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2022.05.30
新型コロナ対策
飲食店向け
2019.02.15
飲食店向け
貴重な朝の時間はコーヒーが1日で一番売れる時間帯といっても過言ではない。いかに顧客の待ち時間を減らし、店の回転率を向上させ、売上に繋げるか。これは世界中のコーヒーチェーンの課題である。この課題解決のため実践されているデジタル戦略が、モバイルオーダーである。今回は、中国で急成長する「Luckin Coffee」とモバイルオーダーと近年店舗のデジタル化が進む米国を例にコーヒーチェーンのデジタル戦略を考察する。
上海市内のLuckin Coffee。青い鹿のマークがブランドの目印。(編集部撮影)
中国のLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)をご存知だろうか。いま中国で急成長中のコーヒーショップだが、その成長スピードがすば抜けて速く、業界内で注目を浴びている。Luckin Coffeeは、2017年10月に設立され、2018年1月に1号店をオープン。その後、わずが1年弱で1,400店舗まで拡大し、2018年の年末には2,000店舗を超えた。現在、スターバックスの中国国内での店舗数は3,124店舗であるが、2019年にはこの大企業を店舗数・売上ともに追い抜くと、Luckin Coffeeは発表している。一部ニュースでは、最近になってLuckin Coffeeの莫大な赤字が明らかになり、今後に対する懸念が囁かれてはいるが、同社がここまで急成長を遂げた成功の要因にモバイルオーダーがあることは見逃せない。
店内のカウンター。レジはなく、受け取りカウンターのみで運営している。(編集部撮影)
Luckin Coffeeの最大の特徴は、注文・決済を完全デジタル化し、顧客回転数の効率化を図っていることにある。実店舗はピック・アップとデリバリーの拠点とし、注文・決済はアプリ経由でのみ対応する仕組みを設計している。
そのため、ユーザーが店舗ですることは、基本的に「コーヒーを受け取ること」だけ。小規模な店舗での十分間に合うため、賃料などもコストも削減できる。その分をコーヒーの価格へ反映し、安くても美味しいコーヒーを提供することができるというビジネスモデルだ。
Luckin Coffeeは、自社でデリバリーのサービスも提供しており、配達料も日本円で約90円と破格だ。また「友達紹介ディスカウント」やユーザーが職場の同僚の分もまとめて購入することを想定した「5杯買うとさらに5杯無料」といったプロモーションも実施しており、利用者が習慣的にLuckin Coffeeへ訪れるようにすることで、顧客ロイヤリティを底上げしている。
2016年6月時点で同店の44%は「ピックアップ専門店」であり、顧客層は70%が30歳以下のホワイトカラーであるという。
スマホで注文し、支払いも完全にキャッシュレスだ。(編集部撮影)
Luckin Coffeeの注文はいたってシンプル。同社のアプリをダウンロードし、モバイル上で商品を選んで注文・決済をおこなう。支払いはWeChat Payなどで行う。注文後、ピックアップ拠点となっている最寄りの店舗へ向かい、待ち時間なく、温かいコーヒーを受け取る。
今、上海・北京などの若い世代はコーヒーブームである。スターバックスも店舗数を増やし、新しいカフェも次々オープン。出勤前や仕事中にコーヒーショップを利用する人も多いという。Luckin Coffeeのような、目新しさ、実便性とブランディング力を兼ねた店舗は、こういった世代に受けているのだろう。モバイルオーダーでは「行列ができていて結局買わなかった」という売り逃しを防ぐことができる。
これだけの短期間で急成長しているLuckin Coffeeが生活に根付くコーヒショップになるか、単なるブームとして過ぎ去るか、定かではないが、「ピックアップ・デリバリー拠点」という店舗が増えていくことは間違いない。
米国では、中国ほどキャッシュレス化は進んではいないが、近年多くの大型チェーンがデジタルシフトしている。
スターバックスが実施している、アプリ経由で注文・決済をする「Starbucks Rewars」は、米国で最も人気があり、ApplePayやGoogle Pay以上のユーザー数を誇る。スターバックスでは、このアプリ経由での注文が全注文数の14%、ピークタイムでは20%あるという。また、同社では会員限定のロイヤリティ・プログラムを実施しており、会員には限定サービスや独自のポイントサービスを提供、北米での店舗売上高の約40%がこのプログラムを利用し、ほとんどの注文・決済がアプリ経由でおこなわれている。
Miami, U.S.A. – September 12, 2015: Starbucks Coffee store at Miami International Airport, U.S.A.
また、世界最大のドーナツチェーンである米国のダンキンドーナツも2016年からモバイルオーダーを導入しており、店舗の集中する都市部モバイルオーダー率は20%近いという。
モバイルオーダーを一度利用した顧客は、80%の確率で次回の注文もをアプリ経由でおこなうと報告されており、同社のデジタル化に伴い全米の店舗改装にも着手している。さらには、音声アシスタントによる注文などデジタルテクノロジーへの投資にも積極的だ。
コーヒーショップだけ見ても、モバイルオーダーは世界中でデジタル戦略の定番になりつつある。店舗での待ち時間や現金を持ち歩かなくてよいといった便利さから、習慣的な利用を見込むことができるのだ。店舗のデジタル化を検討する際に忘れてはならないことは、店側の都合のみで省人化をするのではなく、顧客目線での購入体験を計画しなければならないということ。効率化や人件費削減のためだけにデジタル化するのでは、味気なく魅力の感じられない店に仕上がってしまう恐れがある。そのことを回避するためにも、顧客ロイヤリティに立った設計が大切であるといえる。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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