2019.10.03

インタビュー

【OMO座談会】リアルとデジタルの融合には課題もあるけど夢がある

デジタルとリアルを融合させるOMO(Online Merges with Offline)。それを実現させるための技術的・ビジネス的なポイントはどこにあるのだろうか?特集の第4回目は、国内でOMOの先進事例を手がける3社の担当者が集まり、実践的な切り口から語った様子をレポートする。

※この記事は2019年8月20日、Showcase Gig主催のトークイベント『OMO meetup vol.1』の内容を再録したものです。

トークセッション参加者

モデレーター/
松岡 剛志
株式会社レクター 代表)

2001年Yahoo!入社。その後2007年から2014年まではmixiに在籍し、2年間CTOとしてmixiのターンアラウンドを担当。その後動画のクラウドソーシング「Viibar」CTO経験後、2016年からは技術経営のコンサルティング会社、株式会社レクターを経営。

スピーカー/
濱野 幸介
株式会社プリズマティクス CEO)

アクセンチュアに8年間在籍後、株式会社リヴァンプ小会社の社長やCTOを経験。その後、無印良品にてMUJI passportのアプリ企画から開発まで担当。現在はエンジニアなら誰もが知るメディア「Developers.IO」を運営する株式会社クラスメソッド株式会社執行役員。兼、株式会社プリズマティクスCEO。

スピーカー/
澤田 昌紀
株式会社ストライプインターナショナル メチャカリ部 部長)

株式会社ノーウェアで「A BATHING APE」の販売などを経験後、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインへ。2013年、ストライプインターナショナルに入社。EC事業を担当し、サブスクリプションサービス「メチャカリ」の立ち上げ、2018年、事業を単月黒字化に導く。

スピーカー/
石亀 憲株式会社Showcase Gig CTO)

大学卒業後、システム会社を立ち上げる。エンジニアとしてモバイルの公式サイトから、ソーシャルアプリやソーシャルゲーム開発を手掛ける。エンジニアと経営とを半々でやりながら、mixiとジョイントベンチャー設立。そこで現Showcase Gig代表、新田と知り合い、2012年にShowcase Gigを共同設立する。

OMOがビジネスモデルを変えていく

松岡:それではOMO(Online Merges with Offline)の話をしていきたいのですが、実は私もOMOについて、ちゃんと理解できていなくて(笑)。そもそもOMOとはなんなのかということを、石亀さんにご説明いただいてもいいですか?

石亀:私が思っているOMOを説明させてもらいますね。これからさまざまなことがデジタル化されていくなかで、やっぱりオンラインが起点になっていくだろうと。個人のIDをいつでも認識できる世の中になることによって、「今日はリアルな店舗で買い物する」「今日は家にいるのでオンラインで買い物をする」というときに、「どっちで買い物をするとお得なんだろう?」とか「どっちが便利なんだろう?」とかということを意識しないですむようになるのが、私はOMOなのではないかと捉えています。

松岡:O2Oとはなにが違うのでしょうか?

濱野:「O2Oってなんだったのか」ということを考えると、オンラインでクーポンを出して、お店に送客するみたいな話だったと思います。基本はリアル店舗への送客。オンラインで顧客を捕まえてリアル店舗に送客するみたいな。逆もたまにありますが、基本的にはこの流れですね。一方でOMOはというと、アリババがやっているスーパーマーケットの「盒馬鲜生(ファーマーシェンション)」のような、ビジネスモデルそのものを変えかねないというところがOMOにはありますよね。そういう意味では、単なる送客から始まったO2Oとは全然違うのかなと思っています。

リテールや飲食のOMOでは、POSレジとの連携が課題となる

松岡:それでは次に、3社の事業内容をお話しいただきながらOMOへの取り組みを教えていただきたいと思います。まずは、「メチャカリ」の事例などを澤田さんからお願いします。

澤田:「メチャカリ」は2015年の9月に立ち上げたファッションのサブスクリプションサービスです。通常のレンタルとは異なり、月額5,800円をお支払いいただくと、自分の手元に3点のアイテムを置く権利が得られます。自分の好きなアイテムを3点借りて、それを返すとまた新しいのが借りられるし、延滞料もかからなくて60日経ったアイテムは、そのままお客さんにプレゼントしています。また、レンタルは通常、中古を使い回しますが、「メチャカリ」はすべて新品です。

