2020.11.24

インタビュー

飲食店向け

【DX対談】多様化する飲食ビジネスの今。「オフ・プレミス」成功の条件とは

コロナ禍で進む飲食業界の再編。ビジネスモデルは多様化し、イートイン以外の業態――「オフ・プレミス」に活路が見出されつつある。質の高い食体験と、安心・安全が同時に求められるいま、成功する飲食ビジネスとはどのようなものなのだろうか。この特集では全3回にわたり、「飲食業界の未来"オフ・プレミス”」をテーマとしたオンラインイベント「OMO meetup vol.2」の模様をお届けする。

第2部では、アイエムエムフードサービス株式会社の河村征治氏、株式会社Globridgeの大塚誠氏・當眞アルトゥロ氏、株式会社ライドオンエクスプレスの渋谷和弘氏をスピーカーとしてお招きし、多様化する飲食ビジネスの成功の条件を伺った。

※この記事は、2020年10月27日におこなわれたShowcase Gig主催のオンラインセミナー『OMO meetup vol.2』の第2部「実店舗を失ったとしても、成立する飲食ビジネスとは?」の内容を文章化したものです。

登壇者プロフィール

河村 征治(アイエムエムフードサービス株式会社 代表取締役CEO)
フレンチの料理人からキャリアをスタート。グローバルダイニング副社長として国内・海外の出店を推進。2011年にアイエムエムフードサービス創業。「森山ナポリ」や「Lemonade by LEMONICA」等展開中。

大塚 誠(株式会社Globridge 代表取締役社長)
建設資材の会社を経て、ベンチャー・リンクに入社。12年勤めた後、Globridgeを2008年に創業。現在、国内外に約70店舗の飲食店経営、デリバリーからあげ専門店「あげたて」を100店舗展開中。
※リモートにて登壇。会場にはVR事業部 部長 當眞 アルトゥロ氏にお越しいいただいた。

渋谷 和弘(株式会社ライドオンエクスプレス マーケティング本部 デジタルマーケティング部 エグゼクティブマネージャー)
アパレル商社を経て、印刷会社やITベンチャーなどでデジタルサービスの企画立案・構築に従事。2010年ライドオンエクスプレスに入社後、デジタルサービス全般の企画設計やプロモーション、広告業務等幅広い分野を担当。

新田 剛史(株式会社Showcase Gig 代表取締役)
東京ガールズコレクションのプロデューサーを経てミクシィ入社。新規事業の責任者として数々のヒットを生み出す。2012年Showcase Gigを設立。国内初のモバイルオーダーサービス「O:der(オーダー)」を提供する。

多様化する飲食業界のビジネスモデル

新田:いま外食産業では、テイクアウトやデリバリー、ECといった実店舗の外側にある飲食ビジネスに注目が集まっています。コロナの流行により、業界が苦境に立たされる中で、消費者に安心して利用してもらえる領域に活路が見出されているんですね。実は、こうした「オフ・プレミス」は、以前から各事業者が取り組みを続けてきた分野でもあります。第2部では、その先鋒として活躍してきた企業の方々にお話を伺います。それでは、株式会社ライドオンエクスプレスの渋谷さんから順に、事業の紹介をしていただけますか?

渋谷:はい、私たちは、「銀のさら」に代表される自社配送・自社製造のフードデリバリーブランドと、独自の宅配ネットワークを生かした配達代行サービス「fineDine(ファインダイン)」を展開しています。イートインのシェアが大きい日本の飲食市場において、テイクアウト・デリバリーは補足的な業態というイメージが強いですが、アメリカや中国では数年前から、それぞれが飲食ビジネスの軸として確立されつつありました。コロナの流行でようやく日本にも「オフ・プレミス」の波がやってきたのだと感じています。

