2019.05.21

小売店向け

生体認証・マイクロチップ…次は”手ぶら”キャッシュレスが主流になる?

お金を取り巻く技術は時代ごとに進歩している。平成の時代はモバイル決済の開発が進み、財布からお金を出さずとも、スマホを「かざすだけ」で支払いができるようになった。しかし、次世代の支払いはスマホすら要らないかもいれない――。実際に生体認証やマイクロチップといったSF映画のような技術を駆使した決済方法は、すでに実用化されている。実は世界では多くの消費者に容認され、じわじわと普及しつつあるのだ。ここではその最新事例をご紹介する。

注目される生体認証決済とは?

生体認証とは、人によって異なる顔、指紋や静脈などといった人間の身体的特徴を用いることで個人を識別する認証技術であり、顔認証や指紋認証などがある。指紋認証を用いたドアロックや、近年ではスマホの指紋認証や顔認証も普及している。

この生体認証技術を実店舗の決済においても応用しようとする動きが活発化している。店頭に設置された専用のセンサーやカメラなど機器で本人を認証し、その情報をクラウド上の膨大なデータベースからAIが自動照合することで、生体認証決済への活用が可能となる。つまり顧客はクレジットカードもスマホも出さずに、手ぶらでの買い物ができるということだ。

店側にも利点がある。不正利用の防止の他に、レジ業務の効率化を図ることができ、また、カードのパスワードを忘れたり紛失の際に、買い物ができないという事態にもならずに済む。

あらかじめ支払いアカウントを登録しておくことで、店頭のレジや支払い端末のカメラやセンサーで読み取ったデータをAIが照合し、その人のアカウントから支払い金額が引き落としされるしくみ。

中国では顔認証決済の実用化が進む

アリペイ、テンセントのQR中国コード決済の普及する中国で、顔認証決済が実験的に実用化されている。

顔認証は、指紋認証よりもセキュリティ面で優れているといわれており、中国のKFCが導入した「smile to pay」は、発表当初世界中で話題になった。

顔認証+決済という技術を世界初で実用化したのは、「ALIPAY(アリペイ)」を運営するアリババグループ。同社のアリペイアカウントへ事前に自分の顔情報を紐つけておくことで、顔のみでの支払いが可能になる。店頭では、独自に設置された注文端末からメニューを選び、あとはカメラに顔を向け、1〜2秒間スキャンするだけで支払い完了。ヘアメイクを変えても一卵性双生児であっても99.9%認証可能だという。

上海の「KPRO」。顔認証決済が可能なキオスクが3台設置させれている。

テンセントも顔認証決済を実用化

上海にあるスーパー「Le Marche(ル・マルシェ)」でも顔認証を導入している。こちらはテンセントグループだ。

(撮影:編集部)

商品の読み取りを店員が行うが、顔認証決済を行うことができる。ユーザーは事前に自分の顔写真情報をWeChatのミニプログラムに登録しておき、支払いの際に端末のカメラに顔を向けると、登録済みの顔面画像データと照合され、決済が行われる。都心部のQRコード決済の普及率が9割を超える中国では、このような新しい顔認証決済の技術開発が進んでいる。

指紋決済の自動販売機

指紋認証で、決済する方法もある。例えば、指紋認証の無人販売システムと自動販売機を実用化したのは、画像解析と機械学習を利用し、生体認証のアルゴリズムを開発している日本のLiquidだ。

2019年2月、同社はパナソニック株式会社と共同で「無人販売ショーケース」の実証実験を開始。電波を用いて非接触でデータを読み書きするパナソニックのRFID(radio frequency identifier)と連携させ、指紋データをクラウド化、認証スキャナーでタッチをするだけで支払いを完了できるシステムをリリース。また、「生体認証付き自動販売機」も発売。より確実に本人確認をおこなうことができる生体認証システムを組み込むことで、無人によるアルコール飲料の販売や薬品の受け取りなどの実現を想定している。

マイクロチップを埋め込み決済も

昨年から欧米で話題となっているのが、マイクロチップ決済だ。特に世界一キャッシュレス化が進むスウェーデンでは進んでいる。用化されている。米粒大のマイクロチップに個人情報やクレジットカード情報が記録されており、それを手の皮膚に埋め込むことで決済が可能になる。マイクロチップは「RFID」に対応。チップ埋め込み後は、読み取り端末に手をかざすだけで決済が完了する。

このマイクロチップ決済は2015年から導入されており、現在は4,000人近くがチップを埋め込み、日常生活に活用しているとのこと。チップを埋め込む費用は日本円で約1万8千円、埋め込む際の痛みは、ごくわずかだという。

自動販売機で商品を購入したときや電車のチケットの読み取り、社員証代わりにするなど、埋め込んだチップを活用できる場はすでにあり、切符やICカードの代わりとして実用化されている。2017年にはスウェーデン国鉄のSJが、チップによる決済を社内検札に導入しており、今後もマイクロチップ決済の可能な場所が増えていくと予想される。

利点としては、マイクロチップには特定の機器やアプリに近づいた時(手をかざす)のみに反応するため、情報が盗まれにくくスマホよりも安全だといわれている。また、カード、ID、鍵といった重要な持ち物を紛失したり忘れる心配もなくなり、環境面ではプラスチックカードの削減にもつながるとして、国全体が前向きに取り組んでいる。

日本の決済も変わっていく?

日本は現金の流通率が他の先進国に比べてまだ高い。政府もキャッシュレスを推進しているものの、やっと流行り始めたという段階だ。日本はではいくら「便利だから、安全だから」と言われても、こういったシステムに個人情報を預けてしまうことに、少なからず抵抗感を覚える人が大半だ。中国やスウェーデンのように「手ぶらで買い物」ができる時代はまだ少し先の話になりそうである。情報セキュリティを強化していき、この障壁を徐々に無くしていくのは時間がかかる。しかし、技術の進化は絶えず続いていくだろう。数十年後には、世界中で生体認証やマイクロチップとった決算がごく当たり前に使わている時代になっているかもしれない。

 

文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig

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