松岡:本当に新品なんですか?すごいですね。

澤田:実はお客さんから返品されたアイテムは、USEDのECサイトで販売しています。2016年にZOZOUSEDさんと業務提携をして、データを連携し、販売経路のシステムを構築したりしています。新品をレンタルし、返品されたアイテムを二次流通サイトで販売するまでをセットにした、世界的にも事例のないビジネスモデルをやっています。返品が面倒だからレンタルしなくなる人も多いので、この6月に、コンビニやPUDOステーションでQRコードを使って簡単に返品できるシステムも構築しました。そういう意味でも、これまでのレンタルとは一線を画しているかなとは思います。

ファッションサブスクリプションの「メチャカリ」。アプリから好みのアイテムを探してレンタルでき、この6月からは返品もQRコードで簡単にできるようになった。

松岡:返品の物量とかを考えたときに地獄のようなオペレーションが想像できるのですが、返品手数料が380円なのはすごいですよね。うまく二次流通をシステム化していらっしゃるんですね。次はプリズマティクスの濱野さんお教えいただけますか。

濱野:プリズマティクスは、社名と同じプロダクトを持っていて、ECやCRMの構築などを支援するPaaS(Platform as a Service)を提供しています。今日のテーマに関わりがあるところで言うと、過去に個人として無印良品のMUJI passportのアプリを支援したり、親会社であるクラスメソッドとしてスターバックスさんでAWSを活用したデジタルマーケティングの支援をしたりもしています。またクラスメソッドでは、ブログの「Developers.IO」ってエンジニアの方、みなさんご存知だと思うんですけど、そのカフェを出しています。これはAmazon GO型のカフェになっていて、センサーを使って入り口で自分のバーコードを読み込ませると、個々人の決済情報が紐づいている状態なのでレジを通らないで商品を購入することができます。またモバイルオーダーで店外からも注文して受け取ることもできます。実験店というよりも、実際にビジネスとして回るのかを検証しているお店です。

プリズマティクスや親会社であるクラスメソッドでは様々なOMOの先進事例を支援している。

松岡:まさにOMOの世界ですよね。ありがとうございます。では、最後に石亀さんのShowcase Gigについてお願いできますか。

石亀:Showcase Gigはオーダープラットフォームの開発と運営を行っています。顧客と店舗をつなぐハブとなって、オンとオフラインをつないで注文・決済を処理するプラットフォームであらゆる連携ができます。このプラットフォームを軸に、現在3つのプロダクトをコンシュマーフロントとして提供しています。店外からアプリで注文・決済してテイクアウトできる「O:der Wallet」。店内のテーブルに貼ってあるQRコードを読み込んで注文・決済ができる「SelfU(セルフ)」。それと、店頭でキオスク端末から注文・決済できる「O:der Kiosk」。

Showcase Gigではオーダープラットフォームを中心に、店外・店内・店頭から注文・決済ができるプロダクトを開発し、運営している。

例えば、私たちは2016年からコーヒースタンドを運営しているのですが、品質にこだわったハンドドリップコーヒーを提供しているので淹れるのにまあまあ時間がかかってしまいます。これを「O:der Wallet」で事前に注文していただくと、美味しいコーヒーを待たずに受け取ることができます。お店をつくった当時(2016年)はまだOMOという言葉もなくて、「次世代の飲食店をつくるとしたらこんな感じではないか?」みたいなことを考えて始めました。

松岡:ありがとうございます。3社さんにプロダクトや事例をお話しいただきましたが、すべてリアルに紐付いています。Webで完結するのとは違って、リアルには人間という、ソースコードで書かれていない面倒くさい存在がいるわけです。そうしたなかでのOMOを考えると、オンラインとオフラインの融合を実現するためには、さまざまなハードルが出てくるかと思います。オンラインとオフラインの融合において難しいポイントはどういうところにあるのかを、教えていただけますか? まず「メチャカリ」を運営されている澤田さんから。

澤田:「メチャカリ」を立ち上げて気付いたのが、「メチャカリ」のお客様はショップに来るお客様と違って、洋服が好きというよりは、「洋服のことを考えている時間がもったいない」「ショップスタッフと話すのが面倒くさい」と考える方が多いようです。例えば、忙しく働いている女性が「月額5,800円で洋服を自由に取り替えられるし、新品だからプレゼンの日にも使えて便利だな」とか、そういうベネフィットを考えて利用しているわけです。

データを見ると、「メチャカリ」のユーザーでリアル店舗にも来てくれている方は、実は30%しかいません。70%は、これまで当社ではアプローチできていなかった方々です。私はそのことをポジティブに捉えていますが、「メチャカリ」とリアル店舗でシナジー効果を期待できるかと言ったらなかなか難しい点があると考えています。属性が違う方々なので、シナジーは生まれにくいのではないかと。また、弊社側の都合では、オペレーション面とシステム面の2点で難しいと考えています。オペレーション面では、20歳〜24歳くらいの比較的若いショップスタッフに、新たなオペレーションを覚えていただく必要があること。本来の販売業務を行い、売上をあげながら、メチャカリのお客様の対応という全く指標の異なる新たなオペレーションを追加する難しさがあります。加えて、システム面では、現在の約1,000店舗全店で実施する場合は、システムリプレースをできるのかという問題があります。今日は専門家の方がいらっしゃるので、そのあたりも解決できるのかもしれませんが…。

松岡:濱野さん、1,000店舗くらいをシステムリプレースしたいと相談されたら、どうですか?

