2021.08.18

インタビュー

飲食店向け

俺の株式会社に学ぶ、飲食店がコロナを乗り越える方法と5年後の姿

コロナの到来により転換期を迎えた飲食業界で、実店舗の外にあるビジネス――「オフ・プレミス」が注目を集めている。テイクアウトやデリバリー、ECといった業態で成功を掴むために、飲食店には何が求められるのか。 本特集では2回にわたり、「5年後にあるべき飲食店の姿とは?」をテーマとしたセッションの模様をお届け。後編となる今回は、内容を編集し俺の株式会社 専務執行役員の山田 真輔氏のトーク内容をピックアップする。

※この記事は、2021年6月30日に行なわれた外食・飲食業界専門展示会「焼肉ビジネスフェア」「居酒屋JAPAN」内で実施された特別セミナーの内容を元に構成しております。同セミナーには、俺の株式会社 専務執行役員の山田 真輔氏、株式会社バルニバービウィルワークス 取締役の山口 翼氏をスピーカーとしてお招きし、モデレータはShowcase Gig代表の新田 剛史がつとめました。

登壇者プロフィール
山田 真輔(俺の株式会社 専務執行役員)

「シノワ銀座」などでソムリエとして修業後、ワインインポーター直営のレストランにて統括マネージャーを歴任。2013年俺の株式会社に入社後、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の店長を経験し、現在は専務執行役員として全店舗の業務推進を担当。

【俺の株式会社について】
2011年開業の「俺のイタリアン」からはじまった俺の株式会社。
「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」「俺のBakery」等、銀座を中心に32店舗の飲食店を展開。有名店で活躍した料理人が腕をふるいながらも、圧倒的なコストパフォーマンスをコンセプトに掲げている。2020年4月より初のオンライン販売「俺のEC」もスタート。

EC・デリバリーという新領域に挑戦、その裏側とは

——緊急事態宣言から今まで、具体的に取り組まれてきたことを教えてください。

コロナ前は、2020年のオリンピックに向けて出店拡大する計画でした。まずは銀座エリア中心に構える店で我々のブランドを体験してもらった上で、その後国外含め各所へ予定していた新店舗にも足を運んでいただこうと。

しかし、コロナの状況を踏まえ戦略を再考しました。不安定な状況下ではアグレッシブな売上予測も立てられません。まずはしっかりした足元をつくる必要があると判断し、新規出店は一旦控える代わりにEC・デリバリーをスタートさせたんです。

「俺のEC」トップページ

デリバリーは、直近だと全店で月間およそ5,000万円の売上を上げることができています。
Uber Eatsや出前館などいくつかのプラットフォームと併せ、自社サイトも立ち上げて従業員が配達するサービスも行なっています。

私自身も配達員として参加したり、従業員の話を聞いていく中で、お客様のニーズは見えてきていて。デリバリーという価格に多少プラスアルファがつくサービスであっても、やはり美味しいものをお家で楽しみたい・コロナから家族を守りたいという気持ちを持たれる方が非常に多いと感じました。

昨年5月から開始したECは、今では月平均3,000万円の売上までに成長しています。最初はパンから着手し、12月には俺のフレンチ・俺のイタリアンの冷凍食品も取り扱うようにしたところ、非常に多くの方にご好評いただけたんです。

わずか2週間で累計1万個を突破した行列グルメ「俺の罪悪パン」は、2021年6月からECでも購入が可能に

——Uber Eatsや出前館などのプラットフォームを活用する飲食店も増えました。一方で手数料の高さも課題になっており、自社での取り組みも重要視されています。

はい。既存のプラットフォームはどうしても30〜40%の手数料がかかってしまいますが、そこは仕方ない部分もあると思います。我々がデリバリーを自社で取り組もうと思った理由は手数料に関することだけでなく、お客様に届けるまで最高品質でいたいという想いがあったからなんです。

それを決定づけるきっかけは、某プラットフォームで配達員の手配がスムーズにいかなかったことでお待ちいただいていたお客様側の注文が自動キャンセルされてしまい、店舗側で用意したお料理もロスになってしまったこと。お客様もお店も誰も得しない事象が度々起こっていたんです。

この状況を打開しようと「俺の」スタッフが責任をもって配達まで行なう自社配達式の取り組みを始めました。

中国では2018年頃にデリバリーサービスの乱立期が起こった後、現在は2社程度に落ち着いている。今の日本は3年前の中国状態と言え、同じくこの先数年かけてサービス数は絞られていくことが予想される。

