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米国では大手企業のビール消費量が落ち込む一方で、クラフトビール(Craft Beer)の人気が高い。複数種類のクラフトビールを扱うバーやパブも多く、ミレニアルを中心によく飲まれている。昨今にわかに増えつつあるのが、デジタル化されたビアバーである。なぜクラフトビールがデジタル化されているのか。
クラフトビールが増えはじめた2007年〜2016年頃、これまでビール業界を牽引してきたアンハイザー・ブッシュ、ミラークアーズ、ハイネケン、パブスト、ギネスといった大手企業の出荷が14%減少し、消費量が落ち込んだ時期でもあった。一方で、そのほぼ同時期には、ビール醸造所の数が6倍に増え、労働者の数が120%増加している。この奇妙な現象の背景にあるのが、クラフトビールの爆発的な人気だ。
クラフトビールがこれほどまでに人気になった理由として、Brewers Associationのチーフエコノミストであるワトソン氏によれば、「消費者の需要が時代と共に変化し、消費者はより豊かな味わいと多様性を求めるようになった。そして地元企業への支持が高まり、サポートをしたいという傾向が強くなったことで、地元ならではの希少なビールや高価なコーヒーを好むようになり、クラフトビールの人気に繋がった」という。
また、こういったクラフトビールを取り扱う店舗の増加と共に、近年増えつつあるのがデジタル化されたビアバーである。
シカゴにある、「LINKS TAP ROOM」は、ハイテクなビアバーとして人気のクラフトビールの店である。お酒の銘柄が毎日変わるという非常にユニークなシステムで、36種類のデジタルビールタップと3種類のキャスクタップ、さらに5種類のワインタップが揃っている。
撮影:編集部
また、店内には大型のデジタルサイネージが設置されており、顧客は変化するビールやワインの銘柄と樽内の残量をリアルタイムで確認することができる。最新のメニューは同店のWEBサイトとも連携。例えば顧客はサイネージを見ながら、プレミアムな銘柄の樽がもう残り少ないとなれば、早く注文したいという感情も喚起される。注文は卓上のiPadから注文し、クラフトビールに合う自家製のソーセージやフライドポテトといった食べ物も提供している。
樽の在庫と注文がデータ化されると、数あるクラフトビールの銘柄の中でどれがよく飲まれているかデータで瞬時に分かるようになる。さらに、これまで数種類のクラフトを揃える店舗では、黒板などでその日のラインナップを書き込んでいることが多く、種類を変えるたびに何度も書き直さなければならならなかった。それがデジタルサイネージに置き換わることで、瞬時に銘柄の書き換えが可能である。
今年の2月にオープンしたテキサス州「OZ TAP HOUSE」の例も紹介したい。こちらは明るく開放的な雰囲気のファミリー向けのバー&レストランだ。40種類のドラフトビールとワインを楽しめ、店内の壁にずらりと並んだ、ドラフトタップには、地元でしか味わえないビールとワインが揃っている。
まず入店すると、まず飲酒年齢の確認と支払い情報を入力した顧客専用のRFIDカードを作成する。それぞれのドラフトタップの横に設置された端末で、1オーダーにつき1〜16オンスの範囲で好きな量を選ぶ。RFIDカードを挿入することで、ビールを購入でき、顧客自らグラスに注ぐ。
料理の注文は「MemberTab」という専用アプリで行う。テーブルから注文・決済を行い、テーブルまで運ばれる。
ほぼ無人レストランのようにも見えるが、接客するスタッフがしっかり着いているのもポイントだ。テイスティングガイドと呼ばれ、ビールやワインについての案内をしてくれる。デジタルとセルフサービスで大幅に省人化できるスタッフのリソースを接客に配置できるというわけである。
実はこういった店舗の多くは自分たちでシステムをつくっているわけではなく、ビアタップシステムのプラットフォームを提供する企業が牽引している。現在米国で認知されているもので数社、「I POUR IT」「Pour my berr」「LIQUID LIFE」「DRINK COMMAND」などがある。このようなプラットフォームを活用することで、小規模のローカル店舗でもコストを抑えて導入が可能となる。
「I POUR IT」を例に見てみよう。2012年に設立された同社は、セルフサービスの飲料ディスペンサー技術において、北米でもリーダー的な存在であり、セルフサービス・ビアタップシステムの米国全体の63%を占めているという。
混雑時に訪れた顧客をしっかりと確保し、迅速に手軽な方法でビールやワインを提供することは、店舗側にとって重要な課題であり、店の売上げに直結しているだけでなく、顧客体験の向上も左右する。セルフサービスのビアタップを軸とするI POUR ITでは、導入後 の平均収益約39%上がっているという。
I POUR ITのシステムでは、入店時にクレジットカードを確認し、RFIDタグと引き換える。それによりどんな人物がなにを飲んだか、という詳細なデータを得ることができる。店舗はそれを活用し、販売に役立てるし、プラットフォーマーであるI POUR ITにはビールメーカーが欲しくてたまらないであろうデータが蓄積されていくというわけだ。
デジタルタップバーの仕組みを取り入れた店舗には、キャッシュレス化、在庫ロス軽減、注文のデータ化など、さまざまなメリットを得ることができる。顧客にとっても色々な種類やフレーバーのビールを自分の欲しい量だけ待たずに楽しむことができ、よりパーソナライズ化した提供が可能となる。“いまこの瞬間を楽しめる”、デジタルバーならではのインタラクティブなディスプレイやサイネージの体験は、新たな顧客体験の創出にも繋がっており、こういった趣向のバーは今後も増えていくと予想される。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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