
コロナから1年。データから考える、飲食店がGWを突破するアイディア
2021.04.05
新型コロナ対策
飲食店向け
2021.04.01
飲食店向け
コロナ禍の外食産業において注目されているのが、テイクアウト・デリバリー利用率の上昇である。今後もウィズコロナの状態が続けば、外食の機会減少と相反してテイクアウト・デリバリーの需要は増え続け、市場はさらに拡大していく見通しだ。このような状況に鑑みて、外食産業上位9社の決算資料から読み解いた、各社のテイクアウト・デリバリー戦略を前後編にてまとめている。
前編で紹介した、ゼンショー、すかいらーく、マクドナルド、コロワイドに続き、後編では、吉野家、スシロー、サイゼリア、トリドール、ロイヤルホールディングスについてお届けする。
※イメージ(iStock)
牛丼店の「吉野家」、うどん店の「はなまる」、持ち帰り寿司店の「京樽」などを展開する株式会社吉野家ホールディングスは、2021年2月期売上高前年同期比76.6%と、コロナ禍による影響の大きさを感じさせる結果となっている。
しかしながら、同社はテイクアウト対応店舗数の増加やメニューの充実といった、テイクアウト需要への対応強化を行なっており、その戦略が奏功してもいる。2020年3月以降のテイクアウト販売数構成比は「吉野家」が120%、「京樽」は140%、「はなまる」では200%と、順調な増加をみせている。
グループにおけるデリバリー対応店舗も、2020年8月末時点で907店舗と全体の約半数になっており、デリバリーの売上高は前期末比で265%を記録した。
同社では、事前モバイルオーダー機能の充実とテイクアウト専用窓口設置によってテイクアウト渋滞の解消を目指すなど、テクノロジーを活用した非接触によるテイクアウトの利便性向上に特に力を注いでいる。
また、デリバリー専門店の開発を行うことも明言しており、既存ブランドに加えて将来的にはデリバリー専門ブランドを立ち上げることを想定している。
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回転寿司「スシロー」を展開する株式会社スシローグローバルホールディングスは、2020年9月期前年の実績で、過去最高売上である同期比102.9%を記録した。
店内飲食については、営業時間短縮要請などの影響を受けたことから昨年対比94.9%という結果ではあったが、ニーズが拡大したテイクアウト需要への対応が増収を支えた形だ。
同社も吉野家HDと同じく、テクノロジーを駆使したテイクアウトサービス提供に注力しており、従業員と接触することなく商品を受け取れる「自動土産ロッカー」というスマートロッカーを5%強の店舗へと導入。今後もその数を増やしていく方針だ。さらにJR芦屋駅改札横にテイクアウト専門店を実験的に開店、通常店舗から遠い消費者への新たな接点づくりも行なっている。
また、デリバリーにおいても、外部デリバリーサービスとの取り組み拡大だけでなく、自社デリバリーの実証実験を開始しており、デリバリー対応店舗は2020年9月時点で199店舗まで拡大した。
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2021年1月に発令された緊急事態宣言の際に、堀埜一成社長の放った「ふざけんなよ」という発言が注目された株式会社サイゼリヤは、売上高前年対比81%、客数76.3%と厳しい数字となった。
しかしながら、実店舗と変わらない低価格を実現したテイクアウトサービス「おうちdeサイゼ」は好評を博しており、それが客単価前年対比101.7%という、唯一前年を上回った数字に繋がっていると考えられる。
同社は堀埜社長の方針により、デリバリーへの参入に対しては後ろ向きだったが、大幅に方針を転換し、2020年7月から出前館やウーバーイーツなど外部サービスとの提携によってデリバリーを開始した。ただし、対応店舗は現状首都圏の17店舗に限られている状況だ。
今後もテイクアウト、デリバリーの実験は継続するとしているが、具体的な方針は発表されていない。
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うどん店の「丸亀製麺」ほか、多くの専門店を展開している株式会社トリドールホールディングスは、2021年3月期第2四半期の実績が売上前年同期比79.3%となった。
コロナ禍の影響が大きかった第1四半期は赤字だったが、2020年6月以降から黒字へと転換し、第2四半期のみでは黒字化を達成している。同社の第2四半期の数字を支えたのは、テイクアウトサービスへの取り組みによるところが大きいと考えられる。
「丸亀製麺」では2020年4月末に300店舗でうどんテイクアウトを開始し、5月末には対応店を全店に拡大した。その結果、テイクアウト売上高は堅調に推移、6月以降にはコロナ禍の影響が出始める2020年3月と同水準以上の売上を維持することとなった。
「丸亀製麺」は、2021年2月よりモバイルオーダーを全国で導入開始、さらにはテイクアウト専用容器の開発を行なうなど、テイクアウト需要に対するサービスをさらに強化する方針だ。
ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や天丼専門店「てんや」などを展開するロイヤルホールディングス株式会社は、2020年12月期第3四半期実績が前年同期比58%と実に厳しい数字となった。
そのような状況の中で、同社では2021年の基本戦略として、「ロイヤルホスト」「てんや」でのテイクアウト・デリバリー拡充を宣言している。具体的には、2021年6月にデリバリーのテスト販売を「ロイヤルホスト」5店舗で開始、9月末までには162店舗へ拡大すると公表している。
また、企業や医療関係施設内で飲食店を展開するコントラクト事業においても、店舗の営業時間外を活用して「ロイヤルホスト」や「てんや」のメニューをテイクアウト・デリバリーで提供する「ロイヤル ミライダイニング」と称した取り組みを2020年8月から開始している。さらに中食需要の拡大により、家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」の販売を強化している。
今回紹介した9社に共通しているのは、店内飲食の売上が落ち込む中で、テイクアウト・デリバリーが大きく伸びていることだ。
「DX化によって顧客の利便性を高めることに注力する」「外部デリバリーサービスと提携して応急的に対応する」「テイクアウト専門ブランドを立ち上げる」など、施策の方向性はそれぞれであるが、各社ともこのニーズの変化に注目し、テイクアウト・デリバリー強化の方針を打ち出している。
施策の具体性や実現スピードに差はあれど、各社の決算資料から読み取る限り、今後もテイクアウト・デリバリー需要は拡大する見通しだ。消費者が何を望んでいるか?をしっかりとキャッチし、素早い対応をすることは業績回復の必須条件になるだろう。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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