2022.03.28

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「価値」から「目的」へ。変わる消費志向から考える、新時代のtoCビジネスのあり方

新型コロナウイルスの感染拡大により定着しつつある新しい生活様式。変化への適応が各所で叫ばれるなか、注目を集め始めているキーワードがある。パーパス・ドリブン(purpose-driven)という言葉だ。 パーパス・ドリブンとは、どのような意味を持つ言葉なのだろうか。概要と市場の動向から、ニューノーマル時代の実店舗・ECのあり方を考える。

消費志向の中心となりつつあるパーパス・ドリブン

パーパス・ドリブンとは、「意図・目的」を意味する英単語であるpurposeと、「駆り立てられる」を意味する英単語であるdrivenで構成されたマーケティング用語。組織や消費者が意図や目的を主体として動いている状態を指して使われる。

これまでの企業活動では、what(何を生み出すのか)や、who(誰に向けて価値を提供するのか)、how(どのようにして認知を広げるのか)などに焦点が当たりやすく、why(なぜ作るのか)が二の次とされてきた。しかし近年では、商品そのものが持つ価値以外の部分に購買動機を見出す「コト消費」「トキ消費」「イミ消費」といった言葉が生まれるなど、商品やブランドが持つストーリーに注目が集まるケースも珍しくない。

2021年9月、米・IBMと全米小売業協会(National Retail Federation)が世界28か国に住む19,000人以上を対象に実施した調査では、「(健康や環境に対する影響を考えるなど)自身の価値観に基づき、製品やブランドを選択する(Purpose-driven)」とした回答者が44%に上った。この割合は、2020年の調査から4ポイント増加しており、「利便性と物的価値を考え、製品やブランドを選択する(Value-driven)」との回答を7ポイント上回っている。同調査からは、世界的にパーパス・ドリブンが消費志向の中心となりつつある現状が見て取れる。

出典:Consumers want it all

国内ではプラスチック資源循環促進法の施行がパーパス・ドリブン定着の追い風に

日本国内でも近い将来、こうした機運がさらに高まると予測されている。状況を加速させると考えられているのが、2022年4月のプラスチック資源循環促進法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)の施行だ。

同法は、プラスチック製品の製造から販売、廃棄に至るまでのフローを、
①設計・製造段階
②販売・提供段階
③排出・回収・リサイクル段階
の3つに分類し、各タイミングごとに資源循環を促進しようとする法律だ。事業者は、環境に配慮した製品設計や、提供・排出量の削減を心がけなければならず、場合によっては、経済産業大臣および環境大臣の勧告・公表・命令を受けることになる。
一方で、資源循環に積極的に取り組んだ事業者には、
・リサイクル材の利用にかかる設備への支援
・認定製品を優先して国が調達する制度の適用
・廃棄物処理法の業許可なしで自主回収・再資源化をおこなえる特例措置(※認定事業者のみ)
など、さまざまなメリットもある。

上述の調査では、「価値観を重視する」とした回答者ほど、目的のために自身の購買習慣を変化させることに柔軟で、サステナブルやリサイクルといった環境負荷低減の取り組みにも気を配る傾向も明らかとなっている。つまり、環境問題に対する関心が高まるほど、パーパス・ドリブンの企業・消費者は増加する可能性があり、プラスチック資源循環促進法の施行が結果として、同概念の浸透に寄与するとも考えられるのだ。

たとえば、オーガニック製品を扱う小売店舗では、スタッフや顧客がサステナブルや脱プラスチック、リサイクル、エシカル消費など、環境問題とリンクしたキーワードに関心を持ちやすい。彼らは商品の利便性や物的価値だけに魅力を感じているのではなく、製造するブランドのストーリーなどにも共感し、その商品を販売する側に立つこと、あるいは購入することを決めているからだ。今後、プラスチック資源循環促進法の施行によって事業者側の意識が高まれば、脱プラスチックの活動にメッセージを含める企業も増えるだろう。すると消費者は一層、自身の価値観に合う商品を選択する傾向を強めていくことになるはずだ。

出典:Consumers want it all

外食産業で広がるサステナブルへの取り組み。環境への配慮が“パーパス”となる時代へ

プラスチック資源循環促進法の施行を前に、外食産業では環境問題に関連するさまざまな試みが動き出している。

ドトールコーヒーは2021年11月、フードロス削減を目的に、消費期限が近い商品を最大3割引で販売する取り組みをスタートさせた。対象となるのは、店内で扱うデニッシュや焼き菓子、サンドイッチなどの袋詰商品。店舗の判断で、10〜30%を値引きする。ドトールコーヒーは同年8月、コークッキングの手掛けるフードシェアサービス・TABETEを、系列チェーンのエクセルシオールカフェ50店舗に導入している。こうした取り組みへと注力することで、顧客とともにサスティナブルな社会の実現を目指す方針だ。

出典:株式会社ドトールコーヒー 公式ウェブサイト

一方、スターバックスコーヒーは、2020年1月より紙ストローの使用をスタートしている。同年3月には、国内の全店舗にあたる約1,500店(当時)に導入。2021年9月には、フラペチーノ用の口径の太いストローも紙製へと移行した。プラスチック資源循環促進法の施行を受け、同社は今後、樹脂製のグラスでのアイスドリンクの提供や、ステンレス製カトラリーへの切り替え、テイクアウトにおけるリユース容器貸し出しサービスの拡大を進めるとしている。スターバックスジャパンによると、一連の取り組みで年間約60トンのプラスチック製ゴミが削減に向かうという。

出典:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 公式ウェブサイト

青山にあるニューヨークスタイルのグリルレストラン・The Burnも、積極的に環境問題へと取り組む飲食店のひとつだ。同店舗は、サステナブル関連の認証を受けた魚介類や経産牛、規格外の野菜を活用した料理を提供する。モットーに基づく運営はまさに、パーパス・ドリブンなものだ。The Burnではすでに、ストローなどの資材にも紙製のものを取り入れている。

サステナブルと店舗デジタル化。つなぐパーパス・ドリブンが新時代のキーワードに

外食産業で進む環境問題への取り組みは、店舗デジタル化とも地続きであると言える。根本にあるのは、どのような飲食店でありたいか、そして、変わる消費志向にどう応えていけるか、だ。

ドトールコーヒーやスターバックスコーヒーはオフラインでの体験が前提の飲食店でありながら、店舗にモバイルオーダーを導入するなど、オンラインと融合する施策を打ち出している。The Burnもまた、サードパーティーを活用したオンラインデリバリーを店舗に取り入れ、外食にこだわらない形で自店が掲げる食体験の提供を続けている。

双方に共通するのは、独自の運営を続けつつも、時代の変化、消費志向の変化に柔軟で、顧客に対して、また社会に対しての自店舗の存在意義を見失わない点だ。これらは本来、飲食業だけに限らず、小売業や宿泊業など、toCのあらゆる分野に求められる要素である。こうした複数の条件を兼ね備えている状態こそ、パーパス・ドリブンと呼べるのではないだろうか。

近年では、シーズナル商品の販売を主力事業とする食品物販や、アパレル業界のハイブランドからもモデルケースが生まれつつある。ニューノーマルへの適応が叫ばれる昨今。パーパス・ドリブンは、toCの分野が時代を生き残るための重要なキーワードとなるかもしれない。

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文=結木千尋
編集=Showcase Gig

 

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