2021.02.18

新型コロナ対策

飲食店向け

【飲食M&A 前編】コロナ禍だから知っておきたい、お店のM&Aの基本

飲食業界では、補助金等が支給が終わる頃からM&Aが活発化するのではと予想されている。飲食業界におけるM&Aとは一体どのようなものなのか。今回はM&Aのアドバイザリーサービス等を手掛ける「株式会社ナシエルホールディングス」のグループ会社、「株式会社 M&A Properties」の取締役中村壮伸氏にM&Aの基本と、コロナ禍における概況について伺った。

コロナの状況下でM&Aを検討すべき?

飲食業界のM&Aが今後増える兆しがあるという。その最たる理由に、長引く不況の中で客足の戻りが悪く、経営に苦しさが出ていることが挙げられている。コロナ禍の中で給付金や助成金などを利用し、なんとか窮地を凌いた飲食店であっても、今後の経営をこのまま続けるべきか否かを悩んでいる店舗オーナーは増えているという。

これまで続けてきた大切な店を閉店するのは気が進まない、しかしこのままでは経営が立ちいかなくなる、というような悩みを抱える中の選択肢として浮上しているのが「M&A」なのである。とはいえ、ドラマなどの影響で、M&Aに対してネガティブなイメージを持つオーナーも少なくない。実際には、飲食におけるM&Aは友好的におこなわれてることがほとんどだという。飲食経営者であればひとつの知識として、飲食店のM&Aとはどういうものなのかを知っておくのも良いのではないだろうか。

そもそもM&Aとは?店や会社を売るってどういうこと?

M&Aの正式名称は「Mergers and Acquisitions」、合併と買収という意味だ。つまり、会社や事業の経営権を買い取るということをM&Aと呼ぶ。M&Aにも二つの方法がある。

「事業譲渡」という、1部門(1ブランド)のみを譲渡する方法と、「株式譲渡」という、株式の一部または全部を売却する方法だ。

例えば、Aという会社が居酒屋とカフェを経営していた場合に、居酒屋事業のみをM&Aする場合は「事業譲渡」となり、Aの会社そのものをまるっとM&Aする場合は「株式譲渡」ということになる。

飲食店の場合は、一般的に株ごと譲渡していくというパターンが多く、事業を譲渡する上でも「事業譲渡」と「会社分割」という方法があるが、基本的には同様のものとなる。

M&Aには、経営が立ち行かなくなったというネガティブな理由だけではなく、全体の事業を見渡したときに、あるひとつの事業だけがマッチしていない、という場合においても「事業譲渡」という形で、より親和性の高い企業へM&Aをする場合もある。

会社Aが「株式譲渡」した場合には、売却した会社(仮にB社とする)の100%子会社という位置付けになるため、M&A後には会社Bが、子会社となった会社Aの株主にお金を支払っていくという取り引きになる。

飲食のM&A、メリット/デメリットとは?

飲食のM&Aにはどんなメリットやデメリットがあるのだろうか。

売り手のメリット、デメリット

売り手の最大のメリットは、中村氏によれば「株式譲渡の場合であれば、株式を売るだけなので契約手続きが容易にできる」ことだという。売り手が個人オーナーであれば、所得課税とは別に株式の課税だけがされるため、税となる20パーセントを払い終わればそれで完了となる。

ほかにも、「数年かけて得る利益を短期間で得ることができる」「撤退にかかる費用の原状回復費や解約予告家賃が不要になる」というメリットがある。

デメリットは、「売り手の希望通りの条件でM&A先が見つからない可能性がある」という点。買い手のニーズをしっかりと見極め、適切なタイミングで売買をすることが必要になる。

買い手のメリット、デメリット

買い手のメリットには、「短期間で店舗ノウハウや業態を手に入れることができる」「既存スタッフの確保が期待できる」「飲食店を営業するための手続きをゼロからせずに済む」などがある。

デメリットとして大きく懸念される点は、株式譲渡の場合に「簿外債務を引き継ぐ可能性が非常に高い」ということがある。中村氏も「買収した会社が過去に労働問題があったり、訴訟を提示されていたなど、決算書からは見えないリスクが顕在化してくる場合があり、その部分も含めて引き受けなくてはならない」としており、非常に注意したい点だ。

では、仮に事業譲渡であれば、その点は免れるのか?というと、譲渡対象を細かく分けるためリスクを限定できるので、簿外債務の部分は原則引き継がなくて済むという。ただし、その分雇用契約や店舗契約といった、すべての契約を切り替える必要があるため手間は増える。

また、既存店舗を購入するため「店のコンセプトを変えることが難しい」というデメリットもある。

M&Aで従業員はどうなる?

M&Aの際には、これまで一緒に働いてきてくれた従業員の未来もしっかりと考えたいところだ。M&Aをするのであれば、従業員は全員解雇しなければならないのだろうかと悩む経営者もいるようだが、飲食店の場合は従業員もそのまま譲渡会社へ移り、雇用契約を継続するケースが一般的とされている。つまり、M&Aをしても従業員は職を失わないで済むのだ。

また希望であれば、会社を譲渡したオーナーも雇用契約という形で、引き続き業務を続投することもできるという。これは株式譲渡、事業譲渡ともに可能であり、M&Aをしたからといって、その事業のすべてを手放さなければならないというわけではないのだ。売却を検討する際には、留意しておきたいポイントである。

最後に

喫緊で店舗を閉めることを検討している店も、そうでない店であっても、ひとつの方向性としてM&Aの可能性を視野にいれておくことは、今後何かのときの打開策になるかもしれない。実際にM&Aをするのであれば、赤字店舗を居抜き譲渡してから黒字のみ集約して売る、などといった戦略的な譲渡も重要になってくる。その際はM&Aを専門としている仲介業者へ、一度話を聞いてみるのも良さそうである。

 

後編はこちら

【飲食のM&A 後編】飲食店のコロナでM&Aはどう変わった?今、引きが強い業態とは?

取材ご協力

今回取材ご協力いただいた、株式会社ナシエルホールディングスでは飲食のM&Aについて無料相談を承っています。

株式会社ナシエルホールディングス
URL:https://naciel-holdings.co.jp/

株式会社 M&A Properties
URL:https://www.maproperties.co.jp/

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編集=Showcase Gig

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