中国に見るコロナ収束の状況はこちら
中国の飲食店はコロナからどう復活している?デジタルを活用した最新事例から考える

オフ・プレミスのみにとどまらない、「俺の」の店内施策

——ここまでお話しいただいたオフ・プレミス(イートイン以外の業態)の施策だけでなく既存の「俺の」ブランド実店舗で取り組んだことについてお聞かせいただけますか。

限られた運用体制でも安定したおもてなしをご提供できるよう、オペレーションの改善を目的としてモバイルオーダーの活用をはじめました。

実は3年前、某社のモバイルオーダーを導入したものの、ネットワークや裏側の処理の問題が解決されず、2ヶ月ほどでレガシーPOSに戻したことがありました。その後2020年になり先述したデリバリーやテイクアウトを取り組みはじめたところ、店内飲食の対応が手一杯になってしまって。それが再検討をはじめるきっかけになりました。

店内がそこまで混んでいるわけではなくとも販売チャネルが増えたことで対応に追われ、パンク状態に。それでも限られたスタッフで運用していかなくてはなりません。このままではお客様の満足度も下がってしまう上、スタッフの働く喜びも薄れてしまう。運用方法の改善が必要と考えたとき、どちらも解決できるのがモバイルオーダーだと判断しました。

まずは「俺の焼肉銀座9丁目」から導入をスタートし、今はほぼ全ての店舗で活用しています。

「俺の」グループで使われるモバイルオーダーはすべてShowcase Gig社の「O:der Table」が採用されている

モバイルオーダーを導入した理由はもうひとつ、それは他店舗との差別化です。

商品での差別化って、なかなか難しいと社内でも議題に挙がっていて。もちろんこだわりをもって味を作っていますが、料理そのものは元々世に存在する中でオリジナリティを付け加えながら提供していくもの。どうしても似た商品はできてしまいます。

ではどう差別化していくかと考えた時、やはり「サービス」に行き着きます。

例えば「ハイボールください」という注文を受け付けること自体は、必ずしも人間が対応しなくても成立します。モバイルオーダーであれば人的ミスも防げますよね。

顧客満足度の向上につながるポイントは、人でなければならない箇所にあります。

おすすめの料理やドリンクの説明をしたり、お客様のちょっとした所作に気付いて先回りしたり。そういったホスピタリティあるサービスの提供に注力することで、他店との差別化を図ろうと考えました。

今回採用したモバイルオーダーサービス「O:der Table」を導入した後は、想定していた通り、お店の売りや、食事と合わせる飲み物を提案するという人だからできる仕事、人だから意味のあるサービスに時間をかけるよう取り組みを強化しています。

俺のグループでのモバイルオーダー活用について、詳しくはこちら
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「俺の」が見据える5年後にあるべき飲食店の姿

——ここまでは「現在」の時間軸にフォーカスを当てて、リアルな飲食現場の対応をお聞かせいただきました。ではこの先5年というスパンで考えたとき、目指したい方向性やお考えはありますか。

海外の方を受け入れられるかが重要だと思っています。コロナ前は外国人スタッフも多数いて、インバウンド対応もできていましたが、コロナを経て環境も大きく変わりました。その変化に対応するためにも、デジタルの活用というのは必要になってくるかなと。

その意味でも弊社が導入するモバイルオーダーサービス「O:der Table」は多言語に対応したメニューの表示ができるので、今後海外のお客様が戻ってこられた際にもしっかり受け入れることができると考えています。

海外に行った際、日本語メニューがあったりスムーズなコミュニケーションが取れるとうれしいものですよね。「俺の」もこれからのお店の形としてそうしていきたいなと思います。

くわえて、飲食業を憧れる職業にしたいなと思っています。

飲食業界で働きたいと手を挙げてもらうためには、どう生産性を上げて労働環境をよくするか、いかに付加価値をあげるかが課題です。モバイルオーダーも然りですが、デジタルの活用はそこを解決させる鍵だと考えています。

——デジタルとアナログの融合の先にある「サービスの向上」にこそ、価値があると。

接客業としての飲食業界スタッフがよりレベルの高いホスピタリティあふれるサービスの次元にいけるような、そういった世界を実現していきたいです。

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