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2022.04.25
飲食店向け
2019.12.05
飲食店向け
米マクドナルドが改革を進めている。同社が打ち出す“未来の体験”とはいったいどのようなものなのか。2017年から続く取り組みから、2020年代に待つ未来を考える。
まずはマクドナルドの歴史について振り返っておこう。
世界で最初のマクドナルド店舗は、今から約80年前の1940年に誕生した。創業者となったのは、モーリス・マック・マクドナルドとリチャード・ディック・マクドナルドからなる2人の兄弟だ。「マクドナルド」の名は彼らのラストネームに由来している。
当時ドライブインレストランとして運営されていた「マクドナルド」は、1948年にハンバーガースタンドへと生まれ変わった。兄弟は、“Speedee Service System”と呼ばれる提供方法やメニュー数の削減などによって業務を効率化。破格の価格設定を実現し、成功を収めた。スピード提供とロープライスを武器とするマクドナルドのアイデンティティは、この頃すでに確立されていたのかもしれない。
やがて「マクドナルド」はフランチャイズ化を迎え、一人の男がフランチャイジーとなる。彼の名はレイ・クロック。マクドナルドを世界有数のファーストフードチェーンにまで育てた男だ。彼は1955年に米・マクドナルド社の前身となるマクドナルドシステムズを設立、イリノイ州・デスプレーンズにフランチャイズとして最初の店舗をオープンした。
デスプレーンズのフランチャイズのマクドナルド。現在はミュージアムになっている。(出典:iSTOCK)
その後、マクドナルドは1958年までに1億個のハンバーガーを販売したとされている。1961年、クロックは兄弟から「マクドナルド」の経営権を買収。ついにハンバーガービジネスのオーナーとなった。
1971年には日本マクドナルドとフランチャイズ契約を果たし、日本に初上陸したマクドナルド。国内での規模拡大については誰もが知るところだろう。マクドナルドは、2017年12月時点で世界に37,000店舗以上を展開している。
こうして世界有数のファーストフードチェーンとなったマクドナルドは、現在も進化を続けている。“デジタル化”をテーマとした取り組みを次々と打ち出しているのだ
2017年、マクドナルドは「よりモダンでよりエキサイティングな店舗環境」を構築するため、既存店舗を改装する計画だと発表した。改装後の店舗は、タッチパネル型のセルフオーダーキオスクを持ち、モバイルオーダーやカーブサイド・ピックアップ(オンライン経由のオーダーに対し、スタッフが店舗駐車場に停めた顧客の車まで商品を運んでくれるサービス)にも対応する。これらはすべてトレンドのデジタルオーダーをベースにした未来型の店舗機能だ。
計画では、2017年末までにアメリカの約2,500か所の店舗を、2020年末までにアメリカのほとんどの店舗を改装する予定としている。2022年には約14,000店舗とも言われるアメリカ国内すべての店舗が同モデルとなる予定だ。
マクドナルドは、この“店舗デジタル化”の構想を「Experience of the Future(未来の体験)」と銘打つ。
2018年8月には構想を体現する新たなフラッグシップストアが、アメリカ・シカゴにオープンした。
同店舗の入り口には、タッチパネル型のキオスク端末がずらりと並ぶ。対面注文のためのカウンターは用意されておらず、顧客はここからセルフオーダーする仕組みだ。もちろん支払いもキオスク経由でおこなえる。キャッシュレス決済であれば再度レジに並び直す必要はない。
また、同店舗はテーブルサービスという特徴も持っている。キオスク横に設置される番号札にはビーコンが埋め込まれており、書かれた数字を端末に入力することでオーダーと番号札が紐付けられる。番号札を持ちテーブルに座っていれば、ビーコンを頼りにスタッフが商品をデリバリーしてくれる。
マクドナルドが提供する“未来の体験”はこれだけにとどまらない。驚くべきはアプリ経由のオーダーもテーブルデリバリーされる点にある。
同店舗でのモバイルオーダーはGPSによって位置が特定される。顧客は着席したテーブル番号をアプリ上で入力すれば、そのまま店内でテーブルサービスを受けられるのだ。モバイルオーダーは事前注文、事前決済が前提であるため、キオスクに並ぶ必要もなければ、レジに並ぶ必要もない。顧客は後ろの行列を気にすることなく、テーブルでゆっくりオーダーを考えられる。
先にも述べたように、今後はアメリカ国内のすべてのマクドナルドがこのような店舗となる。マクドナルドの次世代型店舗には、多くの驚きが詰まっている。
マクドナルドは店舗の改装と並行して、テクノロジー分野の強化も推し進める。2019年に入り、テック企業への投資と買収が相次いでいる。
2019年3月、マクドナルドは、パーソナライゼーションを専門とするテック企業・Dynamic Yield(ダイナミックイールド)の買収を発表した。パーソナライゼーションとは、顧客のプロフィールや購買履歴などからデジタル端末のインターフェースをカスタマイズする機能のこと。オーダーの傾向やそこから読み取れる嗜好に合わせ、よりユーザビリティの高い表示を可能にする。マクドナルドは同社のノウハウをデジタルメニューへと生かす考えだ。
続く2019年4月には、モバイルプラットフォーム開発企業・Plexure(プレクシャー)への投資も発表。同社のモバイル向けマーケティングプラットフォームを活用し、個別ユーザーへの販促に力を入れると見られている。
さらに2019年9月には、音声聞き取りAIを開発するApprente(アプレンテ)の買収を発表した。同社の開発する会話エージェントは、多言語による複雑な音声注文に対応できる。騒音のある環境や、方言、文法的に不正確な会話も苦にしないと言われており、マクドナルドはドライブスルーやキオスク、モバイルオーダーなど、さまざまなオーダーシーンに活用する方針だ。
店舗の改装とテクノロジー分野の強化は、同じ方向を見据えている。先にあるのは、CXの向上と売上の最大化だ。店舗デジタル化を目指す多くの飲食店が、その最大公約数を模索していると言える。世界有数のファーストフードチェーン・マクドナルドがどういったチャレンジを続けるのか。動向から目が離せない。
日本のマクドナルドにおいては、2019年4月、静岡県内75の店舗で“未来型店舗体験”が導入された。この取り組みでは、店舗にゲストエクスペリエンスリーダーと呼ばれるCXサポートスタッフが置かれ、モバイルオーダーやテーブルデリバリーも実装されている。しかしこれらは、モバイルオーダーが来店時決済となる上、テーブルデリバリーも卓上ポップの番号を視認しておこなわれる。言わば発展途上の取り組みだ。米マクドナルドが実現しつつある“未来の体験”からは、やや遅れを取っていると言わざるを得ない。
今後は国内のマクドナルドでもデジタル化が進むと見られるが、時期についてはキャッシュレス決済やモバイルオーダーの普及率によるところも大きいだろう。
マーケットリーダーである日本マクドナルドが、国内の店舗デジタル化を牽引する日も近いのかもしれない。
文=結木千尋
編集=Showcase Gig
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