飲食店向け

2019.11.06

「働き方改革」とは?人材難にあえぐ飲食店は、この時代とどう向き合うのか

2016年より使われ始めた「働き方改革」という言葉。現在では世間に広く浸透し、誰もが知る言葉となっている。今年4月からは根幹をなす法律の施行がはじまり、さらに耳にする機会も増えた。本記事では「働き方改革」の内容や背景を踏まえ、飲食店運営に及ぼす影響と対応策について考えていく。

「働き方改革」とは

「働き方改革」とは、労働者がそれぞれの事情で多様に働ける社会の実現を目指す政府の取り組みを指す。軸となっているのは、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)だ。

同法は2018年4月、法案として国会に提出され、同6月に賛成多数で可決された。翌月の7月6日に公布され、今年の4月から施行がはじまっている。

近年の日本では、日常的な長時間労働や雇用形態による待遇差別など、さまざまな労働問題が顕在化する。そうした状況から、同法には労働者を守る内容が幅広く盛り込まれた。

明確な規制がなかった時間外労働には上限が設けられ(※1)、有給休暇は確実な消化が義務(※2)となった。雇用形態の違いによる不合理な待遇差は是正が必須と定められ、非正規雇用労働者に求められた場合には、説明が義務付けられている。

なかでも注目すべきがその適用範囲だ。

これまでの労働法では大企業と中小企業を区別し、後者に条件緩和や適用範囲外といった“例外”を設けてきたが、今後は一部猶予があるものの統一の基準が適用される。労働者にとって好ましい環境の整備が、企業規模にかかわらず求められる格好となった。

※1…原則として月45時間、年360時間。臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)が限度とされる。月45時間超の残業は年間6か月までの上限も。
(自動車運転業務、建設事業、医師、鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業、新技術・新商品等の研究開発業務等に関しては、適用猶予・除外あり)
※2…年間10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者(パート・アルバイト含む)に対し、毎年5日、時季を指定して年次有給休暇を与えなくてはならない。

「働き方改革」で飲食業に吹く向かい風

こうした「働き方改革」の動きに特に影響を受けると見られているのが、BtoCのマーケットを主戦場とする小売の分野だ。なかでも飲食業界には、より大きな影響があると見られている。理由は同業界が抱える深刻な人手不足にある。

平成30年3月に農林水産省より発表された「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」によると、宿泊業・飲食サービス業の欠員率は全産業中ワーストの4.6%。この数字は、調査対象となった全産業平均(2.1%)より2倍以上高く、ワースト2となった食料品、飲料・たばこ・飼料製造業(2.6%)と比較しても極端に高い水準となっている。ここには新卒で入社した社員の高い離職率が関係しており、結果として同産業はパートタイム労働者に頼らざるを得ない現状だ。

資料:厚生労働省「雇用動向調査(産業、企業規模、職業別欠員率)」 ※2009年から「宿泊業・飲食サービス業」に変更

しかしながら、宿泊業・飲食サービス業は、パートタイム労働者不足にも悩まされている。同資料内で紹介されている厚生労働省「労働経済動向調査(平成28年度)」の指標では、全産業中ワーストの数字を見せる。直近の調査では多少の改善が見られるが、根本的な解決に至っているとは言い難い。

また飲食業は、労働集約性が高く、労働生産性が低い特徴を持つ。接客や調理、会計といった大半の業務を人が行う上、中小企業が多いために経営の合理化・効率化が難しい。「働き方改革」が飲食業の“脅威”と考えられる理由はこの点にもある。ただでさえ深刻な人手不足が、さらに進行しかねない事態となっている。

とは言え、働き方改革関連法に記載された内容は、本来等しく与えられなければならないはずの労働者の権利である。適正化を前提に人材の確保を考えていかなければならず、「対応できないからしない」の精神では次々と労働者が離れていく。どうしたら時流に沿えるのか。飲食業界は岐路に立たされている。

「働き方改革」の時代に求められる店舗効率化

しかし、個々の飲食店にしてみれば、人材の確保が急務となったからと言って突然集められるわけではない。限られたリソースのなかで、いかにサービスの質を低下させず店舗運営できるかが、今後のカギとなるだろう。そのためには、効率化できる業務の洗い出しなど、工夫が必要となってくる。自店舗の強み(料理の味や価格、提供のスピード、質の高い接客など)は残しつつ、定型的な業務を効率化するやり方が正攻法となっていくのではないだろうか。

そうした状況のなか打開策として着目されつつあるのが、ITを活用した業務効率化ツールの存在だ。人に依存していた業務を、アプリなどによって省人化できる。労働集約性が高い上、人材不足にあえぐ飲食業にとっては、導入にコストがかかるデメリットはあれ、都合の良いツールとなっている。

株式会社Showcase Gigの開発するスマートフォン向けオーダーシステム、SelfU(セルフ)はその一例だ。同システムでは、顧客の持つスマートフォンをオーダー端末とし、人の手を介さない注文環境を構築する。店舗側はオーダーに割いていた人手を丸々浮かせられ、料理の提供や接客といった他の根幹業務へと集中できる。オーダーの取り遅れや伝達ミスによるロスも減らせるため、顧客満足度の向上や売上の最大化にも貢献する仕組みだ。

このように、人が従事しなくてもよい業務をテクノロジーによって省人化することが、これからの飲食業には求められていくに違いない。それぞれの業務を、資本・労働力・時間のどのリソースを使って解決するのか。「働き方改革」の時代を迎えたいま、再度分類し直す必要がある。

労働者を“消費”する時代から、労働者と“共生”する時代へ

未来の日本では、生産年齢人口の大幅な減少が予測されている。ともなって労働力の確保はさらに困難となるだろう。従来のような店舗運営が続けば、やがて破綻を迎えるのは明白だ。

「働き方改革」の実施は、ひとつのターニングポイントに過ぎない。労働者を“消費”する時代から、労働者と“共生”する時代へ。いま、飲食店のあり方が問われている。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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