その影響もあり、今年4~6月の四半期決算では、売上が前年比で30%ほど伸びていました。本来であれば、店舗数を増やして事業規模を大きくしていくのがセオリーなんですが、今年に限って言うと、特別なことをして売上が伸びたわけではありません。市場の拡大や経営努力とは別のところで追い風を感じました。

株式会社ライドオン・エクスプレスのコロナ前と現状の変化

新田:コロナの影響を実際の数字の動きで示していただきましたが、ライドオンエクスプレスさんの増収に関しては、既に注文と配送のインフラが整っていたこともプラスに作用したのではないかと感じました。

続いて、株式会社Globridge代表取締役社長の大塚さんお願いいたします。

大塚:皆さんこんにちは。株式会社Globridgeの大塚です。私たちは飲食店の経営と、インターネットを活用した外食企業の集客支援をおこなっています。

実は弊社はコロナの影響で、既存事業の業績が悪化していまして。全70店舗のうち40を一時閉店としました。それにもかかわらず、コロナの流行以降に立ち上げたITビジネスに目処が立ちつつあり、今期は過去最高益を見込めそうな状況まで経営を持ち直しました。

それは何かというと、バーチャルレストラン事業です。注文ごとに商品の製造指示書を発行し、各地にあるパートナー契約を結んだ飲食店に、指示書に基づいて調理を代行していただくというビジネスモデルですね。各店舗で作られた商品は、Uber Eatsによって注文者の元まで配達されます。受注・調理・配達を分業している点が特徴です。

このバーチャルレストラン事業は今年4月にスタートしたものですが、年内に1,000拠点の展開を計画しています。店舗の外側にあるリソース・インフラを活用したことで、これだけの出店スピードを実現しました。それぞれの得意な役割を生かす形でビジネス化したことが、早期に目処が立ったひとつの要因となっています。

これまでGlobridgeでは、飲食店経営を事業の軸としていましたが、今後は売上の9割をこうした新規事業から得ていく予定です。「オフ・プレミス」のモデルケースとなれるよう、成長させていきたいですね。

新田:Globridgeさんの取り組みは、自社だけでなくパートナーとなる飲食店が復調するきっかけにもなっていくものだと感じています。

では最後に、アイエムエムフードサービス株式会社の河村さん、事業紹介をお願いできますでしょうか。

河村:私たちはレストランの経営をベースに、個別商品のEC販売やスピンアウト店舗などを展開しています。現在、形となっているのは、冷凍ピザをオンラインで販売する「森山ナポリ」と、自然志向のレモネードをドリンクスタンド型の店舗で提供する「LEMONADE by Lemonica(レモネード・バイ・レモニカ)」ですね。

その他では、EC・PRに特化した法人の設立やステーショナリーグッズの製造・販売、アプリ開発にも取り組んでいます。ご説明したレモネード店には、自社開発のモバイルオーダーを導入し、スマートフォンから注文・決済ができる仕組みを構築しました。アプリは今年8月のリリース以降、順調にダウンロード数を増やしていて、現在10万人ほどのユーザーに利用されています。

「LEMONADE by Lemonica(レモネード・バイ・レモニカ)」のモバイルオーダー。ブランドビジネス等も展開。

私にとっての「オフ・プレミス」は、24時間365日、世界中のどこにいても消費者と接点を持てることです。そのために、実店舗はもちろん、オンラインショッピングやモバイルオーダーなどを通じて、さまざまな角度からアプローチを続けています。

データに基づいた戦略で、デリバリーを成功するビジネスに

新田:市場の拡大やコロナの流行を背景に、Uber Eatsなどの配達代行サービスを活用し、デリバリーへと参入する飲食店が増えてきています。市場がレッドオーシャン化しつつある状況の中で「競合に勝つ方法がわからない」という相談をよく受けるのですが、勝つためのメソッドはあるのでしょうか?當眞さんはどのように考えますか?

