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飲食店向け
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中国生まれのOMO型(Online Merges with Offline)コーヒーショップとして注目されているLuckin Coffee。設立からおよそ1年半で3000店舗をオープンし、今年上場を果たしている。飲食店のチェーン経営ではありえないスピードでの上場であり、同社のビジネスモデルが新しく評価されて始めている。Luckin Coffeeがここまでの急成長を遂げたのはなぜなのか。そこには、同社が徹底する「テクノロジーと利便性視点」でのOMO型経営がある。
すでにご存知の方も多いだろうが、Luckin Coffeeとはどんなコーヒーショップなのかを簡単に説明したい。同社の設立は2017年10月、翌年の2018年1月に第1号店を出店。その後2018年の年末には、わずか1年弱で2,000店を超える店舗を構え、急拡大したユニコーン企業である。
Luckin Coffeeの最大の特徴は、注文・決済を完全モバイルオーダー化している点であり、顧客とスタッフ間のやりとりは「出来上がったコーヒーの受け渡し」のみ。この仕組みにより、顧客回転数の効率化と省力化を実現している。また、店舗はピックアップに特化した、新しいスタイルのコーヒー店となっている。
2019年5月、同社は設立からわずか19か月でナスダック上場を果たした。この記録はナスダック史上最短ともいわれており、同社はこの勢いを緩めることなく、2021年までには1万店の出店計画を掲げている。
OMOとは、2017年後半に元GoogleチャイナのCEOである李開復(リ カイフ)が提唱した言葉である。同氏は、「ソファに座って口頭でフードデリバリーを注文したり、家の冷蔵庫にミルクが足りないことを察知し購入を提案することは、もはやオンラインでもオフラインでもなく、この2つが融合された環境をOMOと言う。OMOは、ピュアなECからO2Oに変わった世界を更に進化させた次のステップである」と述べ当時話題となった。2019年現在、中国では当たり前の考えとされているこのビジネスモデルを体現しているのが、Luckin Coffeeである。OMO型ビジネスでは、どんなことが実現できるのか。
・スマホ一つでいま欲しいものが、その場で注文・決済できる利便性追求
・ピックアップとデリバリーに特化した、購入時の時短が可能となるシンプルな構造
・2杯注文で1杯無料、といったようなリピート利用の促進
・リサーチや購入履歴から生成される、顧客好みのオトクな情報
・ユーザーが店を利用すればするほどデータが集積でき、消費者行動のデータ化が実現する
・顧客のニーズや傾向を細部まで認識し、商品、サービス共に顧客の満足度を最大化できる
・SKU(受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位。Stock Keeping Unit)が増え、コストをより下げられる
・ピックアップとデリバリーに特化することで、店舗コストの削減と省力化が図れる
・広告や情報拡散といった営業がよりスピーディになり、効果的なマーケティング戦略が可能となる
ちなみにLuckin Coffeeでは、店舗と注文システムだけではなく、1杯1杯のコーヒーに至るまでのすべてを自社プラットフォーム上のシステム経由で直接的に管理しているという。テクノロジーを活用することで事業計画の精度を最大限に高めているのだ。
Luckin Coffeeは、2019年7月にティー業態(Luckin Tea)も開始した。中国では、お茶文化が根強く残っている背景もあり、コーヒー文化が浸透していない地域や顧客をターゲットにした事業を開拓。Luckin Teaでは、無添加の原材料や新鮮なフルーツを使用した、ミルクティーやフルーツ・フレーバーティーといった若者好みのお茶を開発し、中国40都市の3,000店舗で提供している。ティー事業開始から約半年、人気・認知度ともにうなぎのぼりで好調のスタートを切っている。
さらに2020年1月7日、IoT無人でコーヒーをドリップするマシン「luckin coffee EXPRESS」と自動販売機「luckin pop MINI」の発売開始を発表した。前者は、Luckin Coffeeの実店舗と同様に淹れたてのコーヒーをドリップするもの、後者は、菓子や飲み物などをEC上での価格に匹敵する安さで提供する自販機だという。システムすべてはLuckin Coffeeのプラットフォームへオンライン接続するIoT自販機で、「luckin coffee EXPRESS」ではクロスオーダー(ある自販機で注文したコーヒーを別の自販機で受け取る)ことも可能。既存店舗を補完するものとして、オフィスビル、キャンパス、空港、バスターミナル等をカバーしていくという。
同社が発表した最新のIR資料「第3四半期決算・ハイライト情報」によると、同社の店舗数は3,680店舗、前期に比べ24%増加した。現在、中国にあるスターバックス店舗は4,000店舗超といわれており、店舗数は右肩上がり増で同社に迫る勢いだ。
このように中国国内におけるLuckin Coffeeは、店舗数、人気度ともに競合相手であるスターバックスを凌ぐ勢いではあるが、利益面ではまだまだ追いついていないのが現状だ。同社は無料クーポンやディスカウントクーポンを頻繁に配布しており、それにより顧客を継続的に獲得してきた。オープン当初はその事業戦略により、認知拡大と多くの口コミに繫がっていたが、このクーポンのバラまきによる赤字化が大きな課題にもなっている。クーポンなしでもファンを獲得し黒字化できるかどうかは、Luckin Coffeeにおける今後のキーポイントとなるに違いない。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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