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2022.05.30
新型コロナ対策
飲食店向け
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飲食店向け
日本政府観光局(JNTO)のデータによると、訪日外客数は2015年から大幅に増え始め、2019年にはおよそ3,000万人が日本を訪れていたという。これらのデータからみても、インバウンド客は今後も間違いなく増加していくだろう。観光客が訪日の際に情報収集をする手段として、以前はガイドブックや観光案内所などが主流であった。しかし昨今、情報収集の場はSNSや口コミへと移行している。いまの時代に適した飲食店のインバウンド対策を紹介したい。
観光庁の「訪日外国人の消費動向(2018年)」によると、訪日外国人のおよそ70%は日本食を食べることを期待しているという結果がでており、また、日本政府観光局の「訪日旅行データハンドブック(2017年)」でも、96.4%の人が日本食を期待していると回答している。訪日外国人による日本食への関心度はとても高く、その証拠に2018年に日本を訪れた外国人観光客は約1兆円を飲食代として使っているというデータもある。
日本食というと、私たち日本人は寿司やそばといった純和食をイメージするが、外国人が求めている日本食にはラーメン、焼き肉、居酒屋といった手軽なグルメなども含まれているため、多くの飲食店にとって訪日外国人は見込み客であるといえる。そのため、最低限の対応であったとしてもインバウンド対策をしておくことが、飲食店に求められている。
さらに、SNSが身近になった現代では、企業が発信する広告や情報よりも個人発信の情報の方が信頼できるという感覚が消費者にはある。そのため、訪日外国人はブログやSNSなどを使って情報を収集する傾向が強まっている。観光庁の調査においても、およそ60%以上の人は、スマホを使って情報を取得し、出発前の観光情報の収集は圧倒的に個人ブログが多いという結果になっている。
利用客がお店で良い体験をすれば、自然と口コミが集まり集客につながっていく。「この飲食店は良かった」と手軽に口コミしてもらうのに最適なのがSNSだ。
全てのSNSを活用し、定期的に発信するのは大変だと考える飲食もあるかもしれない。
一番手軽な対策としておすすめなのは「トリップアドバイザー」と「Googleマイビジネス」に情報を登録することだ。無料で掲載することができ、なおかつインターネット検索時にお店の情報が表示される。また、利用客からの口コミなども受け付けることができる。
さらにSNSを活用し情報発信を強化したい場合、世界的に有名なのはFacebook、Instagram、Twitterなどだ。Facebookは23億2,000万人、Instagramは10億人、Twitterは3億2,100万人のユーザー数があり、これらのツールをインバウンド対策として活用しない手はない。これらの中でも飲食店と親和性が高いのは、Instagramではないだろうか。お店の雰囲気や美味しそうな料理を写真や動画で定期的に発信でき、言語もあまり必要ない。可能であれば、SNSはインバウンド用のアカウントとして英語をデフォルトにするなどし、多くの外国人が目にするきっかけを作ることも大切だ。
注意しなければならないのは、訪日観光客の約25%を占める中国である。中国はグレート・ファイアウォールの壁があり、独自のSNSサービスが存在している。ターゲットが中国人の場合、Weibo(微博)やWeChat(微信)といった大手SNSサービスの公式アカウントを開設しておくのも良さそうである。
美味しい食事を提供することは大前提として、それ以外にどんなことができるだろうか。来店客からより良い口コミをもらうために、外国人でも気軽に、そして安心して注文・飲食できるような対策をしていきたい。
注文時の安心度が圧倒的に高いのが写真だ。言語対応していなくても写真付きのメニューさえあれば、指差しでも注文できる。可能であれば簡単な英語・中国語表記も添えるとより親切である。
訪日観光客の多くは外貨を両替している。現金の場合、会計時に「お金が足りなくなるかも」という心配が買い控えにつながる場合もある。国際ブランドのクレジットカードに対応することでこういった心配が要らなくなる。また昨今では中国で主流となっている、AlipayやWeChat Payに対応する店舗も増えている。
ハラールやベジタリアン、ヴィーガンなど食材に制限がある当事者の口コミを集めやすい。またマークやシールなどで表示すれば、口コミ時に写真などで気軽に投稿してもらえる可能性が上がる。
料理名や写真だけではどんな食材が使われていいるのか、分からない場合も多い。アレルギー表示の対象となる料理のメニューなどに食べ物マークなどで表示するのも親切だ。
日本はフリーWiFi設置箇所が少ないので、それだけで高評価の口コミになる可能性もある。
「ハッシュタグを付けて口コミ投稿したらデザートサービス!」といったようなちょっとした特典やプロモーションを企画する。
外国人と接する際に懸念するのは言語かもしれない。しかし、うまく話せないからと遠慮がちになるのではなく、「ようこそ!」というお客様をもてなす姿勢や、ジェスチャーのみの接客でもいいから、とにかく食事を楽しんでもらうという気持ちでサービスすることを心がけることが大切だ。それが良い口コミにつながっていく。
お客様のスマホで注文できる、モバイルオーダーサービスを活用するのも一つの手だ。卓上のQRコードを読み取って注文する「SelfU(セルフ)」では、自動で言語が切り替えられメニューの写真や説明も豊富に設定できる。会計もスマホで完了でき、訪日外国人の対応が圧倒的に楽になったという声も多い。注文用タブレットを設置するのと違い、コストも抑えて導入できるので、中小規模の店舗にもおすすめだ。
いまの時代、誰もがオンラインで情報をシェアしている。店側は意識していなくともSNSやブログがきっかけで、ある日突然インバウンド顧客が増えるかもしれない。積極的にインバウンド顧客を集めたいか、そうでないかは店側の意向もあるだろうが、いざという時のために、あまり気負わずにインバウンド対策をしておくことは必要である。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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