當眞:そうですね、私たちの展開するバーチャルレストラン事業では、出店エリアの徹底的なリサーチを大切にしてきました。どのような商品にニーズや売上ボリュームがあるのか、競合はどれくらい存在するのか、などですね。デリバリー業態では、店舗から半径2キロ圏内の注文が売上の大部分を占めると言われています。このエリアを徹底的に調査した上で出店を決めれば、失敗する確率は限りなく低くなるのではないでしょうか。私たちの事業ではこのやり方で既に500店舗を出店しています。

新田:なるほど。データに基づいた出店が肝になると。最近だと、大手の外食チェーンが本業とは異なるジャンルの商品に特化したデリバリー店舗を出店するケースも増えているじゃないですか?例えば、ファミリーレストランのチェーンがからあげ専門店をオープンするみたいな。一般的には、本業と同じジャンルで勝負した方が成功確率が高まると考えるのが自然だと思うんですが、當眞さんの経験からすると、出店エリアに合わせて扱う商品を選ぶ方が合理的ということでしょうか?

當眞:はい。消費者のニーズを考えてブランドを構築するのが、私たちのメソッドです。弊社は経営する70の飲食店を、出店エリアに合わせて全68業態で展開していました。イートインとデリバリーでは業態が違いますが、一定の商圏を持つという意味では同じやり方が通用するはずです。

新田:そのメソッドに裏付けられたコロナ禍での大規模展開だったんですね。イートイン店舗一時閉店からのスピーディーな業態転換には驚かされました。4、5月の最も影響が大きかった時期に、まとまった新規出店をしていたじゃないですか?入念なリサーチがその前提にあったわけですね。

當眞:そうですね。Uber Eatsの上陸からずっと続けていた準備が、ようやく実を結びました。

自社配送か、サードパーティーか。デリバリービジネス成功の分岐点

新田:一方で、自社配送を考えるプレイヤーも増えている実感があります。ライドオンエクスプレスさんは、実店舗のサンドイッチ専門店「サブマリン」から事業をスタートし、現在では、宅配寿司の専門店「銀のさら」を全国に740店舗展開。イートインからデリバリーという流れは、いま日本で起こっている状況にも通ずるものですよね。製造から配達までを自社で完結するハードルの高さをよくご存知かと思いますが、成功にはどのような点がポイントになると考えますか?

渋谷:そうですね、ポイントは2つあります。「顧客データをどのように集め、生かしていくのか」「イートインとデリバリーのギャップをどう埋めるか」です。

1つ目のデータの収集と活用についてですが、私たちは創業当時から自社配送をおこなっていたので、顧客データのあるところからデリバリー事業をスタートできたんです。そのため、活用するステップに集中できました。データの収集と、その活用のために必要な人材の確保・マーケティングを同時に進めるのは、なかなか大変ですよ。ここをクリアできることが前提になる気がします。

もう1つ、イートインとデリバリーのギャップをどう埋めるかについてですが、これは自社配送でない場合にも共通する課題のひとつです。たとえイートインで成功している飲食店であっても、デリバリーで提供する商品が美味しくなければ、最悪の場合、実店舗にもマイナスの影響が出る。同じ商品として提供する以上は、業態にかかわらず同じクオリティで届けられなければなりません。もしギャップが埋められないのであれば、扱う商品を区別したり、価格を変更したりと、テコ入れする必要が出てくるのではないでしょうか。

新田:なるほど。自社配送のデリバリーで成功するハードルは高いということですね。2つのポイントを踏まえた上で、自社配送とサードパーティーのどちらでデリバリーに参入するべきだと、渋谷さんは考えますか?

