2021.12.27

新型コロナ対策

飲食店向け

復調の観光産業に新たな課題。ホテル・旅館業界はDXで人手不足の解消へ

コロナ不況を乗り越えつつある観光産業が、新たな課題に直面している。同産業はどのようにして人手不足を解消するのか。一つの答えがDXにある。ホテル・旅館業界で進むデジタル活用から、観光産業の生存戦略を考える。

観光産業を襲ったコロナ禍。前年の半数以下となった国内旅行者数

2020年初めより続く日本のコロナ禍。国内では、今年8月下旬ごろを境に新規陽性者数が減少したが、オミクロン株の影響を含め、まだ油断のできない状況が続いている。経済の分野においては、消費者の間で広がる感染への懸念から、さまざまな産業が客離れに苦しみ、業務の縮小や休業、倒産に追い込まれてきた。「人流が活発であること」を前提に成り立ってきた観光業もそのうちのひとつだ。

国土交通省が発表した「令和3年版 観光白書」によると、2020年の国内旅行者数は、訪日外国人が87.1%減の412万人、日本人が54.5%減の2億9,341万人だった(※)。ともなって消費額も減少しており、外国人旅行者の訪日旅行では、85.4%減の0.7兆円、日本人旅行者の国内旅行では、55.6%減の10.3兆円だったことが明らかとなっている(※)。これらはすべて、Go To トラベルなどによって消費が下支えされていたなかでの数字である。このような世相を背景に、beforeコロナをベースとしたビジネスモデルが通用するはずもなく、少なくない数の観光業があおりを受けた。2021年1~-8月の8か月間に136件の旅行会社が倒産・廃業していたという帝国データバンクの調査もある。飲食や小売だけでなく、観光業にとっても、コロナ禍は正念場だったというわけだ。(※数字はすべて前年比)

出展:観光白書(国土交通省)

復調の気配を見せる観光産業。目下の課題は労働力の確保に

それでも、直近のピークアウトを経て、ようやく観光産業にも客足が戻ってきた。10月1日には、国内19都道府県を対象に発出されていた緊急事態宣言がすべて解除となり、県境を越える移動に制約がなくなると、徐々に個人旅行・修学旅行の予約が回復傾向に。三重県・鳥羽市にある鳥羽シーサイドホテルでは、9月に10%ほどだった客室の稼働率が、10月には50%まで持ち直したという。

こうした世の流れを受け、各観光業は需要喚起策に力を入れる。ANAグループとJALグループが展開した、ワクチン接種完了者向けの無料航空券プレゼント・特典付き旅行商品の販売キャンペーンはその一例だ。このほか、国内のほぼすべての都道府県が県民割・隣県割などの居住者向けの観光支援事業を調整・実施している。今後、ワクチンパスポートの発行が進めば、さらなる喚起策の広がり、旅行客の増加も見込めるだろう。

そのような中で観光産業が直面するのが人手不足の問題だ。同産業は先の見えない不況下で経営を維持すべく、積極的に人件費のカットを進めてきた。希望退職者の募集、アルバイトの削減によって、当座の営業は最小限のダメージでやり過ごせたが、復調の気配を見せるいま、人材の確保が必須課題となりつつある現状だ。

見込まれる需要増。ホテル・旅館業界で進む、デジタルを活用した業務効率化

しかしながら、観光産業も人手不足の状況を指をくわえて見ているわけではない。接客を伴う一部の業種では、デジタルツールを活用し、業務を効率化する動きが見え始めている。

国内の主要都市に14のホテルを展開する株式会社ホテル京阪(以下、ホテル京阪)は2021年7月、「ホテル京阪 京橋グランデ」内のレストラン「Lorraine(ロレーヌ)」に、飲食店向けモバイルオーダーサービスの「O:der Table(オーダーテーブル)」を導入した。

関連記事

「ホテル京阪」が進めるモバイルオーダー。新たなホテルのスタンダードを提案

同サービスは、店舗の各テーブルに設置されたQRコードを読み取ることで、顧客のスマートフォンを注文・決済用の端末として活用するもの。顧客は、スタッフとの接触を最小限に飲食店を利用できる。コロナ禍においては、注文機会の増加(顧客の好きなタイミングで注文が可能)や、コストの削減(注文ミスによるタイムロス・食品ロスの減少)といった店舗側のメリットに注目が集まっていたが、回復期を迎えている現在では、ホールスタッフの業務負荷の軽減、サービスの向上にスポットが当たりつつある。

Lorraineでは、ランチ・ディナーで実施されているビュッフェにO:der Tableを活用。安心・安全で効率化されたサービスの提供を目指した。店長を務める澤井氏は、「既存のオペレーションが減った分、少ない人員で店舗を運営できるようになった」と話す。調理や提供にかかる時間も短縮したことで、売上や顧客の利用満足度にも好影響があったようだ。

また、ホテル京阪は2021年10月、「ホテル京阪 京都グランデ」内の地中海料理&ワイン・ビアバル「Octavar(オクターヴァ)」に、テイクアウト・向けモバイルオーダーサービス「O:der ToGo(オーダートゥーゴー)」も導入している。京都駅前という立地を生かし、観光帰りや仕事帰りの消費者に対し、事前注文による待ち時間なしの中食サービスの提供をスタートさせた形だ。

これまで外食としての利用が一般的だったホテル・旅館併設の飲食店は、コロナ禍を経て、デリバリー・テイクアウトの分野にも販路を見出している。しかし、今後は客数の回復から、外食モデルでの営業との両立が難しくなるだろう。継続のためには、限られたスタッフ数でも健全に運営できるだけの業務の効率化が求められることになる。紹介したレストラン・Lorraineは、O:der Tableと並行して配膳/運搬用ロボットの活用もスタートさせている。

人手不足の解消なくして、観光産業の完全復調はなし得ない

かねてよりアナログの接客によるホスピタリティを重視してきたホテル・旅館業界は、言い換えればデジタルの活用が遅れてきた業界であるとも言える。今後、他の産業と同様にDXを進めていくことで、経営の最適化も可能となるだろう。同業界にとって、安心・安全への取り組みと業務効率化を両立させるデジタルサービスは、withコロナ・afterコロナ時代の運営に欠かせないものとなっていくのではないだろうか。ようやく見えてきたトンネルの出口に横たわっていた人手不足の問題。解決の糸口は、デジタル活用にこそ眠っているのかもしれない。

関連記事

新時代の「ホテルDX」。モバイルオーダーとおもてなしの共存は、“体験型産業”復調の糸口となるか

 

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

次世代店舗開発のご相談、承ります。

「DIG-IN」を運営する株式会社Showcase Gigは、飲食店/小売業態向けにモバイルオーダープラットフォーム「O:der Platform」を軸とした次世代店舗のご提案を行っています。

・モバイルオーダーを導入して業務改善を図りたい
・デジタルを活用した次世代店舗をはじめたい
・新しい消費体験の創出をかなえる業態開発に取り組みたい
・多店舗展開に耐えうる開発体制があるプラットフォームを探している
・全社的なDXを推進するにあたりSaaSを検討している

など、まずはお気軽にご相談ください。

omo_bunner

関連記事

TOPへ戻る