増える「省人化」飲食店。深刻な人手不足を背景に

飲食業界最大の課題となっている深刻な人手不足。求人をかけても応募が来ず、時給を相場以上に上げざるをなかったり、営業の一時停止に追いやられたりする飲食店も増加している。本来注力したいサービスに手が回らず、店舗運営に忙殺されている飲食店も多い。これらの問題を解決するため、従来の人手ををシステムに置き換えて運営する「省人化」店舗が増加している。

上がるFLコスト、大手でも値上げ

食料の材料費と人件費が大部分を占める飲食店は、FLコストにかかる割合が大きい。FLコストとは、F=food(材料費)と、L=Labor(人件費)を足した総額コストのことをいい、このFLコストを売上高で割ったものをFL比率という。

一般的に飲食店のFL比率は、50-60%程度が適正値とされており、それを超えると利益減となる。この比率は、飲食店を経営する上での重要な目安だ。近年における賃金と食材原価の高騰で、このFLコストが著しく上昇、飲食店の経営は追い詰められている。それに伴い、メニューの値上げを決定する店も増えてきている。

飲食店の原価率と人件費率はどれくらいが妥当?コストを下げて利益率を上げる方法とは

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社は、今年2月、約8年ぶりとなる商品改良なしでの値上げを発表し話題となった。商品の原材料となるコーヒー豆の原価と人件費、物流費の高騰が値上げの理由であるとし、「ドリップコーヒー」などの主力商品を対象に10〜20円ほど値上げした。

また、長崎ちゃんぽんの店として有名な大手飲食チェーンの株式会社リンガーハットも、昨年8月、13品目を対象におよそ3.3%の値上げを実施。値上げ後の売上に影響はなく、前年同期比3.6%の売上増となっている。しかし、肝心の営業利益は前年同期比21.4%減と大幅に落ち込んだ。この原因には、人件費、物流費、光熱費の高騰があり、その中でも、特に人件費はコスト圧迫として大きな割合を占めているという。同社はこの問題を解決するべく、配膳が不要なフードコートでの出店を強化したり、「呼出しベル連動セルフ注文機」を導入するなどし、店舗省人化を図っている。

増える「省人化モデル」

人手不足による課題を解消する方法として、人間でなくても作業可能な業務をテクノロジーに置き換えることによって、店舗を効率化し、なるべく少人数での店舗運営を目指す流れは業界内で増えてきている。これまでも予約管理や会計管理などのバックオフィス周りデジタル化することで、働き方を変え生産性を上げるなどの動きはもちろんあった。しかし、昨今の潮流としてスタッフの業務自体を「セルフ化」するモデルが増えつつあり、抜本的に人を減らそうという流れが強くなっている。

このような省人化モデルをいち早く取り入れたのが、株式会社すかいらーくホールディングスである。同社は、セルフレジの導入をファミリーレストラン業界で初めて導入し話題となった。ランチタイムの会計による混雑を解消し、顧客の待ち時間も短縮するという目的の下、都内にある「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」の3店舗で試験的な導入を開始。結果、顧客の約10%がセルフレジを活用したことで、その需要を認め、セルフレジの設置店舗を徐々に増やしている。

「バーミヤン」のセルフレジ。(編集部撮影)

注目されるモバイルオーダー

セルフレジの導入は、その後の維持費も含め設置コストが高い。それ相応の売上が確保できる店舗でないと営業利益は見込めないのが難点でもある。そのような状況の中、昨今スマホアプリなどで注文〜支払いまでを行えるモバイルオーダー注目され始めた。スターバックス、マクドナルド、すき家、デニーズなど大手チェーンが次々に導入を発表。モバイルオーダーであれば、店内に会計のための機械を設置することも、その導入や維持のために莫大なコストをかけることもなく、顧客が持っているスマホ1つで注文や支払いが可能で、省人化と顧客の利便性向上を同時に叶えることができる

例えば、スマホだけで注文〜会計までの一連の流れを完了できる「SelfU(セルフ)」というサービスでは顧客の使い慣れたスマホを使用し、店内の席からモバイルオーダーが可能。追加注文やその後の決済もスタッフを待つことなく、顧客のタイミングですることができる。日本語、英語、中国語の3ヵ国語に対応しているため、今後ますます増える訪日外国人客への対策も可能だ。このようなモバイルオーダーは店側にとってもメリットが大きく、専用端末にまつわるコストや業務、注文や会計時の接客対応、メニューの複数言語化、などといった業務が大幅に削減することができ、最適な人員配置による店舗運営が可能となる。

また省人化することにより、「本当の意味で人手が必要なサービス」や「こだわりのある良質な食材費を提供する」といった箇所に充足できる。この部分のコストに比重をおくことで、顧客満足度の向上にも繋がっていく。

「SelfU」を導入した焼き肉じょんじょんの例 

店舗内の必要なところを省人化することは、飲食店にとって最も重要な「サービス」部分を充実させることに繋がる。

例えば東京都に3店舗展開するセルフ焼肉店「焼き肉じょんじょん」では、注文をスマホやタブレット端末からのモバイルオーダーにし、店内の配膳等もセルフ化することで、接客に要する人件費を削減、その費用をメインの食材である肉のクオリティに反映させた。こだわり抜いて選んだ高級店並の肉を提供しつつも、リーズナブルな価格を実現している同店は、2016年のオープン時から話題を呼び、人気店として成長している。時代の流れと省人化モデルをうまく活用した好事例といえる。

省人化で変わる飲食店

労働人口減少していくこの国では、飲食店は省人化して行かざるを得ないのは間違いない。ただ同じ飲食店といっても、取り扱う食品や店の規模、顧客のターゲット層によって特色は異なる。テクノロジーを活用した省人化を目指すのであれば、自身の店の特色をじっくりと吟味し、どこにこだわり・どこを削るか、といったバランスをしっかりと見極めた上で施策することが重要だといえそうだ。

 

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文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig