
収束迫るコロナ禍。日本の飲食店が取り組むべきデジタル活用、次なる一手は
2022.05.30
新型コロナ対策
飲食店向け
2020.11.02
新型コロナ対策
飲食店向け
低迷する飲食業界で店舗デジタル化に注目が集まっている。最近では、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というトレンドワードでも知られるこの領域。はたして外食復活のカギは、ここに眠っているのだろうか。 本稿では、飲食業界に広がる店舗デジタル化事例を踏まえ、アフターコロナの飲食店に求められる対応を考えていく。私たちは外食における食体験を、もっと広い視野で見つめる必要があるのかもしれない。
不特定の客とスペースを共有し、店員から対面でサービスを受け、提供された料理を食べる。――これまで当たり前に受け入れられてきた飲食店での日常だ。感染への懸念が広がった今年3月以降、こうした“普通”が消費者から敬遠され、外食産業は苦境に立たされてきた。店舗側は、消毒用アルコールの設置やスタッフのマスク着用、入店客数の制限といった対策をおこない、顧客が安心して利用できる環境づくりに努めているが、まだ以前のような活気は戻っておらず、感染状況とのにらみ合いが続いている。コロナとの共生にあたり、より踏み込んだ対応が飲食店に求められている現状だ。
そのような状況のなか、注目を集めている動きがある。飲食店のデジタル化である。テクノロジーによってもたらされる非接触のシステムや販路の拡大、運営の効率化が、低迷する外食産業を救うと目されている。
スマホアプリを通じて、店外から事前注文・事前決済をおこなえるモバイルオーダーは、マクドナルドやスターバックス、吉野家など、テイクアウト・デリバリーの売上割合が大きい外食チェーンを中心に導入が進む。同ツールの活用により利用客は、店舗スタッフや共用システムといった感染リスクとの接触を最小限にできる格好だ。
また、「最高のコストパフォーマンス」を体現する俺の株式会社が運営する店舗ではいま、全社的な店舗DX推進の一環として、テーブルに備え付けのQRコードを読み取ることで顧客のスマホから注文をおこなえるデジタルオーダーシステム・O:der Table(オーダーテーブル)を導入している。こちらもモバイルオーダー同様、店内で想定しうる感染リスクへの接触を最小限にできる仕組みだ。
同社では、2020年末の「俺のイタリアン&Bakery 東京駅八重洲地下街&Bakery 東京駅八重洲地下街」への導入を皮切りに、「俺の焼肉」「俺のイタリアン」「俺のGrandTable」「俺のイタリアン」「俺のやきとり」と徐々にO:der Table(オーダーテーブル)導入店舗数を広げ、安心・安全かつ効率的な店舗運営にシフトしている。
一方、デジタル化は、安心・安全に対する取り組み以外の部分にも波及しつつある。コロナ流行下での利用客の減少を受け、EC事業へと踏み切る飲食店が相次いでいるのだ。
千代田区平河町に本店を構える株式会社ソラノイロ(以下、ソラノイロ)は、「女性が1人でも気軽にラーメン屋に入れるように」をコンセプトに掲げる、2011年創業の人気ラーメン店だ。同社は国内で感染が拡大し始めた今年3月、自宅でもソラノイロの味が楽しめるよう、ラーメンキットの通信販売をスタートさせた。
当初はメールで受注する暫定的なシステムだったが、大きな反響があったことで、ネットショップ作成サービス・BASEを活用したECサイトを構築。その後は、ラーメンキットだけでなく、餃子や焼売といった単品メニュー、産地直送の食材とラーメンキットをセットにしたサブスクリプション型の定期便なども販売している。
10月現在、取り扱いのある同社の看板メニュー「ベジソバ」のキットは、2食入りで2,600円(税込)。実店舗のメニューと比較すると、やや割高な価格設定だ。しかし、ECサイトの開設以降、注文が殺到しているという。代表取締役を務める宮崎千尋氏は、「店舗の売上を全体の6~7割にとどめ、残りをテイクアウト・ECで稼ぐ業態を目指したい」と、過去のインタビューで語っている。
ソラノイロ以外にも、ラーメン店からは麺屋武蔵やAFURIが、居酒屋業態からは串カツ田中や塚田農場が、新たにEC事業へと乗り出している。デジタル化が飲食店のビジネスモデルを多様化させている実態がある。
ソラノイロが活用したネットショップ作成サービスのBASEは2020年6月、拡大する外食産業の需要に応えるべく、新機能「テイクアウト App」の提供を開始した。同機能は、BASE上に開設したECサイト経由で、飲食店がテイクアウト商品を販売できるものだ。実店舗での受け渡しを想定した利用が可能で、店舗側が設定した受取日時内での商品注文と、クレジットカードによる事前決済に対応する。簡易的なモバイルオーダーとも考えられる機能となっている。
これにより、BASEでは、ECとモバイルオーダーをワンストップで提供できるようになった。活用すれば、リアルに限定されてきた飲食店の商圏が、手軽にネット上にまで拡張できることになる。顧客視点では、さまざまな接点からお気に入りの飲食店の利用が可能となった形だ。
BASE以外では、ミールキットの開発・販売で知られるオイシックス・ラ・大地(以下、オイシックス)も、飲食店のEC化支援に名乗りを上げている。串カツ田中や塚田農場のEC事業は、同社のプラットフォームを活用した例である。かねてより内食を主戦場としてきたオイシックスからすると、外食産業は言わば“競合他社”のような存在だが、消費者の食体験向上という観点では、同胞であるとも言える。オンラインとオフライン、外食と中食・内食の垣根をなくす両社の取り組みは、食市場におけるOMOのモデルケースと呼べるのではないだろうか。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)というトレンドワードがある。「企業がテクノロジーを活用し、顧客・社会に対する価値提供の方法を変革させること」を意味する言葉だ。日本では2018年、経済産業省がガイドラインを策定したことで広く知られるようになった。同様の概念を指し、「デジタルシフト」が使われるケースもある。
コロナ流行下の日本において加速する飲食店のデジタル化を、“飲食店のDX”と捉えられはしないだろうか。
以前の日本では、こうしたデジタル化推進の風潮が、店舗の実益ありきで語られやすかった。しかしながら現在では、顧客の衛生意識に応えるため、実店舗の利用をためらう顧客にサービスを届けるため、といったユーザー目線の文脈で語られるケースが多い。これは、DXの定義である「顧客・社会に対する価値提供の方法を変革させること」と同義だ。
本来、実店舗における食の体験は、デジタルによる代替ができないと考えられてきた。作りたての料理の味、スタッフによる質の高い接客、特別な雰囲気とロケーションなどに価値が見出されてきたためだ。しかし、ユーザーの体験という視点に立ったとき、アナログと同等、もしくはそれを超える価値がデジタルに提供できるのならば、デジタルはアナログを補完し得るのではないだろうか。アフターコロナの時代には、より顧客の体験に踏み込んだアプローチが必要となっていくに違いない。
デジタル化は、顧客体験向上のためのひとつの手段だ。どのような方法で苦難の時代を生き残っていくのか。各経営者にはさまざまな選択肢が与えられている。
文=結木千尋
編集=Showcase Gig
「DIG-IN」を運営する、私たち株式会社ShowcaseGigは、国内のモバイルオーダー&ペイサービスの第一人者として、店内向けモバイル・テーブルオーダー®サービス「O:der Table(オーダーテーブル)」と、テイクアウト事前注文サービス「O:der ToGo(オーダートゥーゴー)」をご提供しています。
詳しい機能や価格など、まずはお気軽にご相談ください。
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