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世界最大のスーパーマーケットチェーンである米・Walmart(ウォルマート)。近年は、EC部門でも大きく躍進し、オフライン/オンラインをまたいだ消費体験のの最たる事例として、注目されている。ここではウォルマートのデジタル戦略を追う。
eMarketer.comによれば、最新の小売予測で、ウォルマート社が2018年、Appleを追い越し米国で3番目のECの企業になると発表した。
出典:eMarketer
同社※は2018年末には、米国のオンライン小売支出全体の4.0%となる209億9000万ドルを獲得すると予測。ウォルマートはデジタル部門の技術開発を強化することで、米国3位のEC企業へと成長を遂げた。それに対して、米・アマゾンのオンライン小売支出は全体の48.0%で米国1位。数値のみであれば圧倒的な差があるようにもみえるが、ウォルマートはこの差を縮めるべく近年あらゆるデジタル戦略を仕掛け、これを追いかけている。
いま米国で急成長しているEC分野の一つに「食料・雑貨品業界」があるが、ウォルマートはすでにこの事業を展開しており、アマゾンのそれよりも圧倒的に規模が大きい。加えて、約5300店舗という膨大な数の実店舗網を活用し、オフライン店舗のデジタル化を進めることで、オンライン・オフライン両面で利便性とユニークさに長けた顧客体験の提供を実現しているのだ。
これらの戦略は徐々に効果が出ているとされており、その証拠に米金融市場におけるウォルマートの株価は、過去6カ月間に14.81%上昇。同期間のアマゾン株の値上がり率は、わずか5.99%に留まったという。
※傘下のSam’s Club、およびJet.comを含む
ウォルマートの実店舗は、全米人口のおよそ90%が、10マイル(16 km)圏内にあるとされており、その店舗数は米国全体で約5300店にもなる。この数は、アマゾンが買収したホールフーズの10倍だ。同社はこの潤沢な店舗網を利用し、アマゾンにはできないユニークな仕組みを創り出した。その仕組みに「配送拠点」と「店内受け取り」の強化がある。
ウォルマートは、米国のあらゆる地域に店舗があり、米国人にとっては車で10分ちょっと走れば最寄りの店舗に行くことができる。店舗を配送拠点としての役割も担わせることで、配達の効率化を図るためさまざまな取り組みをおこなっている。
例えば、ウォルマートの従業員が「自身の業務終了後の帰宅ついでに注文商品の配送をおこなう」というシステムもパイロット版として実施している。既存の従業員のリソースを活用し、さらには追加の報酬を支払うことで従業員の給料アップにも繋げるという、新たな視点での取り組みが注目を浴びている。
米国店舗での一般的な商品受け取りのシステムに「BOPIS(Buy Online Pickup In-store)」がある。その名の通り、オンラインで商品を購入し、最寄りの実店舗で商品を受け取るというシステムだが、オンラインで確実に欲しい商品が購入できる上、配送料が節約できるとして人気がある。
ウォルマートのBOPISカウンター(撮影:編集部)
ウォルマートはこのBOPISシステムも強化し、店舗入り口付近にBOPIS専用の「受け取りカウンター」設置。顧客がレジに並ぶ手間や時間を省き、欲しい商品をスムーズに買い物ができるように配慮した。
(撮影:編集部)
また、同社は巨大なタワー型のピックアップ専用ロッカー「Pickup Tower」も設置。スマホに送られてきたバーコードを操作パネルにかざすと、5~10秒で注文品が出てくるという非常にユニークで利便性の高い顧客体験を提供している。
このようなデジタル部門の躍進には、ウォルマートがあらゆるベンチャーやDTC(Direct to Consumer:ネット直販)といった企業を次々に買収してきた背景がある。2010年ごろからJet.com、モドクロス(Modcloth)、フリップカート(Flipkart)やボノボス(Bonobos)など数社を買収。テクノロジーと人材を積極的に獲得してきた。こうした大胆な買収により、独自のEC事業を拡大してきたのだ。
数あるスタートアップの中でも、ウォルマートは、アマゾンに対抗する方法を独自に見つけた企業を選定し戦略的に買収をおこなっている、といわれている。同社は、買収したブランドが構築したカスタマーロイヤルティを活用し、新たな顧客層の獲得も実現しているのだ。
日本の多くの小売店舗にとって、EC部門はまだオマケ的な意味合いが強く、投資や買収といった動きも多くはない。確かに日本では、Amazonの脅威が米国ほど強くは感じられないかもしれない。しかし、ECでの便利な買い物の比率が増えるほど、顧客はオンラインでの購入に流されていく。デジタルに抵抗がない世代が多い現代において、その傾向は顕著であるといえる。今後、デジタル戦略を練り、実現できる事業者は生き残り、そうでなければ成長は難しいかもしれない。
文=佐々木久枝
編集=Showcase Gig
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