渋谷:中小の外食企業や個人経営の飲食店については、サードパーティーを利用したほうがいいと思います。自社の配送システムを運用するとなると、どうしてもコストが大きくなってしまいますね。会社の規模が大きいのであれば、選択の余地も出てくるでしょう。どちらにしても、事業のヴィジョンを考え、イートイン、テイクアウト、デリバリー、ECといった業態のどこに注力すべきかを見誤らないことが大切です。

食体験の根幹を担う製造のクオリティ

新田:飲食店のオフ・プレミスを考えるにあたっては、利用するプラットフォームの部分がピックアップされがちですが、先ほど渋谷さんのお話にもあったとおり、製造における課題も無視できません。その観点でいくと、アイエムエムフードサービスさんの取り組みは、製造の段階から飲食ビジネスを考えたものだと言えますよね。その仕掛け方の部分で、河村さんが意識していることはありますか?

河村:まず、個別でブランド化できる商品なのかという見極めの部分ですね。私たちの扱う商品はほとんどが自店舗でのヒットを前提にしているので、お客様とのコミュニケーションの中で既にマーケティングが済んでいるんです。けれども、実際に1つだけを切り取ってブランド化するだけの価値があるのかという部分については、都度見極めていかなければなりません。また、仮にブランド化の判断ができたとしても、消費者への届け方については慎重に考える必要があります。常温・冷蔵・冷凍のどれがベストなのか、商品ごとの適性を踏まえ、選択するようにしていますね。

その上で、製造の安定も重要なポイントになると考えます。物販では、1日に作れる量が定まらなければ、収支が組み立てられないんですよね。作れる最大の数を毎日必ず作ることで、商品の質が高まったり、製造効率が上がったりするメリットもある。作る数を変動させないことを、私は決め事にしています。ただ、物販の場合、作った商品がいつもすべて売れるわけではありません。80個作った商品が20個しか売れないこともある。しかし、そこで作る数を20個に減らしてしまうと、先ほどのメリットが得られないばかりか、コストの関係で当初の収支プランも崩れてしまうんです。なので、売れ残りが発生したとしても作る数は変えず、ディスカウントしてでも必ず売り切るようにしています。

新田:プラットフォームと合わせて製造の部分にも注力していかなければ、「オフ・プレミス」での成功は難しそうですね。

河村:消費者の選ぶ理由は味であるはずなので、レシピの開発まで含めた製造のクオリティを無視するわけにはいきませんよね。

蓄積されるデジタルデータをどう活用するか。

新田:ここまで飲食ビジネスの製造から配達までを追ってきましたが、最後に、どう効率よく消費者の元へアプローチするかという課題が残っています。

ライドオンエクスプレスさん、アイエムエムフードサービスさんそれぞれがデジタルデータを蓄積されていると思いますが、それらにどのような活用の可能性を感じいますでしょうか。

渋谷:今後Cookieが使えなくなる未来を想定すると、メールアドレスやLINEアカウントのような、顧客と直接つながれるデータの価値が高まるのではないかと考えています。ただ、先ほども話したとおり、必要な顧客データを欲しいときにすぐに集められるわけではないんですよね。コストをかけて急いで集めたとしても、間に信頼関係がなければ、ブロックされて終わりです。有効活用のためには、収集と同時に顧客との信頼関係を築いていかなければなりません。

店舗デジタル化の時代、こうしたデータはあらゆるサービスと紐付いています。次の時代に顧客との接点を失わないよう、取り組んでいる最中ですね。

河村:私は近い将来、飲食を含めたすべての決済が、アプリやブラウザからおこなわれるようになると想像しています。そうなると、プラットフォーム経由で個別に顧客へとアプローチできるので、これまで以上に顧客との関係性を築きやすくなるはずなんですよね。集まったデジタルデータによって、パーソナライズされた施策を打ったり、よりファンとなってもらえるような工夫を凝らしたり、さまざまな可能性が出てくると思います。

新田:ありがとうございます。今後もこのセッションに参加していただいた方々を中心に、飲食ビジネスの形は大きく変わっていくはずです。どのような取り組みが私たちの食体験を変えていくのか。その動向を見守っていきたいと思います。

文=結木千尋
編集=Showcase Gig

OMO meetup vol.2 レポートはこちら

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