濱野:影響を及ぼす仕組みの数が膨大なので、順番にやっていかないと大変かなと思います。なにが障害になるかというと、店舗ビジネスの場合は、POSがあって、その後ろでスタッフの勤怠の仕組みだったり、あるいはレジを始動するための仕組みだったり、会計の仕組みだったりと、さまざまなシステムがあります。そして、在庫の数はもちろんのこと、実は商品の価格もお店ごとに異なったりします。お店ごとに権限を与えられていると、各店舗専用のプロモーションや販促の施策だったり、売価の変更だったりがあるので、「店舗数×商品数×売価」でシステムが膨大な数になりますよね。それを全部管理しなくてはいけないと考えると、大変だということは想像いただけるのかなと思います。

松岡:自分がつくる側だったら、すごく憂鬱になりますね(笑)。デパートごとのポイントとか、セールとかもシステムに影響してきますからね。

濱野:そうなんです。だから優先順位をつけてやらないと。一気にやろうと思うと、あれもやんなきゃなんない、これもやんなきゃなんないって破綻しちゃうので。ステップを踏みながらやるほうが効果を得やすいと思います。

松岡:ありがとうございます。では今度は、飲食分野でオンラインとオフラインの融合の難しいポイントは、どういうところにありますか?

石亀:飲食の場合、弁当などを除いて在庫はあまり考えなくてもいいのですが、やはり店舗数が増えてチェーン化していくと、どうしてもPOSレジを入れることになります。このPOSレジを使って、原価の計算や従業員の勤怠管理をしているのは、小売りと同じですね。店舗にあるシステムの中央にPOSレジがあって、店舗内ですべてが完結しています。それで先程紹介したモバイルオーダーのプロダクトなどを導入しようとすると、注文をなんとかしてPOSレジに入れなくてはいけません。なぜかというと、キッチンで働くコックさんはPOSレジに入った注文データをもとに調理していくので、それとは別にiPadがあってそこにも注文が入るとなると、コックさんは混乱してしまいます。だから、どこのお店でも「POSレジになんとか注文データを入れてください」となります。そうすれば、裏のオペレーションを変える必要がないからと。ただ、POSレジが外から注文データを受け付けるようになっているかというと、そうではありません。そういうことを想定してつくられていませんから。そのため、POSレジと外部のシステムを連携させるのが難しいとされています。

松岡:POSレジは、インターネットにつながっていないのですか?

石亀:本部とのやりとりはネットにつながっているのもあるのですが、外から注文を入れるようなときは難しいですね。ネット経由で注文を入れようと思っても、各店舗のPOSにグローバルなIPアドレスががあるわけでもないですから。また、Windows PCで作られていることが多いのですが、特別なプロトコルで通信する必要があります。

松岡:なるほど。それは大変な話ですね。逆に夢のある話もお願いできますか?

石亀:それでもなぜインターネットにつなげようとしているかと言えば、理由のひとつにデータを蓄積できるというのがあります。今まで飲食店で提供されている料理には小売と違ってJANコードなどがついていませんし、IDもありません。でもネットにつなげれば、世の中にはどんなメニューがあってそれらがどんな人にどう消費されているのか、だったり、それまで保存されず消えていったデータを正確に把握できるようになります。売上に貢献できるようなデータをお店に還元できて、飲食店を盛り上げていけるというのは、夢のあるところだと思います。

OMOを実現した店舗では、注文・決済もクラウド管理されることにより、従来の店舗では不可欠だったレジをなくすことも可能に。

松岡:ありがとうございます。澤田さんはいかがでしょう?

