
GODIVAが取り組むDXの現在地。モバイルオーダー導入で見据えるwithコロナ時代の生存戦略は
2022.02.01
新型コロナ対策
インタビュー
小売店向け
2021.09.01
インタビュー
飲食店向け
飲食業界では先陣を切って、全社的にDXを推進する株式会社トリドールホールディングス。
主力の丸亀製麵業態をはじめ、国内1,111店舗(2021年6月末時点)の規模である。同社が掲げる「DXビジョン」の目的はビジネストランスフォーメーション、業務効率化と新規ビジネスの創出だ。
「DX推進プロジェクト」の名の下、新規ビジネス、既存ビジネスモデルの深化、デジタル技術活用環境の整備の3本柱で企業価値向上にむけた各取り組みが実践されている。
DXビジョン2022(株式会社トリドールホールディングスHPより)
DXビジョン2022の推進シナリオ(株式会社トリドールホールディングスHPより)
同社のデジタル戦略をリードする立場にある、磯村執行役員CIO 兼 BT本部長は「“とりあえずのデジタル化”はしない」と明言する。あらゆる業界で気運の高まるDX(デジタルトランスフォーメーション)だが、解像度が低いままで着手してしまうと、部分最適にすぎなくなり、投資の意味がなくなってしまう。
トリドールでは「業務改善および新規ビジネスの創出」という明確な目的を持つことで、本質的なデジタル改革に着手している。
今回は、そんなトリドールにおけるデジタル戦略成功における全舞台裏について磯村氏にお話を聞いた。前編・後編にわけてお届けしていく。
※このインタビューは2021年6月に実施したものです。
——各所メディアでも取り上げられているように、DXを全社的に推進していらっしゃいます。そもそもトリドールとして目指す先をあらためてお聞かせいただけますか。
トリドールはこれまで「世界で“通用する”日本発のグローバルフードカンパニー」の実現に取り組んできましたが、これからは「世界を“代表する”グローバルフードカンパニー」を目指していきたいと考えています。
「丸亀製麺」をはじめとする日本発のトリドールブランドを世界各国に広げていくことに加え、海外に拠点を置くグループ会社からの展開も見据えています。
香港で人気を二分する米粉麺のヌードルチェーン「譚仔雲南米線」と「譚仔三哥米線」を運営する「Tam Jai International Co. Li
mited」が、2018年にトリドールHD傘下にジョイン。香港のみならずシンガポール、中国本土など、現在約150店舗を展開している。
それを実現するためには、従来のビジネスプラットフォームを進化させなければなりません。そこで、根本的なIT基盤も含めて作り直していこう、というのが今回取り組んでいるDX戦略における大枠の方針です。
トリドールが今まで大事にしてきたもののうち、今後も継続すべきものと抜本的に見直していくものをきちんと切り分けるというのが、DX推進における重要なポイントです。
これからも変わらず残していくべきは、手づくり、できたてのメニュー、そして人の温もりがある接客。一方で、それを支えるバックオフィスや仕組みは「お店のサービスをもっと支援できる体制」に最適化していきたいと考えています。
——それらを示したのが、コーポレートサイトにも公表されている「DX戦略」ですね。社外の人が見ても方向性が理解できるほど、かなり具体的な内容です。
我々が掲げるグローバルプラットフォームの構築は、デジタル領域のパートナーなしでは実現できません。その意味でも、あるべき姿と求めていることをしっかり意思表示することが必要不可欠です。
実際、その方針を理解した上で適した提案をしてくださる企業の方々としっかりとした「形」ができてきています。
——いわゆる「レガシーPOS」からの脱却やフェーズを分けたビジョンなど、明確な方針が定められています。かなりの改革ですが、そこまで一気に踏み切れたのはなぜでしょうか?
飲食という業界だからこそ、思い切れた部分はあります。
金融や製造は、以前からITを活用できている業界ですが、それゆえに変化させることもかなりハードルが高いように思います。一方で、小売や飲食のような流通業は比較的改革しやすいのではと。飲食企業として最も重要なのは商品とサービスです。ITが担う役目は、よりよい体制を実現するために必要なバックオフィスやマーケティングを支えるツールという位置づけになります。企業として目指すビジョンが明確に定まっていれば、既存のシステムをベストなものに置き換えるという工程が踏みやすいビジネスモデルだと考えています。
——大手飲食チェーンでは「システム内製化」をどこまでやるべきかの議論が出ていますが、どうお考えでしょうか?
