
収束迫るコロナ禍。日本の飲食店が取り組むべきデジタル活用、次なる一手は
2022.05.30
新型コロナ対策
飲食店向け
2019.12.25
飲食店向け
外食業界のデジタル化が世界各国で急速に進む中、遅れをとっている日本においても店舗デジタル化への重要性は広がりつつある。今後さらに深刻になるであろう、人手不足という課題を前に「省力化・省人化対策」をどれだけ講じれるかは、その店舗の未来を大きく左右する。実は、日本にもテクノロジーによって店舗運営の効率化を進めている業態が存在する。それが回転寿司である。
回転寿司の歴史は、意外に長い。日本で一番最初に回転寿司が生まれたのは、関西の東大阪。いまから約60年以上前の1958年に元禄寿司が「廻る元禄寿司」としてオープンした。その後、回転寿司がすぐに全国へ普及したかと言えばそうではなく、30年あまりが経過した、1980年代に都市部を中心に店舗数を大きく伸ばし大衆化した。「スシロー」「無添くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」「元気寿司」などの大手チェーンが誕生したのだ。商品の価格は、ほとんどの店が1皿100円としており、寿司といえば高級品のイメージが強かった時代において、1皿たった数百円で寿司が楽しめるとあって、回転寿司はまたたく間に人気レストランとなった。
エヌピーディー・ジャパンの「外食・中食データ情報サービス(CREST)」によると、回転寿司の国内市場規模は、2014年で5761億円、2015年で6317億円と前年比で9.7%も成長。2016年もやや横ばいではあるが、6429億円と市場はいまだ伸び続けている。
(iSTOCK)
回転寿司のビジネスモデルといえば、高原価・低価格であるが、板前さんのいる寿司屋に行けば、一人あたり最低でも3,000円以上はかかるのが普通だ。もちろん、街の寿司屋と回転寿司ではネタの良し悪しも変わってはくるが、顧客が満足する寿司のクオリティは、双方とも実現している。どのようにして、このビジネスモデルが成り立つのか。
例えば、回転寿司の100円寿司の場合、ウニやマグロの原価率は80%前後の場合が多い。もちろん、玉子やフライドポテトなど原価率の低め皿でバランスを取っているのだが、通常の飲食店の場合の原価率は30~50%前後であるから、それと比較しても回転寿司の原価率は、非常に高いことが分かる。そこに、人件費や諸経費などがかかってくるため、1皿あたりの利益はわずかということになる。飲食店を運営するのであれば、利益は一定率担保したい所ではあるが、材料費は下げられない、そこでできるだけ人件費をおさえる仕組みが作られていった。
人件費を抑える工夫として取り入れられたのが、タッチパネル注文、シャリを握るロボット、細巻きや軍艦を作るロボット、ICチップ付きの皿といったハイテクノロジーを活用した機械だ。これらのマシーンを駆使して店舗運営をすることで、省力化を実現。人件費や食品の廃棄ロスの削減にもつながり、回転寿司の高原価・低価格というビジネスモデルが確立された。
今日では、回転寿司はラーメンやデザート、揚げ物といったサイドメニューも充実させており、これらの商品を確実にそして迅速に提供するために、調理・食器洗浄・会計といった部分でさまざまなマシーンが活用されている。
無添くら寿司が発表している一例によると、回転寿司に導入されている「シャリ握りロボット」は、1時間で3,600貫つくることが可能だといい、その働きは1台で5人分に匹敵するという。
回転寿司の中でも、店舗数、売上に置いて上位を占める2社が、さらなるスマート化を目指して新たなデジタルサービスを提供し始めている。
スシローは、2019年6月に伊丹荒牧店をリニューアルし「次世代型店舗」をオープンした。同店は、顧客の座るテーブルの両端にカメラを設置し、そのテーブルの皿の数を自動でカウントするという、回転寿司業界では初となる「画像認識による自動皿会計システム」を導入。これにより、会計の待ち時間の短縮やスタッフの数え間違えのトラブル軽減を実現する。
その他にも同社は、事前予約をした商品を店舗で受け取る際に、ロッカーにある画面にQRコードをかざすことで、スタッフを介さずに受け取ることができる「自動土産ロッカー」やキッチン内でのスタッフの動きを最小限にし、負担軽減をするための「キッチン内オートウェイター」といったシステムを導入しており、最新テクノロジーを活用し省力化の実現を目指している。
次世代型店舗をオープンした背景には、「お客様満足度のさらなる向上」と、「切りつけや揚げ、炙りといった旨さに直結する、ひと手間をかける業務に従業員が集中できる環境を整えるため」であるとし、今後も“旨さ”に一切の妥協を許さない商品を提供していく方針だ。
無添くら寿司は、2019年7月よりスマホアプリを活用した新サービス「スマホdeくら」を開始。くら寿司の公式アプリを介することで、座席を時間指定で予約できる「スマホdeテーブル予約」、電話受付のみだったお持ち帰りの予約をスマホ注文で完結する「スマホdeお持ち帰り」、順番待ちの間でもスマホから事前注文ができ、店内では個人単位での注文が可能となる「スマホde注文」を展開している。同サービスは、顧客のユーザビリティ向上とスタッフのオペレーションの軽減を目指しており、2020年10月までにこれらのサービスを全店舗に導入する見込みだ。
また、このアプリでは日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応し、最大6台まで連携できることから、仲間同士での合算会計や個別会計もスムーズに対応することができる。注文に加え、支払いもスマホで完結できるようにと、楽天ペイやLINE Payなどに対応していく予定であるとしている。
テクノロジーを活用することで高原価・低価格を実現してきた回転寿司チェーン。右肩上がりで業績を伸ばし続けている回転寿司は、外食業界の中でも特に老若男女問わず人気があり、また従業員にとってもよりよい環境を構築している。今後もその時々の時代背景とニーズに合わせ進化続けていくに違いない。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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