澤田:夢のある話をすると、弊社の既存の1,000店舗とメチャカリを使って、店舗にある在庫をいつでも貸し出して、返品も店舗で受け付けるような、言ってみればTSUTAYAさんみたいなビジネスモデルをアパレルでできないかと思っています。例えば女子大生が、デート前に「earth music&ecology」の店舗に来て好きな洋服を借りて、デートが終わったら返すとか、そういう世界を実現できないかなと。

松岡:それは素敵ですね。

澤田:それと、弊社では、商品の下げ札にRFIDを3年くらい前から付けています。これで在庫管理がしやすくなったのですが、導入時にやりたかったことはまだ実現できていません。「メチャカリ」を軸に考えると、「メチャカリ」の商品にRFIDを付けることで、どの服が借りられてどの服が返品されてくるとか、服の需要までが分かるようになると考えています。

松岡:なるほど。濱野さんもOMOのいい面についてなにかありますか?

濱野:今は飲食にしろ、小売にしろ、仕事量が多いわりに人が集まらなくて、お店は本当に大変だと思います。ただ、OMOなどによって、少ない人数でオペレーションを回し、スタッフさんがお客さんときちんと会話できる状況を実現することも可能だと思っています。また、今は「絶対欲しい」と思った販売中の商品が在庫切れになってしまうことがありますが、ユニクロさんのように店舗数が多ければ、どこかの店舗には絶対あるわけで。在庫切れがないみたいな世界も実現できるのかなとは思います。

考える力や想像する力のあるエンジニアが求められる

松岡:最後に「OMOの観点から言うと、こういうエンジニアになっていくと価値を生み出せる」という話をお伺いしたいと思います。

石亀:例えば私たちが2016年にデジタル化したコーヒースタンドをつくった時の話をすると、「そもそもなにがデジタルなの?」みたいなところから考えて、「スマホからの注文がちゃんと通っているのか、可視化されないと不安になるね」ということでサイネージをつくったり、サイネージをつくるにしても「ステータスをリアルタイムに表示できれば良いのであれば、既存のWindowsサイネージではなく、ブラウザで作ってもサイネージとしての機能を果たすよね」みたいなことを一つひとつ考えていきました。既存のお店にあるようなものを、どうやったらネットにつながった形で置き換えられるかを考えたわけです。OMOを実現していくには、そういったところを考え、新しく生み出していくエンジニアと一緒にやっていきたいなと思いますね。

松岡:技術だけでなくて、考える力も必要ということですね。

石亀:そうです。一方で、私たちは店舗のデジタル化を進めるために、さまざまな機器を店舗様にお渡ししています。キッチンプリンターであるとか、キッチンディスプレイとか、店員さんが持つハンディー端末とか。店舗に渡す端末が結構な数になるんですね。そうなると、その管理をしなくちゃいけなくなります。リアルタイムで監視したり、急につながらなくなったときはリモートで作業したり。データセンターで昔あったような問題が、今新たに起こり始めているのかなと感じています。そうした古くて新しい問題を、今の知見を使って解決してくれる方も必要になってくると思っています。

松岡:ちなみに今、「メチャカリ」はエンジニア採用をしていますか?

澤田:私のいるメチャカリ部では、今のところしていないですね。ただ、ストライプインターナショナル全体では、デジタルマーケティング部門を中心にエンジニア採用を強化しています。また、1年半前に、ストライプデパートメントという新しいグループ会社をつくりまして、こちらは勤務体系もフレックスにするなど、エンジニアも働きやすい環境を整えています。最近は採用もしているので、興味があればぜひ。

松岡:濱野さんからも、どんなエンジニアが求められるか教えていただけますか?

濱野:OMOに限らずなんですけれども、個人的には想像力とリスペクトのあるエンジニアが必要だと思っています。なぜかと言うと、クライアントが欲しいのは、具体的な管理画面だったり、フロントアプリだったりしますが、そうしたものを開発しようとすると、今日お話ししたみたいにいろんな領域やハードルを乗り越えて繋ぎ合わせて行かねばならず、他の領域とどう連携すればいいのか想像したり、自分にはないスキルの人と協働しないといけないわけです。例えば、従来管理画面や基幹システムを担当してきたSIerと呼ばれる方々がいますが、SIerと言うと、「ちょっと古いね」みたいな感じがあるかもしれません。でも彼らは、クライアント側から見た欲しいサービスだったり、達成したいビジネスモデルだったりを仕上げていくことをやっているわけです。そうした方々へのリスペクトがないと、技術だけの自己満足で終わっちゃうのかなと感じています。

松岡:確かに非常に重要なポイントですね。ビジネスがちゃんと回って、世の中にインパクトを与えられるっていうのは大きな価値ですから、そこにちゃんと敬意を払う人材が求められるということですね。すごくいい話だと思います。みなさんありがとうございました。

 

文=堀越大輔
編集・デザイン=Showcase Gig

 


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