2020.06.09

インタビュー

【対談】吉野家が考える、テイクアウトとモバイルオーダーの重要性とは?

大手牛丼チェーン「吉野家 」では、お客様のスマートフォンから事前注文し、店頭で待たずにテイクアウトができる「スマホオーダー 」を全国に導入している*。このシステムにはShowcase Gigが提供する「O:der(オーダー)プラットフォーム」を活用して2020年2月14日からサービスを開始。今後はGoogleマップや、SNS等各種チャネルでの展開も積極的に進めていく。今回は吉野家常務取締役の伊東正明氏とShowcase Gig代表の新田剛史に吉野家が考える、テイクアウトのモバイルオーダー活用と効果について聞いた。

*一部店舗を除く
*このインタビューは2020年3月10日に実施したものです

テイクアウトを時短で。モバイルオーダーに可能性を感じた

―今回の「スマホオーダー」で本格的にデジタル化を進められましたよね。なぜ、今テイクアウトから導入を始められたのでしょうか?

伊東:デジタルやテクノロジーって、本質的には人が人による仕事をするために存在するものだと私は思っています。マーケティングというコンテクストだけではなく、デジタル化することでお客様によりメリットになる、従業員がお客様と触れ合う時間がより多くなる、ということが大切なのではないかと。そういった方向でのデジタル活用に関しては、私たちも片っ端から研究しています。
そしてこの研究の1つに、オーダーがありました。店でオーダーを取るというのは、お客様との接点が1個できるチャンスでありつつも、ピーク時には待っているお客様が手持ち無沙汰になる。なので、そこをデジタル化したいというのがありました。今回導入した「テイクアウト」には大きな可能性があると考えています。

右:伊東正明(吉野家常務取締役)左:新田剛史(Showcase Gig 代表取締役)

―具体的にどのような客層を想定されたのですか?

伊東:実は吉野家は1,200店舗中、800店舗はいわゆるロードサイド店なんですね。そこでの1つのピークが夕方の5時〜8時の間。この時間帯というのは、ご家族用のお食事をテイクアウトされる女性のお客様が大多数なので、できるだけ早く購入して家に帰りたいというニーズがあります。
そういう方をお待たせすることなく、利用しやすくすることで「便利だから」と吉野家を指名していただけるサービスを強化できます。そうすることで利用回数も上がり、吉野家が伸ばしていきたい客層をより伸ばせると考えています。さらに一度テイクアウトを利用するとそのお客様は残ってくれるというデータも出ています。

―継続率が高いということですか?

伊東:はい。今まで吉野家での持ち帰りの発想がなかったお客様にとって、テイクアウトが回遊先の1個になります。今までは1回しか使わなかった人が、繰り返し使ってくれるんです。テイクアウトを強化することで基礎客数がどんどん上がるぞ、という新しい発見でした。その面を広げるための1つの手段がモバイルオーダーオーダーでした。

POS連携でオペレーションを変えずチャネルを増やしていける

―店頭とオンライン両方から注文を受け付けるわけですが、オペレーションなどの課題はどうでしたか。

伊東:私たちが全国で導入しているPOSシステムと直接連携をして開発できるのがO:derプラットフォーム だけなんで。このおかげで、注文内容と予約が分かる形で、お客様が取りに来られる時間の10分前に店にあるキッチンディスプレイにポンとお知らせしてくれるんです。

新田:メニュー、オーダー情報、在庫情報といったPOSに入っているデータがオンライン上でリアルタイムに連携できないと、対応がすぐにできなくなる。基幹POSとO:derプラットフォームはつながっていますが、そこに吉野家様向けのカスタムを行いプラットフォームを提供しています。

―オンラインのプラットフォームが、既存のPOSとつながるとオペレーション以外にどんなメリットがあるんでしょうか。

新田:O:derプラットフォームは、各コンシューマーチャネルにAPIの形で注文の口を切れるように全部つくってある基盤のようなものです。これによっていろんなコンシューマーチャネル自体が開きやすくなりますね。あらゆるシーンでモバイルオーダーの切り方のパターンを作れるようになる未来です。
例えば、スマホのサイズからタブレットサイズにいくとか、私たちのプラットフォームならわりとすぐ移行できるんです。いずれの場合でも、もう基盤ができていてオンラインと繋ぎやすくなっているので、どのステップでどんなコンシューマーチャネルと連携するかは、吉野家さん次第で対応可能です。

伊東:そうですね。外部のアプリなどにも注文画面をそのままポンと出すことができる。今後のあらゆる出面を増やす可能性が広がりました。

2019年、実証実験からスタート。高いユーザビリティを目指した

―2019年ごろから、大手外食を中心に次々とモバイルオーダーサービスの開始を発表していましたが、このタイミングになったというのはなぜでしょうか?

