2020.09.11

飲食店向け

テイクアウトで法令違反?多様化する飲食店のビジネスモデルの背後に潜むリスク

新型コロナウイルス流行下で、外食以外のサービスに活路を見出す飲食店が増えている。しかし、そうしたトレンドのなかで、無自覚に法に抵触する店舗が後を絶たない。販路開拓にあたり、飲食店が留意すべきポイントを掘り下げる。

“外食のみ”から脱却する飲食店。広がりを見せる販路と、多様化に潜む落とし穴

新型コロナウイルス感染拡大の影響に苦しむ飲食業界で、“外食のみ”に依存する店舗運営からの脱却を目指す動きが加速している。もちろんその中心には、テイクアウトやデリバリーといった中食サービスがあるが、注目を集める分野はそれだけにとどまらない。店頭やECを活用した調理済みグルメ商材・ミールキットの販売から、露店やキッチンカーによる屋外でのサービス提供まで、個々の飲食店がさまざまな販路を模索している状況だ。一部にはこうした新しい取り組みが功を奏し、窮地を脱する店舗も現れ始めている。コロナとの共生が求められる社会においては、外食のみにこだわらない柔軟な姿勢が生き残りの条件となりつつある。

その一方で、急場しのぎの対応に警鐘を鳴らす声も上がっている。飲食店が外食以外の分野に手を広げる際、提供する方法や場所、扱う商品の種類・状態に応じ、新たな許可が必要になるというものだ。現状、個々の店舗に対し、保健所の指導が入った例はほとんど聞かれないが、今後、事態が収束するにつれ、取り締まりが強化されていくと推測される。安易な販路の多様化によって、知らず知らずのうちにルール違反を犯す店舗が増えている実態がある。

一般に、営業許可を持つ飲食店が弁当・惣菜類をテイクアウト・デリバリーする場合、新たに許可を得る必要はない。しかし、それらを包装し、日持ちさせることを前提とした商品として販売するには、食品衛生法・食品表示法に基づく対応が不可欠だ。

惣菜メニューを店頭販売する際にも規定あり(出典:iStock)

たとえば、普段の営業で提供する惣菜メニューを店頭で商品として販売するケースでは、別途そうざい製造業の許可が必要なほか、パッケージに原材料名、添加物、保存方法、消費または賞味期限、栄養成分等を表示しなくてはならない。また、原材料にえび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生の7品目(アレルゲンとして指定されている特定原材料)を含む際には、これらの記載も必須とされている。

不備が明るみに出れば保健所などから是正の指導が入り、応じない場合には罰則が与えられる。無許可営業では、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方が、表示違反では程度に応じ、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(法人は1億円以下)またはその両方が課せられる格好だ。さらに無許可営業においては、営業停止や許可の取り消しにくわえ、2年の欠格期間も設定されている。知識不足によって店舗の存続が困難とならないよう注意しなければならない。

販路開拓を図る飲食店が陥りやすい法令違反。注意すべき3つの事例

ここでは、新たに外食以外のサービスへと乗り出す飲食店が陥りやすい法令違反について、3つのケースにしぼって解説する。

酒類のテイクアウト販売

数ある飲食店のなかでとりわけ感染拡大の影響に苦しんでいるのが、酒類の提供をサービスの軸とする居酒屋業態の店舗だ。団体での利用が多く、客同士の会話が起こりやすい点などから感染リスクの高い場所とみなされ、流行が本格化した3月以降、客足が大きく遠のいている。同業態の店舗もまた、ランチ営業やテイクアウト・デリバリーなどへ乗り出し、復調の糸口を探しているが、一連の取り組みでは酒類の在庫を捌けない。そのような背景もあり、アルコール飲料のテイクアウト販売を始める店舗が増えている現状だ。

酒類の持ち帰りを巡っては今年4月、当座の資金繰りに苦しむ飲食店の経営状況を考慮し、国税庁が暫定的に期限付酒類小売業免許の交付をスタートした。つまり同許可がなければ、テイクアウト販売をおこなえないルールとなっているのだ。また、未開封の酒類を商品として販売するにあたっても、一般酒類小売業免許や通信販売酒類小売業免許が必須となる。今後、販売を考えている飲食店関係者は、法令違反とならないようしっかり確認しておきたい。

国税庁・酒類の免許ページ

パン・ケーキ類のテイクアウト販売

カフェ業態の店舗では、店内で調理するパン・ケーキ類のテイクアウト販売を考えるケースもあるかもしれない。しかし、これにも注意が必要だ。

通常、飲食店は、店内でなら営業許可のみでパン・ケーキ類を提供できるが、テイクアウト商品として扱う際には別途、菓子製造業許可を取得しなければならない。これは、食肉製品や乳製品、アイスクリーム、ソース類などにも共通するルールだ(※)。各種製造業許可には、営業施設の構造や設備に関する厳格な基準が定められている。店舗によっては申請にかかる基準を満たせず、テイクアウト販売そのものを諦めなければならない場合も出てくるだろう。

また、自店舗以外で製造された同種の商品を販売するケースでは、対応する販売業の許可が必要となる場合もある。詳しくは所轄の保健所が出す情報を参照してほしい。

※料理の一部として提供する場合は、各種製造業の許可を要しない。たとえば、ハムを挟んだサンドイッチなどは、営業許可のみでテイクアウト・デリバリーが可能。

冷蔵・冷凍商品の販売

冷蔵・冷凍食品の販売にも注意が必要だ(出典:iStock)

もうひとつ、意外なところで違反の対象となるのが、冷蔵・冷凍商品の販売についてである。食品を冷蔵・冷凍し、商品として販売する場合、食品の冷凍又は冷蔵業の営業許可が必須となる。同許可もまた、製造業許可と同様、厳格な基準のもとに発行されており、専用の構造・設備などがなければ認められない。冷蔵・冷凍商品の販売などを検討している飲食店は、所轄の保健所が示す詳しい要件を確認しておく必要があるだろう。

地力が試される飲食店。“柔軟性”と“法令遵守”が表裏一体のキーワードに

飲食店の新たな選択肢として期待が寄せられる外食以外の販路だが、適切に取り組むためには法令に関する知識が必須となる。ルールを把握せず参入した結果、指導の対象となり、営業停止や許可取り消しといった処分を受けることがないよう留意したい。こうした法令遵守の姿勢は、店舗の信用にも直結する。安心・安全が最優先とされる時代に、顧客の信頼を失っては、飲食店としての存続も危ぶまれるはずだ。

本稿で紹介した製造業許可を巡っては、構造や設備上の不備から申請をおこなえない例も考えうる。そのようなケースにおいては、すでに許可を得ている施設を活用することで問題解決が可能だ。最近では、クラウドキッチンなどの便利なサービスも増えてきている。これらを上手に取り入れ、新たなサービスへの参入を目指してはいかがだろうか。

終息まではまだ時間がかかりそうな新型コロナウイルスの流行。苦難の時代を生きる飲食店には、外食に依存しない柔軟な姿勢とともに、新たな販路への知識、法令遵守の精神も求められていく。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

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