2022.04.11

新型コロナ対策

小売店向け

GMS業界が直面するコロナ不況。最大手・イオンリテールの対応策に見る“視点の変化”

構造不況とコロナ禍の二重苦にあえぐ総合スーパー(以下、GMS)業界で、コロナとの共生に向けた取り組みが始まっている。業界最大手・イオンリテールがにらむ、脱出への突破口とは。マーケットリーダーの進める改革から、同業界のDXのあるべき姿を考える。

GMSを襲うコロナ不況。原因は業界の事業構造に

感染への懸念から消費者に新しい生活様式を浸透させたコロナ禍。これまでDIG-INでは、居酒屋・ファストフードを中心とした外食産業、ホテル・旅館業界、コンビニエンスストアなど、さまざまな分野へとフォーカスし、その近況を伝えてきた。今回迫るのは、リテールの中でもコンビニと並んで身近な分野と言えるGMS業界だ。

消費者の生活に近い産業であるからこそ、「コロナ禍であっても最低限必要な外出」と見なされやすく、一見すると、感染拡大の影響が小さそうな同業界だが、実はそうではない。ダイヤモンド・チェーンストア誌の発表する「日本の小売業1000社ランキング」2021年版によると、同ランキングに入ったGMS企業16社のうち7社が2020年、減収に転じたという。巣ごもり需要により食品売上高は伸長したものの、別途展開する衣料品・テナント事業などが煽りを受けた。

GMSはスーパーマーケットとは違い、食品・日用品以外の販売もおこなう。上述のランキングで減収となった7社(イオンリテール、イトーヨーカ堂、イズミ、フジ、イズミヤ、イオン琉球、天満屋ストア)はすべて、大規模な総合スーパー・ショッピングモールなどを展開し、事業を拡大してきた企業だ。つまり、食品・日用品以外の売上比率が高いチェーンほど、感染拡大の影響を強く受けた可能性がある。実際に、スーパーマーケット270社の2020年の売上高は、全店ベースで前年比6.3%増、既存店ベースで5.0%増と、GMSとは対照的な結果だった。上述のランキング6位のイオン九州、同7位のイオン北海道は2020年、地域のマックスバリュやイオンストアを吸収合併したことで、増収増益を果たしている。

イオンリテール、視点の変化は苦境脱出の糸口となるか

こうした変化への適応に苦しんだGMS企業のひとつが、業界最大手のイオンリテールだ。2021年2月期の売上高は、前期比マイナス10.3%の1兆9,672億円。最終損益では、511億円の赤字を計上した。同社は新しい生活様式に対応すべく、ネットスーパーの強化や、来店客が専用端末を使って商品をセルフスキャンする「レジゴー」の導入などを進めたが、影響をカバーするには至らなかった。

来店客自身が貸出用の専用端末で商品のバーコードをスキャンし、専用レジで会計するイオンの新しい買物スタイル

コロナ流行下では、非対面・非接触への需要が高まっている。イオンリテールが進めたネットスーパーの強化、レジゴーの導入は、こうしたニーズへとアプローチする施策だ。しかし、購買システムの追加が、利用客の行動の選択肢を増やす取り組みである一方で、ECへの注力は顧客獲得までの導線に対する取り組みである点を忘れてはならない。感染拡大以前から同販路に特化してきた競合に対し、有利に立つことが難しく、短期的な視点では効果が得にくい側面がある。

イオンリテールは直近、目先の動きにとらわれない中長期的な視点でのデジタル施策を進めている。そのひとつがQRコード決済「AEON Pay(イオンペイ)」などを組み込んだ独自アプリ「iAEON(アイイオン)」の提供だ。

iAEONは、グループの決済やポイント、店舗情報などをユーザーが一元管理できる公式アプリで、2021年9月にリリースされた。扱う商品・サービスに関連する情報発信にくわえ、実店舗・ECのそれぞれで使えるクーポンなども配信するため、日常的にイオンを利用する消費者にとっては、ショッピングをサポートしてくれる利便性の高いツールとなっている。

イオンのトータルアプリ「iAEON」
ポイント管理やイオンペイでの支払い、お気に入り店舗からのキャンペーン情報が確認できるなど、様々な機能がある

社内のDX担当者によると、「イオンは実店舗とデジタルを融合させたシームレスな体験の提供を目指しており、その実現へ向けた取り組みのひとつとして、グループ共通のタッチポイントとなるiAEONの提供をスタートした」(日経クロストレンド)という。同社はアプリのリリースと同時期の2021年9月、イオンカードの利用によって付与されていた「ときめきポイント」を「WAON POINT」に変更。以降、グループ内のポイントを統合する動きも進めている。

感染拡大を受け、当初イオンリテールがおこなったECの強化、購買システムの追加は、オフライン・オンラインという2つの販売チャネルを区別した取り組みだった。しかし直近で同社が力を入れるのは、それぞれを別のチャネルとみなさず、1つの大きな顧客とのタッチポイントとして考える、OMO(Online Merges with Offline)視点での取り組みだ。イオンは今後、iAEONを通じて得たデータを分析し、ユーザーの属性をグループ化。個々の顧客にとって最適なタイミングで販促できる環境の整備を目指している。ショッピングモールに入るテナント店舗での利用を促すほか、ミニアプリ化したレジゴー機能の実装や、顧客にとってよりメリットの大きいポイントプログラムの導入にも注力する方針だ。

加速するGMS業界のDX。コロナ対策はOMO視点で考える

感染の拡大により店舗デジタル化は、以前にも増して声高に叫ばれるようになった。しかし実際に取り組まれているのは、目先のコロナ対策や、オフライン・オンラインを切り分けた施策である場合が少なくない。

おそらく今後も続くであろうコロナとの共生。その中で必要とされるDXは本来、実店舗・ECの2つからなる販売チャネルを区別するものではなく、両者の境界を曖昧化・融合するOMO目線での取り組みであるはずだ。

イオンリテールの挑戦は、業界のDXのモデルケースとなれるだろうか。withコロナ時代に、同社がどのような成長と変化を遂げるのか。その動向を見守りたい。

 

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

 

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