対応から受けるストレスの除去」といった面で、UXを大きく向上させる。このようにして最大化されたUXは、実店舗を利用するひとつの意味となっていくだろう。

また、店舗デジタル化においては、顧客データがシステムへの登録情報と紐付けられる場面が多い。いつどこで何を注文したのか。データを解析すれば、パーソナライズ化されたレコメンドも可能となる。的確なレコメンドによって、さらなるUXの向上も見込めるのではないだろうか。

飲食店無人化の“今”は、UX重視の設計とともにある。そう言っても過言ではないのかもしれない。

DIG MARK「Consumers Cringe at Slow Checkout」

 

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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