伊東:正直にお話すると、テイクアウトが会社の優先順位の中で高くはなかった、というのがあります。2019年の戦略で客層変化を考えたときにテイクアウトも見直さなきゃいけないよね、と。そこからは一気に話が進みました。ただ、Showcase Gigとのお付き合いは2017年の春からで、もう丸3年になります。

新田:そうですよね。この時期にローンチというのは、なるべく店舗のオペレーションを変えずに、新しい注文チャネルを増やす準備をしっかり整えたという側面のほうが私は強いと考えています。正直、今モバイルオーダーサービスを導入されている企業で、外装はできていても吉野家のようにしっかりとオペレーションに組み込んで作ることができている企業はなかなかないですね。というのも、O:derプラットフォームはPOSと連携していますが、実際にはかなり大変です。在庫状況がリアルタイムで連携しているとか、メニューの最新情報の更新などを1,000店舗を超える規模で出来ている例というのは国内はもちろん、世界的にもかなり少ないと考えています。

―店舗のオペレーションはそのままで、新たにサービスを始められたのですね。

伊東:その通りです。店頭のオペレーションを変えないというのは、確実に増加のビジネスになります。カニバリゼーションも極めて低いと想定しています。

新田:Webの注文の窓口を作って、Googleマップからも注文ができる。コンシューマーチャネルは、広ければ広いほど利便性は高まりますが、店頭のオペレーションはできるだけこれまでと変えず、店員さんの負担は少なくする設計にしています。

伊東:実は1年程前からすでに実装はしていて、どういうUXをつくると客単価が上がるか、モバイルオーダーシェアが上げられるか、全国展開する前にかなり研究を積み重ねましたよね。

新田:そうですね。実証店舗で使ってみて、使いやすさ、注文のしやすさなどはもちろん、表示速度、あるいは注文チャネルをどうするのかなど改善を重ねましたし、店内のオペレーションも試行錯誤しました。

伊東:特別なオペレーションを増やさずにつくり上げるっていうのは、言うは易し行うは難しで。2019年の4月あたりから店舗で使えるものを作って、私自身も実際に何回か利用して、お互い意見を出し合いました。Showcase Gigの会社近くの青山一丁目店など数店舗で実験していました。

新田:会社の近くだったので弊社の開発メンバーが改善点を常に詰めることもできましたね。

―数店舗での実験から、全店導入を判断されたポイントは何ですか?

伊東:まず第一に仕組みがしっかりと走っていたことが大きくて、それから財務合理性がきわめて明確に立っていました。動作確認も全く問題なく、さらには顧客単価も上がっていた。どの観点から見ても「これをやらない方向はない」という数字がはっきりと出ていたんです。

―客単価が上がっているのは、どういった理由からでしょうか?

新田:お客様の観点だと、デジタルであれば他のお客様を気にせずにゆっくりと検討できるという良さがあると思います。それが単価向上にもつながっているのではないかと。

伊東:ピーク時などはやはり注文するという行為にプレッシャーを感じてしまいますよね。それこそ券売機などで後ろに人が並んでいると、焦ってしまってサイド品も頼まなかったりして、客単価が上がりにくい。そういった点ではモバイルオーダーは、純増率と回転率も高いですね。先ほどお話したロードサイド店の夕方のピーク時はもちろん、都心型ビルイン店舗のランチタイムの回転率も上がります。この流れが売上増加につながっています。

テイクアウトの利便性を高めることは飲食業界の使命

―今後、どんなサービスの展開を考えていらっしゃいますか?

伊東:あらゆる可能性を考えていますね。例えば、Googleマップに「テーブルを予約する」というボタンがある以上、「デリバリー注文する」とか、「テイクアウトを予約する」というボタンも今後出てくるんじゃないかと私は思っています。スーパーアプリや、メッセージアプリの連携だったり、お客様の利便性を最優先で出面を広げていきたいですね。

新田:各社、このようなオンラインオーダーAPIは今後次々、開放していくだろうと思います。海外でもAmazonやFacebookで導入している例もありますし。モバイルオーダーリングシステムとプラットフォームをAPIでつなぐだけです。そこに向けてAPIを整備できているということがすごく重要で、そこに対応できるお店はそこからの集客をどんどん増やせるようになっていきます。

―今、コロナウイルスの拡大で飲食店も厳しい環境に立たされていますが、今後もデジタル化は進めていかれますか?

伊東:そうですね。しかしながら、環境が変わっても人は1日3回食事をしなくてはならないですし、学校の休校もあり、働きながら毎食の食事を準備することはご家庭にとって大きな負担だと思います。その点、 テイクアウトであれば安心して外食の味をご家庭で楽しんでいただけると思います。テイクアウトをご利用いただくことや、その利便性を高めることは、日常食を提供する飲食業としての重要な役割の一つだと考えています。

新田:私たちも同じように考えています。今後の世界観の中で、非対面でも注文できるモバイルオーダーの重要性は高まっています。今度も体制を強化して、飲食業界をご支援していきたいと思います。

プロフィール

伊東正明(株式会社吉野家 常務取締役)
1996年P&G入社。ブランドマネージャーとしてジョイ・アリエールのブランドを再建。ファブリーズグローバルチームのマーケティング責任者として米国本社・ヨーロッパ本社にてブランドのグローバルオペレーションへの移行、世界新製品、新規市場開拓戦略をリード。その後シンガポールにてペットケア事業責任者、アジアパシフィック・Eビジネス事業責任者、ホームケア・オーラルケアヴァイスプレジデントを歴任。2017年11月退職・独立。現在株式会社吉野家常務取締役および3社の顧問兼務。

新田剛史(株式会社Showcase Gig 代表取締役CEO)
ファッションEC運営企業を経て、東京ガールズコレクション最初期のプロデューサーを務める。その後、株式会社ミクシィ入社。ソーシャルビジネスの責任者として、様々なサービスを生み出す。2012年、株式会社Showcase Gig設立。国内初となるモバイルオーダープラットフォームの提供を開始。

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編集=Showcase Gig

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