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新型コロナ対策
小売店向け
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新型コロナ対策
飲食店向け
コロナ禍で加速した飲食店の店舗デジタル化が新たな局面を迎えつつある。間近に迫る収束を前に、日本の外食産業は今後どのような未来を見据えるべきなのか。海外の成功事例から、国内飲食店のデジタル活用を考える。
感染への懸念から、未曾有の不況を引き起こしたコロナ禍。苦境に立たされた産業の一部は、厳しい条件でも運営できる態勢を整えるべく、さまざまな施策に注力し、生き残りのための工夫や努力を続けてきた。
外食産業もそのうちのひとつだ。飲食店は人に会う場として使われる機会が多く、マスクなしでの会話をともなうシーンも珍しくない。コロナ流行下ではそうしたシチュエーションが消費者に避けられ、客離れが進んだ。各飲食店は浸透しつつあったネガティブイメージを払拭するため、さまざまな対策を導入。デジタル化への取り組みは、その一例である。
2021年2月、株式会社丸亀製麺は、展開する讃岐うどん専門店・丸亀製麺でのテイクアウト販売にモバイルオーダーを導入した。
出典:株式会社丸亀製麺プレスリリース
同ツールは、顧客個人のスマートフォンから事前に注文と決済をおこなうことで、店舗での受け取りにかかる待ち時間を削減するものである。他の客との接触を避ける目的でテイクアウトの利用を選んでいた顧客にとって、レジでの混雑が不安要素となっていた状況に対応した。株式会社丸亀製麺は並行して、キャッシュレス決済の定着にも注力している。「顧客の選択肢を広げることで利便性向上をねらう意図がある」と、同社は導入の経緯について説明した。
デジタルを活用し、非対面・非接触を目指す取り組みは、安心・安全を求める消費者の要望に応えることである。丸亀製麺は2021年3月以降、コロナの影響を感じさせない水準まで客数を回復している。
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飲食店のデジタル活用には、非対面・非接触の実現のほかにも、複数のメリットが存在する。ひとつが客単価のアップだ。オーダーシステムにデジタル端末を利用するケースでは、顧客が自身のタイミングで注文をおこなえるため、スタッフと相対する状況では選ばれなかった商品も頼まれる可能性がある。
また、データの蓄積もアナログの店舗運営にはないメリットだ。キャッシュレス決済やモバイルオーダー、ウェブ予約システムなどに代表される飲食店向けのデジタルツールでは、顧客の年齢や性別、来店人数、来店周期、よく注文する商品、平均客単価といったあらゆる情報を一元的に収集できる。これまで感覚値として扱われてきたこれらのデータを適切に管理・分析できれば、新たな経営戦略を練ることも可能だ。
たとえば、過去の傾向から顧客の選びやすい商品をオーダー端末の目に留まりやすい場所に表示したり、それらをスタッフが口頭でおすすめしたりすれば、プラス1点の注文やロイヤリティの向上にもつながり得る。長期的には、こうしたアクションが売上のアップをもたらし、安定的な経営を実現する。
日本に先駆けてデジタル化が進んできたアメリカでは、徐々に活用の成果が見え始めている。外食産業の業界動向・トレンド分析を伝えるWebメディア・Restaurant Businessが2022年2月に公開した記事によると、米国内でケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどのファストフードレストランを運営するチェーン企業・Yum! Brandsでは2021年、デジタルを起点とした売上が約220億ドルに達した。この数字は前年と比較し、約25%増加している。特にタコベルでの伸長が顕著で、同チェーンでは総売上の約20%をデジタル起点の売上が占めているのだという。
消費者への浸透と定着が売上比率を変化させていると考えると、日本でも今後デジタル活用が一般化するにつれ、アメリカと同様の状況が訪れるはずだ。withコロナ、afterコロナの外食産業にとって、店舗デジタル化は喫緊に取り組むべき課題となりつつある現状がある。
コロナ禍は、飲食店のデジタル活用を加速させたと言われている。モルガン・スタンレー社は2020年7月、COVID-19とアメリカのレストランについてのレポートのなかで、オンラインデリバリーの市場シェアを例に挙げ、飲食店のデジタル化がコロナ禍によって2〜3年早まったと示した。
日本の外食産業の次のデジタル活用を考える上では、これまで店舗デジタル化を牽引してきた海外での動向を注視する必要がある。アメリカではコロナ禍の収束が見え始め、店舗に消費者が戻ってきたことで、Kioskに注目が集まっているという。
Kiosk(キオスク)とは、飲食店の店頭に設置する券売機型のセルフオーダー端末を指す。
タッチスクリーンをインターフェースとする例が一般的で、支払いにはキャッシュレス決済が採用されやすい。リテールテック先進国であるアメリカ・中国などでは、ファストフードチェーンを中心にすでに広く活用が進むデジタルツールだ。
Kiosk導入のメリットは、省人化が可能となる点、データを収集できる点、メニューの変更が容易である点などにある。なかでも省人化については、コロナ禍が収束に向かい、客足が回復していくなかで、外食産業が直面する問題だろう。かねてから慢性的な人手不足に悩まされてきた同産業は、感染拡大期に店舗存続のため、積極的な人件費カットをおこなってきた。以前にも増して労働力の確保が必要となるであろういま、省人化は目下の課題であると言える。
前項で紹介したYum! Brands・タコベルのケースでは、約20%とされるデジタルチャネルの売上にKiosk経由のものも多く含まれているという。同社CFOのChris Turner氏は、「(感染拡大期にはデリバリー・テイクアウトが売上を牽引したが)店頭に客足が戻ってきたことで、Kiosk販売にも成長が見られた」と語っている。
2020年より続くコロナ禍において、マクドナルドやモスバーガー、ケンタッキーフライドチキンといった外食チェーンは、不況に動じず、好調に売上を推移させてきた。これらに共通するのは、国内でもデジタル活用が進むファストフード業態であった点だ。
いかなる状況にあっても安定的な運営を続ける飲食店であるために、デジタル活用は必要不可欠なテーマとなっていくのかもしれない。キャッシュレス決済やモバイルオーダーなどが浸透・定着しつつあるいま、飲食店が先を見据えて導入を検討すべきツールは、Kioskに代表されるセルフオーダーシステムなのではないだろうか。
国内外食産業のデジタル化は、まだ道の途中。海外の事例に学び、ピンチにも動じない運営を心がけていきたい。
文=結木千尋
編集=Showcase Gig
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