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スターバックスといえば、自宅や職場以外でゆっくりと過ごせる”サードプレイス”を提供する店として絶対的な地位を築いており、この価値を提供することで世界中で人気となったコーヒーショップだ。しかし、今年11月に登場したNY店は、これまでの価値感とは全く異なるスマホで注文した商品の「ピックアップ」に特化した店舗となっていた。このスターバックスらしからぬ、新しい店舗形態が話題になっている。このモデルは、2018年1月の1号店からわずか1年で2,000店舗をオープンした、中国の有名なユニコーン企業、Luckin Coffeeと同様のスタイルである。なぜスターバックスは、このタイミングでピックアップに特化したモバイルオーダー専門店をオープンしたのか、その背景を紐解いてみようと思う。
2019年11月1日、スターバックスは同社の公式サイトで、米国NY市のペンプラザに初のモバイルオーダー&ペイ専門店をオープンした、と発表した。この店舗は、外出先の途中でコーヒーを購入する顧客をターゲット層として設計しており、ピックアップ・オンリーの店である。店内は、従来のようなリラックス感あふれる空間とは異なり、ピックアップ専用のカウンターとわずか数脚の椅子のみが設置され、ドーナッツなどが並べられたショーケースや豆やグッズの販売もないシンプルな空間に仕上がっている。
この店舗では、Starbucks Mobile Order&Pay(スターバックス専用のモバイルアプリ)からの注文のみを受け付けており、顧客自身が好みのドリンクをアプリでカスタマイズできる。アプリから「スターバックスピックアップ-ペンプラザ」を選択し、注文から決済までの一連の流れをアプリで完了、店舗ではバリスタから、商品を直接受け取るという仕組みになっている。
また、デジタルサイネージが店内に設置されており、注文した商品が完成するまでの進行状況が確認できる。ユニークなことに、営業時間もターゲット層に特化しており、月曜日から金曜日の午前6時から午後8時となっている。
米国のリサーチ会社eMarketerによると、米スターバックスは、このモバイルオーダー&ペイのサービスを2011年から開始し、それ以降Apple Pay、Google Pay、Samsung Payといった他のモバイル決済を超えるユーザー数を誇っている。2018年時点における14歳以上のユーザー数は、2,340万人というデータも公表されており、顧客は少なくとも半年に一度はStarbucksアプリを経由して購入をしているという。このデータからもスターバックスのモバイルオーダー&ペイの利用率の高さがうかがえる。
また、米国のリサーチ会社PYMNTSは、スターバックスの報酬プログラムである「スターバックス・リワード」のメンバーシップ率が伸びていると報告しており、 第4四半期の終わり時点で米国のアクティブユーザー数は1,760万人、前年と比べ15%増加している。同社は、デジタル顧客との関係を向上させるための施策を常に追求し、顧客ニーズに最適なサービスを提供してきた。このことがロイヤルカスタマーの獲得にしっかりと結びついている。
このように、多くの米国人にとってアプリでコーヒーを注文し、”Star”を貯めるのが日常的な行為になっているといえるだろう。
スターバックスでは、「通常スターバックス」でない形態の店舗も実はいくつかある。ブランドの価値向上を目指すスターバックス・リザーブ・ロスタリーといった体験型店舗や、で中国で先日オープンしたピックアップ専門店のStarbucks NOWなど、顧客ニーズにあわせた店舗体験を進化させているのだ。
今回、NYにオープンしたピックアップ専門店は、人と交通量の多い大都市でより近代的な顧客体験と忙しいビジネスマンが気軽に立ち寄れる場所として、ターゲットに合わせた利便性と効率性を重要視して作られた。
同社は、今年初めの年次株主総会において「顧客の行動の進化に伴い、店舗も進化させていく。デジタル注文体験、商品、多様な店舗ポートフォリオを通じて、顧客のニーズを反映した体験を提供することの重要性を我々は認識している」と、今後のビジョンを発表しており、その考えは今回のNY店にもしっかりと反映されている。
顧客のニーズを第一に考え、お客様の求めるものを実現してきたスターバックス。長年信じ築き上げてきた「サードプレイス」の概念を自ら打ち破り、モバイルオーダー専門店という新たな場所を生み出した。小売業界のトレンドと顧客のニーズをうまく掛け合せた今回の店舗の登場では、顧客ファーストに基づいた、同社の柔軟な経営戦略も垣間見えたように思う。現時点では、まだ実験的な店舗だと考えられるが、今後世界中で店舗数を広げていく可能性は充分にありえるだろう。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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