内製化については、以前から日米の比較がよくされてきました。アメリカではユーザー企業にエンジニアがいて、自分たちにとってベストなものを考えてつくる。一方、日本では「ITはベンダー」に頼るケースも多く、社内で抱えるエンジニアの数が限られていることも課題とされてきました。
それは今でも見受けられるものの、少子高齢化が進むことで状況が変わりつつあります。
働き手の絶対数も減っている中で、エンジニア人材が選ぶ就職先は、環境面からどうしてもIT企業になるケースが増えています。我々のような外食企業に飛び込んできてくれるエンジニア志望者は、これから先さらに少なくなる可能性があるということです。
そうなると、開発に関わるエンジニアをすべて社内のみでまかないながらシステムの内製化を進めるよりも、SaaSを供給するパートナー連携を強化するのが自然な流れです。そこで、SaaS/BPO(※)に踏み切りました。
※SaaS:「Software as a Service」の略。クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用する形態を指す。
※BPO:「Business Process Outsourcing」の略。企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託することを指す。
この決断は、10年前であればできなかったかもしれません。ところが現代ではSaaSやBPOが成熟し、提供されるサービスレベルも高くなってきました。そういったタイミングも重なり、内製しない方針への舵切りができたんです。
もちろん我々の要である「飲食」という領域に携わりたい人は、今後も弊社に集まってくれると信じています。そこは私たちの強みであり、魅力を感じてもらえるよう一層の努力もします。
そこ以外の汎用的に運用できる部分は、効率化していくべきと考えています。
これからの時代はサブスクリプション型のSaaSを使っていこうと決めているので、(ソフトウェア資産に残すような)投資も一切しないつもりです。
——業界的に見ると、外食領域のDXはまだ発展途上段階です。要因としてはどういったことが考えられるでしょうか。
システム面で部門ごとの意見をそのまま反映させてしまうと部分最適してしまいがちです。その部門での作業がやりやすいからといって、全体を俯瞰した時に最善の選択であるとは限りません。
トリドールで行う今回のDX戦略では、現場の課題は意見としてヒアリングしつつも、目指すべき新しいソリューションの検討・構築はDX推進担当部門が主となって進めました。
たとえば「入力が大変」という現場の課題に対して単体で考えると「入力作業の効率化」という議論になります。しかし、そこを「あるべき姿に向けた最善策は何か」といった視点で課題をとらえると「じゃあBPOで作業自体をなくそう」という選択肢を見出すことができます。
目指す先へ歩むための方法を考えることが重要で、それは我々がDX戦略に紐づくSaaS/BPO施策を好調に進行できている秘訣のひとつとも言えます。
——私たちShowcase Gigも「丸亀製麺」ブランドにおけるモバイルオーダー導入の領域でご一緒させていただいていますが、その的確さやスピード感は身をもって実感しています。
丸亀製麺で全店舗規模で導入されているモバイルオーダー。うどんのテイクアウトでも店頭で待たずにさっと受け取れ、お客様の利便性向上を実現している。採用されたのはShowcase Gigの「O:der ToGo(オーダートゥーゴー)」だ。2020年6月の導入開始を皮切りに、1年でほぼ全店舗に展開。
「スピード感」は、トリドールのカルチャーとして以前からあります。それを体現できているのは現場である店舗と、そこを支える営業部隊の尽力があってこそですね。方針さえ決まれば、その先の展開は一気に進めます。
モバイルオーダーも然りですが、何か新しいことを始める時、店舗でのトライアルはもちろんやります。そこで試した結果、問題ないと判断できたらすぐさま全店展開へ向けて動き出すんです。
そのような現場のスピード感を全社で共有しながら、お客様から現場、バックオフィスまでの全てがつながるような仕組みを作り上げるのがDX戦略としてのポイントです。
我々はこれまで何度も危機を乗り越えてきた経験があります。
今はコロナによる影響を飲食業界だけでなく世界中が受けている時期ですが、苦難に立ち向かってきた過去の成功体験が自分たちを強くしてくれているとも感じます。直近で言うと、テイクアウトの施策が象徴的ですね。
——まさに、2021年4月販売開始から4ヶ月で900万食のヒットを実現した「丸亀うどん弁当」についても、ぜひお伺いしたいと思っていました。後半でお聞かせください。
後半に続きます。
「DIG-IN」を運営する株式会社Showcase Gigは、飲食店/小売業態向けにモバイルオーダープラットフォーム「O:der Platform」を軸とした次世代店舗のご提案を行っています。
・モバイルオーダーを導入して業務改善を図りたい
・デジタルを活用した次世代店舗をはじめたい
・新しい消費体験の創出をかなえる業態開発に取り組みたい
・多店舗展開に耐えうる開発体制があるプラットフォームを探している
・全社的なDXを推進するにあたりSaaSを検討している
など、まずはお気軽にご相談ください。
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